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宮の独り言

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2009.05.30
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カテゴリ:コードギアス
「さて、そろそろ時間か」

帝都の一角に存在するヴィンドボナ魔法学院、ルルーシュは手にしたテキストを開いた。
本来の授業時間は既に終わり、これからの活動は課外活動の一環となるのだが空き教室には大勢の生徒らが集まっている。
教壇の上に立ち、ルルーシュは教室の中を見渡した。
一番先頭の席には友人リヴァルの姿が、そしてミレイ、ジノ、アーニャらも前の席に陣取りニコニコと、否、半ばニヤニヤと笑いながらルルーシュを見つめていた。
勿論アーニャは静かに無表情を保ったままであったが。

「はーい、ルルーシュ先生!」

ミレイが楽しそうに手を上げる。
その様子を見ながらルルーシュは軽く頭痛を覚えた。
そもそもの事の発端は魔法学院の定期試験の時期が迫り、今一成績の宜しくないリヴァルの為に簡単な勉強会を開こうとしたことで、気づけば同学年の生徒のほとんどが参加する事態までに発展していた。
もはや言うまでもなくミレイの差し金である。
いつの間にか空き教室を押さえ教師らの許可を取り、参加する生徒らの統率も完璧。
お祭り好きもここまで行くと大したものだ。

「それでは今日はゲルマニア史の講義を始める」

ルルーシュによる筆記試験科目の補習講義、今回はゲルマニアの歴史だ。
入学当初から現在に至るまでルルーシュの筆記試験における成績はパーフェクト、皇族の名に恥じる事無く順調に主席をキープしている。
そんなルルーシュの試験対策の授業があるのならぜひ受けてみたいという者は非常に多かった。
加えてルルーシュが持ち合わせる雰囲気、どこか近寄りがたいものを感じさせるそれに一部の親しい生徒以外は気軽に話しかける事が出来なかった。
それ故に参加している生徒の半数以上はこの美貌の皇子にお近づきになりたい、そんな思いも秘めているのだ。
ちなみに教室内の男女比はほぼ均等である。
男女構わず人気のあるルルーシュであった。

「前回はゲルマニアの誕生に繋がる都市国家ヴィンドボナ成立に至るまでの話だったな。もう一度簡単に振り返ろう」

真剣にノートに書き込む者、テキストに目を通す者、あるいはミレイやジノの様に純粋にルルーシュの教師役を見て楽しむ者、反応は実に様々である。
ミレイ達の態度は生徒としては実に不真面目なものではあるが、彼女達の様に幼い頃から家庭教師が付く高位の貴族の子女にしてみれば今更学ぶ必要もない内容だ。
ルルーシュはそれを特段咎める事無く話を続けた。

「ヴィンドボナの成立は今からおよそ三百年ほど前になる。トリステイン王国の貴族であったアルウィン侯が謀反の罪に問われてこの地に逃れて来る。さて、リヴァル、アルウィン侯が罪を問われるまでの経緯を簡単に説明してみろ」
「えーっと、確か当時のトリステインの税制でアルウィン侯は政府と対立していたんだよな?」
「そう、アルウィン侯の財力は当時のトリステインでは最大の規模を誇り、故に対立する派閥の貴族達から疎まれていた。その影響力をそぐ為に貴族達はアルウィン侯に不利な税制を整えアルウィン侯とトリステイン政府の対立が始まった」

正解に気を良くしたリヴァルがニッと笑う。
付け加える事があるとするならば、アルウィン侯には身分の低い愛人がいた事が挙げられるだろう。
彼は多大な寵愛を彼女に注ぐが最悪な事にそれが正妻の知る所となってしまう。
正妻は王族の血を引く高貴な生まれ、そんな女性が己を蔑ろにされて怒らないわけがない。
彼女はアルウィン侯の愛人とその子供の居場所を突き止めて密かに抹殺しようとする。
それを知ったアルウィン侯は激怒、王に妻との離縁を願い出た。
しかしそれが悲劇の始まりだった。
アルウィン侯と正妻との結婚はトリステインでも屈指の貴族であるアルウィン侯と王家の繋がりを強める為のもの。
その縁を切ると言う事はアルウィン侯の王家に対する背信と受け取られてしまったのだ。
勿論その影には多数の陰謀が潜んでおり、それらが実を結んだ結果でもある。
その為アルウィン侯は謀反の罪に問われ領地を捨てて家臣らと共に北のゲルマニアの地まで逃れる事となった。

「ゲルマニアには先住民族がいた。彼等の集落に逃れたアルウィン侯は系統魔法の力によって先住民族を亜人や猛獣、その他の危険から救う事で受け入れられていく。やがて集まってきた人々を取り纏め都市国家ヴィンドボナが成立。歴史家によってはこれをゲルマニア成立の時期とする者もいるが、実際にはこの百年後の首長リカルド・ヴァン・ゲルマニアによって多数の貴族や都市が利害の一致により結びつき国家の体裁を為す事になる」

アルウィン侯の時代にはほぼ未開の地であったゲルマニアの地もその頃にはトリステインやガリアの手が伸び開拓が始まっていた。
肥沃な土地が広がっているという事もあり、入植は頻繁に行われヴィンドボナも両国との交易により急速に発展を遂げていく。
そしてゲルマニアの地を手に入れた貴族達は次第に王権国家と距離を取りヴィンドボナとの結びつきを重視するようになっていくのだ。
そうして成立した都市国家群が今のゲルマニア帝国に繋がる国家である。
しかしハルケギニアにおけるこの新勢力の誕生は決して歓迎されるものではなかった。
離反した貴族と王権国家の間に生じた軋轢、それが戦へと変わっていくのはそう時間のかかる事ではなかった。

「では今日はこの続きから話していく事にする」

黒板に語句を書き止めつつ、ルルーシュはテキストを広げる。
予め作成した講義計画は全て頭の中にあり、それらを瞬時に組み立ててルルーシュは口を開いた。

「国家として成立したとは言え、当時のゲルマニアは貴族達の寄せ集め。アルウィン侯の家臣に連なる系譜の者、原住民族の血を引く者、新たに入植してきた者などその立場は様々。結束など築けるはずがない。またガリアやトリステインは長い歴史を持つ国家。戦が長期化するにつれてゲルマニアは劣勢に追い込まれていく事になる」

疲弊していくゲルマニア都市国家群。
戦況の悪化に従ってヴィンドボナのゲルマニア皇家の影響力も次第に低下の一歩を辿っていく。
他の貴族達や王権国家にもこの戦の原因を全て一部の者に押し付けて元の鞘に戻ろうとする動きが現れていった。

「まさにゲルマニア分裂の時代と言えるだろう。所詮利害の一致による結び付き、それが瓦解するのも容易いものだ。だがこの時ゲルマニア皇家に生まれた一人の男児がこの戦の終わらせる事となる。この男児の名前は?」

ルルーシュの問いに苦笑が上がる。
リヴァルが頭の後ろで手を組みながら言った。

「流石にそれは皆知ってるって!『銀狼帝』ライエル皇帝だろ」
「ほう、流石にライエル帝の事はリヴァルでも知っていたか」
「ってルルーシュ、それはちょっと酷いぜ?」

皮肉気なルルーシュの物言いにリヴァルが反論する。
と言ってもルルーシュのこの手の言動には慣れているリヴァルが気を悪くするはずもない。
この手のルルーシュの皮肉気な物言いは親しい者に対してのみ為されるものである事をリヴァルは知っていた。

「ま、ゲルマニアでは英雄的な王だしな。子供の頃におとぎ話として聞いた事がない奴はちょっといないんじゃないかな」

ジノが長い足を机の横に投げ出して完全に寛いだ様子で言った。
ルルーシュも頷いてみせる。

「ライエル帝が誕生した頃のゲルマニア皇家はまさに渦中にあったと言っても良いだろう。都市国家群の盟主としての立場は危うく劣勢の責任を押しつけられ、当主はいつ終わるとも知れぬ戦場に身を置いている。良からぬ事を企む者が現れるのは至極自然な事だった」

ライエル・フォン・ゲルマニア誕生から僅か十四年後、当主であった父親が戦場で亡き者になるとゲルマニアの情勢は一気に変わっていった。
王権国家の暗躍を受けた貴族らがヴィンドボナを襲撃したのである。

「だが僅か十四歳であったライエル帝は混乱する家臣らを完璧に統率し、自ら先頭に立ってヴィンドボナの防衛に当たった。その結果、約三倍もの兵力差をいとも簡単に押し返し初陣での勝利を上げた」

まさにその瞬間からライエルが神に愛された皇帝としての道が始まったのだ。
襲撃者を撃退し正式に皇家の当主となったライエルがまず行ったのは足元の掃除であった。
彼はヴィンドボナ内部の裏切り者を全て排除し、血縁者や家臣の間に鉄の結束を約束させた。
そして一年にも満たない間にその類稀なカリスマ性と政治能力、時として武力を持ってライエルは国内を平定し、自ら皇帝を名乗って帝政ゲルマニアの祖となる。
そうしてゲルマニアを纏めたライエルはその勢いのままガリアからアルザス・ロレーヌ地方を奪い去り、トリステインの軍隊をヴァリエール領まで押し返す事に成功するのだ。
さらには王権国家に燻る不和の種を煽って足並みを乱し、果てはロマリアすらも介入させて圧倒的優位な立場での講和に成功。
ハルケギニアにおいて弱小国家であったゲルマニアはこの名君の統治下で、瞬く間に強国としてガリアやトリステインに肩を並べるまでに発展を遂げる事になる。

「また、多くの奇跡を起こした人物としても知られており、数多くの物語の題材となっているのも皆が知っている通りだ」
「やっぱりライエル帝と言えば『永遠の誓い』よねぇ・・・」

ミレイのうっとりとした声が多数の女子生徒の賛同の声と共に教室内に響き渡る。
しかしそれを聞いたジノはキョトンとした様子でミレイを見た。

「何だ、それ?」

ジノの言葉にリヴァルが驚いたように言う。

「あれ、お前知らないの?」
「えッ、もしかして凄く有名な何かなのか?」
「もしかしなくてもそうでしょう。ライエル帝と言ったらこれっていう物語だぜ?」
「いやぁ、ライエル帝関連は英雄譚しか読んでないんで・・・」

女子生徒らの軽蔑にも似た視線を浴びてジノは視線でアーニャに助けを求める。
しかしアーニャは机の上に広げていた一冊の本をジノの目の前に突き出した。
表紙に描かれているのは銀色の髪の青年が一人の女性の手を取っている光景だった。

「これ」
「え?」
「『永遠の恋』」
「お前もかよ・・・」
「暇だったから」

味方がいなくなった事を悟ったジノは最後の救いとばかりにルルーシュに縋るような顔を向けた。

「ルルーシュ先輩、その『永遠の恋』ていうのは・・・?」
「ライエル帝を題材にした恋物語であり種のおとぎ話とでも言おうか。彼にまつわる伝説を小説化したものだ」

十四歳で皇家の当主となったライエルはその混乱の最中に一人の女性に出会う。
彼女は永遠を生きる魔女であり、絶望の淵に立たされていたライエルにある取引を持ちかけるのだ。
『あなたに王の力を授けましょう。その代りあなたは私の願いを一つだけ叶えてください』
魔女と契約したライエルは強大な力を手に入れ、その力によって全ての戦に勝利する。
魔女はその傍らにあって常に彼を支え、己の願い『永遠の命の終焉』を成就させられる日を待ち続ける。
しかし協力者、あるいは共犯者といった関係でしかなかったはずの二人はやがて恋に落ちていく。
ライエルは彼女を妃にと求めるが魔女は異なる時間を生きる自分の身を嘆き姿を消してしまう。
必死に彼女を探すがその行方はようとして知れぬまま。
年月は過ぎ、ライエルは老いていくが彼は決して妻を娶らず彼女の帰りを待ち続ける。
そして彼の死の間際に遂に再会を果たすというのがこの物語の大まかなあらすじである。
何ともどこかで聞いたような物語である。
ルルーシュはどこか既視感を感じずにはいられなかった。

「真偽のほどは分からないが、ライエル帝が生涯妻を持たなかった事は事実だ。彼の後を継いだのは彼の妹の子供。これが後のゲルマニア内乱の時代に繋がっていくのだが、その話は次の機会にするとしよう」

パタンとテキストを閉じる。

「では今日の講義はここまでだ。次回の講義までに予習と復習をしておく事をお勧めする。俺の話をただ聞いているだけでは意味がない。きちんと自身の手で出来事をまとめ、順序立てて出来事の原因と結果、時代の流れを掴んでおくと良いだろう。それでは解散!」





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最終更新日  2009.06.28 23:25:09
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