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こころのしずく

こころのしずく

NARUTO 1~9




終末の谷での戦闘後、森をさまようサスケの心情話です。


『兄さんの背中に』(NARUTO 1)

ねぇ父さん…もしも今、生きていてくれたとしても
もう「さすがオレの子だ」って、言ってくれないよね…

ねぇ母さん…もしも今、生きていてくれたとしても
もう優しく、笑いかけてくれないよね…

だってオレは、復讐者になってしまったから。
みんなをたくさん、傷つけてしまったから。

あの時から、ずっと一人きりだったのに、大切なものができたんだ。
なのに兄さんのせいで、めちゃくちゃになった。

迎えにきてくれた親友の手を取って、かえればよかったのかもしれないのに…
オレは、もう遅いって、ふりはらってしまった…

雨の中、想像してた。
父さんがいて、母さんがいて、兄さんがいて…

一人歩きながら、思い出してた。
第七班で、過ごした日々…

オレの幸せは、額当てといっしょに落ちた。
オレは、拾わなかった。

もう戻れない…。悲しみと痛み…。今のオレには…
兄さん、アンタにぶつけることしかできない。

…いいんだ…それで…。その気持ちが
アンタの背中に、少しでも近づける力をくれるなら…



☆あとがき☆
生まれて初めて書いた二次創作小説です。
小説なのかな? 詩みたいな感じですね。
サスケの悲しみと兄への気持ちを書いてみました。
自分で書いておいてなんですが、だめだよサスケ復讐なんて!
でも、サスケの人生はあまりに辛すぎて、心が痛いです。

この作品は、1500アクセスをふんでくださった切り取りさんに差し上げたものです。
光栄にも、切り取りさんのHPに掲載していただくことができました。

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『―』(NARUTO 2)

スペースの都合により、掲載無しとさせていただきます。

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カカシ先生の言いつけで、報告書の練習代わりに書いたナルトの日記です。


『ナルトの日記』(NARUTO 3)

第七班メンバー結成当初、カカシ先生は部下たちに白紙の巻物をそれぞれ渡した。
「お前たち、今日から日記をつけろ。報告書の練習代わりだからな。ちゃんと書いて、提出するんだぞ」
「えー!?」ナルトとサクラ。
「ちっ…」サスケ。


『あのさ、あのさ、オレの名前はうずまきナルトだってばよ!
好きな食べ物は、一楽のラーメン!

将来の夢は、火影になることだってばよ!

おれってば、その…、サクラちゃんのこと……、いやぁ、何でもないってばよ。

サスケはキライだ! バーカバーカ!』


「あのなぁナルト……これは報告書代わりの練習なんだぞ。もっと任務の事とかをね」
「分かったってばよ。カカシ先生」
あきれ顔のカカシに、ニシシと笑うナルト。


『                 
                               』


「ナルト、なーんだこれは? 何にも書いてないじゃないか」
「……」
「ま! 今日はいい。明日までには書いとけ」
カカシは、病院のベッドでうつむくナルトに、無理をして笑った。


『報告書

火影様の命により、奈良シカマル小隊長の元、秋道チョウジ・犬塚キバ・日向ネジと共に、うちはサスケ救出へ。五人の敵を一人ずつ担当。ロック・リー・砂の下忍の協力もあり、五人の敵はすべて始末。だが、終末の谷にてうちはサスケは里に戻ることを拒否したため、1対1で決闘。結果、うちはサスケを取り逃がす。
任務失敗。


カカシ先生、今日が最後の日記だってばよ。これからエロ仙人と修業へ行くんだ。先生がS級任務から戻るころには、もうオレは旅立ってるから、手紙代わりに置いていくってばよ。
オレ、日記うまくなっただろ。ちゃんと報告書の練習代わりになったってばよ。
けど……内容は最悪だ。みんながんばったのに、オレのせいで、任務失敗したってばよ。キバは大切な赤丸を怪我さしちまって、ネジとチョウジは命まで危険にさらされて、シカマルは責任感じて忍やめようと思うほど落ち込んで……。
なのにサスケを、連れ戻せなかったんだ……。

オレさ、今日、日記初めから見返してみたんだ。一番初めの日記、恥ずかしくて顔が真っ赤んなっちまったってばよ。オレってば、まだガキだったなーってさ。それからも、いろんな事があったなーって、読んでて思った。すげぇ懐かしかったってばよ。任務の時も、中忍試験の時も、第七班の三人はいつも一緒だった。
だから先生、オレ、今すげーつらいんだってばよ。

……オレ、先生にあやまらなくちゃいけないことがあるんだ。
ごめん、カカシ先生。初めての日記に書いた、サスケはキライって言葉、あれ、うそなんだ。
オレってば、ホントは昔からサスケにあこがれてたんだってばよ。
今では、一番の友達なんだ。

だから修業して、絶対にサスケを連れ戻す。
サクラちゃんとも約束したんだ。一生の約束だって。
まっすぐ自分の言葉は曲げねェ。それがオレの忍道だからよ。

オレ、強くなって帰るってばよ。
カカシ先生がよろこぶおみやげ持って帰るから、楽しみにしててくれよな』


「済まなかったな…ナルト。あの時オレが間に合っていれば……」
ナルトが旅立った里で、カカシはナルトの日記を読んでいた。
『今では、一番の友達なんだ。』
その場所には、涙でにじんだあとがあった。
「ナルト。お前は強くなれ。オレみたいにはなるな……」
慰霊碑の前で、カカシは一人、つぶやいた。



☆あとがき☆
ナルトの成長および、幸せな初期と悲惨な末期の対比を書きました。
ホント言うと、ナルトはまだあんな立派な?報告書や漢字は書けないと思いましたが、成長感を出すために、あえてあの文体にしました。
日記と報告書を兼ねているのですが、プラス、カカシ先生への手紙が入ってしまい、混乱してしまったかもしれません。
最後のカカシ先生のオビトへの気持ちは、本編のテーマとは若干ずれたおまけです。

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カカシ先生の言いつけで、報告書の練習代わりに書いたサスケの日記です。


『サスケの日記』(NARUTO 4)

第七班メンバー結成当初、カカシ先生は部下たちに白紙の巻物をそれぞれ渡した。
「お前たち、今日から日記をつけろ。報告書の練習代わりだからな。ちゃんと書いて、提出するんだぞ」
「えー!?」ナルトとサクラ。
「ちっ…」サスケ。


『報告書 ○月×日

午前八時任務開始

第一任務「迷子ペット”チビ”捕獲」
第二任務「大名のご子息子守」
第三任務「畑仕事手伝い」

全て任務成功
午後四時任務終了

                  以上』


「さっ、皆きのうの日記は書いてきたな」
三人の日記に目を通すカカシ。

「あのなぁナルト……これは報告書代わりの練習なんだぞ。もっと任務の事とかをね」
「分かったってばよ。カカシ先生」
あきれ顔のカカシに、ニシシと笑うナルト。

「うすらトンカチめ」
ナルトをバカにするサスケ。
「サスケ。お前もちょ~っとちがうなぁ」
「なに?」
サスケは、ムッとしてカカシをにらんだ。
「確かに、報告書としては良く出来てる。だが、これは日記と言ったはずだ」
「どういうことだ」
カカシはサスケににっこり笑った。
「これはあくまで、将来報告書を書くための『練習』だ。それとともに、お前らの物の考え方、日々の生活……それを書くのが日記ってもんだ。担当上忍として、知っておく必要があるからな」


『報告書 ○月□日

○月△日午後一時より任務開始。

任務「護衛 人物 モリト 任期 小屋の完成迄」

本日午前九時任務終了。
任務成功にて午前十時解散。

                  以上』  


「サスケ……お前はどうしてオレの言うことが聞けないの?」
カカシが、サスケの顔をのぞき込んで言った。
「なぜオレがプライベートのことまで教える必要がある」
サスケは、ふいと顔をそらした。
「お前らは、まだ子供だ」
「オレってば、もう一人前の忍者だってばよ!!」
にっこり笑うカカシに、ナルトはくってかかった。
「今日はサクラがいないからちょうどいい。お前らは特に……」
サクラは風邪で任務を休んでいた。カカシは少しかがんで二人に目線を合わせた。
「……両親がいない。だからオレは、担当上忍であるとともに、お前らの保護者だ。だからいろいろ知っておく必要がある」
「カカシ先生……」
目をうるうるさせて感動しているナルトをよそに、サスケはおもしろくなさそうに顔をそむけていた。


『報告書 △月×日

本日木の葉病院にて入院中の為任務無し。

                  以上

追伸
これをアンタが読んでいる頃には、オレはもう大蛇丸の元だろう。
この日記に、オレは任務以外何も書かなかった。誰もオレを理解してくれるやつなんていないと思ったし、してほしいとも思わなかった。
だがどうやら、カカシは少しだけオレを理解してるらしい。だから最後だけ付き合ってやる。

オレの日々の生活……特に変わったことはない。たいがい修業だ。たまに散歩をする。飯はおむすびとトマトが多い。

あと、物の考え方だったな。
オレは復讐者だ。それだけの為に生きてきた。だから今日里を出る。

ああ、今更こんなこと話しても無駄だったな。オレにとってカカシはもう、担当上忍でもない。カカシにとってオレはもう、保護する者でもない……。
そうだろ、カカシ……。

けれど、最後に言っておきたいことがある。
オレは、「大切な仲間」を否定した訳じゃない。         』
                               

「サスケ……済まない。オレはお前を……守ることが出来なかった……」
サスケが旅立った里で、カカシはサスケの日記を読んでいた。
『オレは、「大切な仲間」を否定した訳じゃない。』
その言葉は、サスケが初めてカカシにくれた心の声だった。
「だが、絶対お前は連れ戻すからな……」
カカシは一人、遠い空を見上げた。



☆あとがき☆
『ナルトの日記』に続く、第二作『サスケの日記』です。
ナルトと対照的なサスケ、サスケの心の闇、そして最後に少しだけカカシ先生に心を開くサスケを書きました。
比較的気持ちを素直に出すナルトに比べ、肝心なことはひた隠しにするサスケを書くのは難しかったです。
カカシ先生がナルト・サスケに保護者発言をしたとき、サスケも少しだけうれしかったかなぁと思いながら書きました。 

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カカシ先生の言いつけで、報告書の練習代わりに書いたサクラの日記です。


『サクラの日記』(NARUTO 5)

第七班メンバー結成当初、カカシ先生は部下たちに白紙の巻物をそれぞれ渡した。
「お前たち、今日から日記をつけろ。報告書の練習代わりだからな。ちゃんと書いて、提出するんだぞ」
「えー!?」ナルトとサクラ。
「ちっ…」サスケ。


『○月×日 晴れ

今日は六時に起きました。鏡の前で、一生懸命おしゃれしました。
午前八時に任務開始。初めの任務は、迷子ペットの捕獲です。ナルトがサスケ君に絡んでうるさいから、猫のチビちゃんが逃げそうになりました。でも、サスケ君が素早い動きでつかまえました。私、どきどきしちゃいました。
次に、大名のお子様の子守をしました。ナルトは三歳の子といっしょにじゃれていて、まるで同レベルって感じでした。サスケ君は、クールに見守っていて、素敵でした。
最後に、畑仕事のお手伝いです。ナルトは、威勢ばっかり良くて、耕し方が雑でした。サスケ君は種をまいていました。無駄のない動きで、とってもクールでした。
午後四時に任務終了。せっかくサスケ君と二人で帰ろうとしたのに、ナルトがくっついてきて、その間にサスケ君は帰ってしまいました。
家に帰って、夕ご飯を食べました。ご飯はお茶碗半分です。魅力的な女の子になれるよう、日々努力中です。髪は、バラの香りのシャンプーで洗いました。明日は、さらに魅力的になった私を、サスケ君が気付いてくれることを祈ってます。お風呂上がり、部屋の窓から星空を見上げました。そうしていつも、今日のサスケ君を思い出しているんです。           』


「さっ、皆きのうの日記は書いてきたな」
三人の日記に目を通すカカシ。

「あのなぁナルト……これは報告書代わりの練習なんだぞ。もっと任務の事とかをね」
「分かったってばよ。カカシ先生」
あきれ顔のカカシに、ニシシと笑うナルト。

「うすらトンカチめ」
ナルトをバカにするサスケ。
「サスケ。お前もちょ~っとちがうなぁ」
「なに?」
サスケは、ムッとしてカカシをにらんだ。
「確かに、報告書としては良く出来てる。だが、これは日記と言ったはずだ」
「どういうことだ」
カカシはサスケににっこり笑った。
「これはあくまで、将来報告書を書くための『練習』だ。それとともに、お前らの物の考え方、日々の生活……それを書くのが日記ってもんだ。担当上忍として、知っておく必要があるからな」

(サスケ君に注意するなんて、しゃ~んなろ~!! ※内なるサクラ)
「サクラ。お前の書き方が一番いいな」
「そっ、そうかしら」
「ああ。趣旨どおり、任務、生活、考え方のすべてが書いてある」
(当ったり前じゃない~。私は頭脳明晰なのよ! ※内なるサクラ)
「けど内容は……最悪」
にっこり笑うカカシに、サクラはガーン……。
「お前は仲間をなんだと思ってるんだ…。それに、任務中の自分の様子が全く書かれてない。なぜだか、自分でも分かってるはずだな、サクラ」
「……カカシ先生の言うこと、ぜんぜん分からないわ!」
サクラは、困惑していた。
「そうか…。ま! そのうち分かるさ」
カカシはサクラの頭に、ポンと手を置いた。


『△月△日 晴れ
昨日の日記書けなかったので、今日の分と一緒に書きます。
昨日、サスケ君が里を出ました。私、本当に必死で止めました。けれど、サスケ君は行ってしまいました。
今日、火影様の命で、新米の五人がサスケ君を連れ戻すことになりました。そのメンバーに、ナルトも入っていました。私はナルトに、サスケ君のこと連れ戻してくれるよう、一生のお願いをしました。ナルトは、笑顔で約束してくれました。
先生、前に私に、仲間をなんだと思ってるんだって言いましたよね。私、ナルトのこと、何も分かっていませんでした。でもナルトは、私のこと分かっててくれたんです。
先生、私、辛くて辛くて死にそうです。しばらく日記、書けそうにありません。だから、先生の家に置いていきます。
先生、お願いです。これを読んだら、二人の元へ行ってください。サスケ君とナルトは、戦っているかもしれません。病院の屋上での、あの時のように…。
二人をどうか止めてください。私にとっては、サスケ君もナルトも大切なんです』


任務から戻り、サクラの日記を読んだカカシは、すぐに火影室へと向かった。


『△月○日 晴れ
今日はナルトのお見舞いに行きました。病室の前で、サスケ君が行ってしまった事を知りました。
ナルトは、私にあやまり、そして一生をかけて約束をはたすと言ってくれました。傷だらけのナルトを見て、心がズキンとしました。
先生、ごめんなさい。任務中の自分が書けない訳、本当は分かってました。私は三人の中で、いつも一人足手まといでした。いつも人に任せっきりで、自分では修業もろくにせず、弱いままでした。だから、そんな自分を書くのが恥ずかしかったんです。
でも、もう弱い自分は嫌です。誰かに頼るばかりの自分は嫌です。
私は今日、綱手様に弟子入りしました。
大切な人を守るために、私は必ず強くなります。』


「サクラ…ごめんな。サスケも連れ戻せず、ナルトにも心の傷を負わせた…」
ナルトもサスケも旅立った里で、カカシはサクラの日記を読んでいた。
『大切な人を守るために、私は必ず強くなります。』
その想いは、とても強い意志が感じられた。
「サクラ、またいつか、昔のように……」
カカシは一人、三人と自分が写る写真を見つめた。



☆あとがき☆
『ナルトの日記』『サスケの日記』に続く、第三作『サクラの日記』です。
この三作品で、三部作としてまとめます。
サクラちゃんは同姓だから書きやすいかなと思っていたのですが、一番難しかったです。テーマを二つにしたせいでしょうか。(仲間への想いと弱い自分)
ナルト日記同様、サクラの成長が総合的なテーマになっています。
ラストのカカシ先生シーンは、三部作をまとめました。
幸せな初期、悲しい現実、そして望む明るい未来……。

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サスケとナルトの、手に入れることが出来なかった幸せの話です。


『サスケの額当て』(NARUTO 6)

 大蛇丸の館に着いたサスケは、与えられた自室で眠りについた。

 まぶしくて目を開けた。辺りはまばゆい光に包まれ、真っ白な世界だった。目を凝らして光の根元を見ると、それは自分の額当てだった。木の葉の印を横にすっとひいた傷から、強烈な光が発せられている。それを手に持つのは、小さな少年だった。光で、顔が見えない。
 少年は、額当てをサスケに差し出した。
「いらねェよ。傷ついた額当てなんか……」
 すると少年は、傷に手を当てた。魔法のように、傷が消えていった。サスケは、心がすーっと軽くなるのを感じた。心地よくなり、再び眠りに誘われる中、光が消えていく中で見えた少年は……。
「……ナル…ト…?」

「おい、起きろよサスケ」
 誰かに揺さぶられ、サスケははっと目を覚ました。ナルトが、木に寄りかかるサスケを不思議そうに見ていた。
「お前が居眠りするなんて、めずらしいな」
 ナルトは、手裏剣を出しながら言った。サスケはぼんやりしながら、辺りを見回した。森の中だった。
「夢……見てたんだ。でも、何の夢か、思い出せないんだ……。オレ、どうしてここにいるんだっけ」
 サスケは、もうろうとした意識でたずねた。
「どうしてって、オレと修業するためだろ」
 ナルトはにっと笑った。サスケは思い出した。アカデミーに入ってから半年。授業が終わると、いつもこうしてナルトと修業をしていたことを……。
「オレもお前もクラスで一番だけど、一緒のクラスじゃねェからな。だからこうして、修業するんだってばよ」
「そうだったね。兄さんは任務で忙しいし、ナルトの父さんは火影様だもんね」
 サスケも立ち上がって、手裏剣をかまえた。

 修業が終わると、公園へ行った。誰もいない公園で、二人はぶらんこに並んで座った。
「母ちゃんが作った団子、お前も食うだろ。これ、父ちゃんも大好物なんだ」
 ナルトはサスケに、草団子を一つ渡した。
「ありがとう」
 さすけは笑って受け取った。ナルトは一気に食べ終えると、なんだか恥ずかしそうに切り出した。
「お、お前のクラスにさぁ、サクラちゃんって子いるだろ」
「女の子には、興味ないよ」
 ナルトは、少しふくれっ面をした。
「おれさ、なんだかサクラちゃんのこと、気になっちゃうんだってばよ。…けど、サクラちゃん、いつもお前ばっか見てるってばよ」
 サスケには、ナルトの言う意味がよく分からなかった。
「昔さ、オレたちが生まれる頃、『きゅうびのようこ』っていう、すっげえ化け物がいて、そいつを父ちゃんがやっつけたの知ってんだろ。だけどさ、これは大人たちの噂なんだけど、もし父ちゃんが倒せなかったら、そのときはオレの体にその化け物を封印したんだってさ。もしそうだったら、オレってばすっごく強くなって、今頃里中の人気者になってさぁ。そんでもってサクラちゃんもさぁ……」
 ナルトは、目を輝かせて言った。
「オレだって、もし『万華鏡写輪眼』を手に入れたら、すっごく強くなれるんだ。でも兄さんは、開眼する方法を知ってるのに、手に入れないんだ。何でかよく分かんないけど、それがうちは一族の幸せの為なんだって。オレは兄さんが強くなったほうが、よっぽど幸せだと思うけどな。一族にとっても、オレにとっても!」
 サスケもまた、あこがれの兄さんを思い、心ときめかせた。

 帰り道、ナルトは満面の笑みで言った。
「オレたち、ずーっと友達でいような」
「今さら何言ってんだよ。当たり前だろ」
 サスケは、少し照れたように笑った。
 二人は、夕空の下、並んで歩いた。それぞれ、あたたかい家に向かいながら……。

 時は過ぎ、卒業試験の日がやってきた。すぐに合格したサスケは、額当てを受け取った。けれど、よく見ると、木の葉の印をすっと切るような傷が付いていた。
「あの……先生、これ……」
 言い終わらないうちに、額当ての傷から強烈な光が発せられた。辺りは、まばゆい光に包まれ、真っ白な世界になった。
「ごめん……サスケ……。その傷、オレがつけたんだ……」
 振り向くと、ナルトが立っていた。前に夢で見た、まだ小さなナルトだった。
「消そうと思ったけど……、だめだったってばよ……」
 ナルトは、目に涙をためていた。
「あの時、お前の額当てに傷をつけるんじゃなくて……無理矢理、連れ戻そうとするんじゃなくて……お前の気持ちをもっと……」
 サスケは、訳も分からないまま、知らない記憶が頭をよぎった。どこかの谷間で戦った。ナルトと……。
「オレも繋がりを持ってて、お前の一族もあんな風にならなかったら……」
 ナルトは、涙をぼろぼろこぼした。サスケは、終末の谷で戦ったときのナルトを、おぼろげに思い出していた。
「でもダメだった……。一度付けた傷は、元に戻らなかったってばよ……」
 そのとき、ふっと大蛇丸が現れた。
「さあ、帰りましょう。サスケ君」
 サスケの手から力が抜けて、傷ついた額当てはするりと落ちた。

 目を覚ますと、暗闇の中だった。大蛇丸から与えられた自室。すべて、夢だった。
 サスケは、夢の中の小さなナルトに語りかけた。
「ナルト……お前に、言ってやりたい。九尾の力を手にしても、万華鏡写輪眼を開眼しても、決して……」
 サスケはもうそれ以上何も言わず、目をつむった。
 傷ついた額当ては、もう元には戻らない。けれどナルトは、それを拾ってくれただろうか。
「オレたち、ずーっと友達でいような」
 ふと、夢の中の幼いナルトの声が聞こえてきた。
「今さら何言ってんだよ。当たり前だろ」
 夢の中なら、いくらでもそう答えられる。
 サスケは、もう一度夢の続きが見たかった。けれどもう、二度とその夢を見ることはなかった。 



☆あとがき☆
もしもナルトに九尾が封印されていなければ…。
もしもサスケにあの事件がなければ…。
二人が得ることができなかった幸せを書きました。
努力家のナルトは九尾を封印されなければ、また四代目火影パパ(たぶん)に修業をつけてもらっていれば、きっと幼い頃から優秀だったと思います。
サスケもまた、イタチ兄さんが道を踏み外さなければ、家族円満で幸せだったと思います。物語中書き切れませんでしたが、作中のサスケ父はいつも「さすがオレの子だ」とほめており、イタチもまたサスケを愛しています。
ナルトとサスケ、二人は環境によりひねくれることもなく、自然に友達に…という設定になっています。
サスケの額当てについて。この話、実は上記とは別の作品にするつもりでしたが、かぶるところが多々あるので、一緒にしてしまいました。
作中のナルトは、終末の谷でただただサスケを連れ戻すことに必死で、サスケの心内を考えなかったことを反省しています。額当ての傷は、サスケの心の傷と思うナルトは、傷を消すために幼い頃からやり直そうとします。「初めから繋がりをもってなかったお前に何が分かる」と言われたから両親を持ち、また、うちは一族のあの事件もなかったことにして、パラレル世界を作ります。(パラレル世界のナルトは、そんなこと知りません)けれどやはり現実を変えることは出来ず、ナルトは泣くのです。でもパラレルの世界は、サスケには夢のような幸せな世界だった…。イタチ兄さんが、万華鏡写輪眼を開眼するよりずっと。だからナルトに教えてあげたい…。九尾の力を封印しても、決して幸せにはなれないのだと…。
そして、サスケにとって額当ては、現実世界の中で幸せの象徴であり、親友であるナルトと過ごした日々にずっと付けていたものです。だから、サスケは復讐のためその幸せを捨てたけれど、ナルトには持っていてほしかった。心のどこかで、サスケはそう思っているんじゃないかなと思いました。
 
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幼いナルトとサスケの、孤独生活の日々です。


『ひとりぼっち』(NARUTO 7)


――其の一 ナルト――

オレのなまえは、うずまきナルト。七さい。
はじめから、ひとりぼっちだった。

あさおきて、ごはんたべて、がっこうへいく。
だれもおこしてくれないし、ごはんつくってくれない。
いってらっしゃいって、いってくれない。

ともだちは、あんまりなかよくしてくれない。
おとなたちは、オレにつめたい。
なんでだろう。

がっこうがおわると、おみせにいく。
いつも、パンとカップラーメンをかう。

いえにかえって、ごはんたべて、ねる。
だれもおかえりなさいっていってくれないし、ごはんつくってくれない。
おやすみなさいって、いってくれない。

ゆめのなかで、さみしくて、なきながらはしってた。
ころんで、おきあがったら、ふたりがおれをみてわらってた。
みたことあるきがする。こんいろのふくのおとこのこ。あかいふくのおんなのこ。
オレよりおおきい。ひたいあてつけてる。だれだろう。

あさおきて、ごはんたべて、がっこうへいく。
おとこのこも、おんなのこも、ここにはいない。

オレのなまえは、うずまきナルト。七さい。
はじめから、ひとりぼっちだった。
ゆめのなかのふたりに、あいたいなぁ。


――其の二 サスケ――

オレの名前は、うちはサスケ。七歳。
あのときから、ひとりになった。

朝起きて、ご飯食べて、学校へ行く。
母さんはおはようって言ってくれないし、ご飯作ってくれない。
いってらっしゃいって、言ってくれない。

友達とは、あまり仲良くしない。
復讐者だから、修業に忙しい。
なんで、あんなことになったんだろう。

学校が終わると、お店に行く。
いつも、お米とトマトを買う。

家に帰って、ご飯食べて、寝る。
父さんはおかえりって言ってくれないし、母さんはご飯作ってくれない。
兄さんは、おやすみって、言ってくれない。

夢のなかで、さみしくて、泣きながら走ってた。
転んで、起きあがったら、二人がオレを見て笑ってた。
見たことある気がする。オレンジ色の服の男の子。赤い服の女の子。
オレより大きい。額当て付けてる。だれだろう。

朝起きて、ご飯食べて、学校へ行く。
男の子も、女の子も、ここにはいない。

オレの名前は、うちはサスケ。七歳。
あのときから、ひとりになった。
夢のなかの二人に、会ってみたいなぁ。



☆あとがき☆
ただひたすら、ナルトとサスケの孤独を書きました。
『サスケの額当て』(NARUTO 6)と対照的な話になっています。
其の一ナルトと其の二サスケ、平仮名と漢字の違いは、学習能力の差です(ごめんねナルトくん)  
夢の中の話は、NARUTOアニメ初代エンディング・ラストシーンをイメージしています。

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第七班三人の、仲良く遊ぶ楽しい任務です。


『三人一組(スリーマンセル)の休日』(NARUTO 8)

「明日は、特別任務とする」
 任務後、いつもの橋の手すりに腰をかけ、カカシは部下たちに言った。
「えーっ! ホントっ? ホントっ? どんな任務だってばよ~!」
 一人はしゃぐナルトをよそに、サクラは内心どきどきし、サスケは平静を装いつつも汗を流して緊張していた。
「ん? 三人で一日遊んでこい」
 にっこり笑うカカシに、ナルトはずっこけた。
「どーいうことだ」
 サスケは、カカシをにらんだ。
「いや~、お前たち、何かチームワークなってないから。仲良くなってこい。では解散♪」
 カカシは、シュッと姿を消した。
「ラッキー! 明日は一日遊んでいいなんて♪ 休日と一緒じゃない!」
 サクラは大はしゃぎだった。

 次の日、三人はとりあえずいつもの橋へ集まった。
「オレさ、オレさ、遊園地行きたいってばよ!!」
「フン。ガキめ……」
「いいわ。一人ずつ希望のところへ行きましょ」
 三人は、木ノ葉遊園地へ出発した。

「ひゃっほー!!」
「きゃー!!」
「……」
 三人は、ジェットコースターを満喫した。(約一名を除く)
「次はサスケ君が決めて。何のりたい?」
「あれがいい……」
 サスケが指さしたのは、観覧車だった。ナルトとサクラは、耳を疑った。
「高いところは好きだ」
 そうして三人は、観覧車にのりこんだ。
「サスケ君、座らないの?」
 向かい合わせの席にそれぞれ座る二人に、サスケはさも当然そうに言った。
「どっちかに座ったら、乗り物が傾くだろ?」
 ナルトとサクラは、顔を見合わせた。
「サスケ君……。もしかして、遊園地初めてなの?」
「ああ」
 サスケは、興味深げに、真ん中に立ったまま下を見下ろした。
 観覧車から降りると、サクラはすかさず言った。
「今度は私の番! メリーゴーランドに乗りましょう♪」
 サクラはスキップで、メリーゴーランドに向かった。
「……なんだ、あの恐ろしく乙女チックなものは……!」
 サスケは青ざめた。
「オレ、これ乗る! この一番でっかい馬!!」
 ナルトは、うれしそうに飛び乗った。
「私は子馬さんに乗るわ。サスケ君は白馬に乗って。さっ!」
「断る!!!」
 サスケは、今にも吐きそうな表情で後ずさりした。

「楽しかったわね、遊園地。次はサスケ君が決める番よ。どこへ行く?」
「……散歩。行くぞ、森……」
「森ぃ~!?」
 ナルトは理解不可能な表情で、ついていった。
 三人は、森をてくてく歩いた。
「サスケ……。これ、楽しいのか?」
「ああ。趣味だからな」
 三人は、さらにてくてく歩いた。
「サスケ君って、いつもこんな風に遊んでるの?」
「趣味だからな……」
 三人は、どこまでもてくてく歩いた。
「だーっ! お前の趣味はつまんねー!!」
 ナルトはとうとうブチ切れた。
「じゃあ、次は私の番でいいわよね」

「どうしたの二人とも。早く中へ入ってよ」
 サクラは二人の腕をひっぱり、店の中へ連れて行った。
「わぁ、これかわいい! これも素敵♪」
 サクラは店を歩き回っては、うれしそうにはしゃいだ。
「ナルト、どうする?」
「サクラちゃんの隙をついて、逃げるってばよ」
 二人は、シュっと店を抜け出した。
「女の子の服屋なんて、恥ずかしいってばよ」
「同感だ」
 サクラは、一時間もしてから、やっと二人の消息に気が付いた。

「おなかがすいたわねぇ。お昼にしましょ」
 サクラが二人を案内した店は、「かふぇ」だった。なにやら見たこともないような外国の置物が、たくさん飾られている。
「みんな、何食べる? 私はかれーにしよっと♪」
 ナルトとサスケは、???だった。
「サクラ。おむすびはないのか?」
「やあねぇサスケ君。ここはおしゃれな外国のお店なのよ。ご飯ものなら、おむらいすはどう?」
「サクラちゃん。ラーメンは?」
「だからそんなものないの。麺なら、すぱげってぃがあるわ」
 ナルトとサスケは、出されたものに驚愕した。
「なんだサクラ。その茶色のどろどろしたものは……」
「二人とも、味見してみる?」
 二人は、それぞれ少しずつ味見した。
「……うっ」
「かっ、辛いってばよ~!!!」
 サスケは涙目でうなり、ナルトは思い切り叫んだ。
「そうかしら」
 サクラは、平気でぱくぱく食べ始めた。ナルトとサスケも、それぞれ注文したものを、おそるおそる口にした。
(うっ、ご飯の上にどろどろの卵がかかっていて、気持ち悪い……)
(何かこの麺、ボソボソしてつゆがないってばよ)
 二人はけれど弱みを見せまいと、平然をよそおって食べ終えた。

「どーする? 三人の希望の場所は、もう行っちゃったしね」
「帰って修業したいのは山々だが、カカシが見張ってるかもしれんし……」
「そのことなら、心配ないってばよ」
 ナルトは、ニシシと笑った。
「オレ、エロ仙人から聞いて、知ってんだ。今日は、イチャパラ劇場版の公開日なんだって。先生、あれ大好きだもんなぁ」
「なんですってー!? 信じられない!!」
 サクラは憤慨して、二人の腕を無理矢理引っ張った。
「どっ、どこ行くんだってばよ~」
「決まってるでしょ! 先生の犯行をこの目で見て、訴えてやるのよ!」
「犯行……なのか?」
 サスケのつぶやきを無視して、サクラは二人を映画館へ連れて行った。
「子供三枚!」
 サクラは受付の人に叫んだ。
「あの、申し訳ございませんが、この映画の閲覧はお子様禁止でして……」
「……そっ、そうよね」
 やっと冷静になったサクラは、二人を建物裏へ連れ込んだ。
「こうなったら、変身術で大人になって入るのよ」
「サ、サクラちゃん、別にそこまでしなくたって……」
 ナルトは途中でサクラの殺気を感じて、口をつぐんだ。サスケにもそれが伝わってきて、汗をだらだら流した。
 三人は大人に変身して映画館に入ると、一番後ろの席で術を解いて椅子の影に隠れた。
「あっ、いたわ。カカシ先生よ!」
 カカシは前の方の席で、イチャパラ劇場版パンフレットを読んでいた。
 間もなく、上映が始まった。めくるめく場面。カカシは超真剣に見入っている。
「つまんねー映画」
 ナルトは、あくびを一つした。
「……! ……!!」
 サスケは、顔を真っ赤にした。
「カカシ先生……。最低……!!!」
 サクラは、肩をぷるぷる震わせていた。

 次の日。カカシはさわやかな笑顔で現れた。
「やぁ諸君おはよう! 昨日は仲良く遊んできたかな?」
 三人がカカシに軽蔑の目を向けたのは、言うまでもなかった。



☆あとがき☆
シリアスものが続いたので、肩の力を抜いて、ただただ楽しいものをと思って書きました。初!のギャグものです。え…と、NARUTO設定よく分からないので、サスケの高いところ好きとか、サクラの辛いもの好きとか、洋食を知らない等すべて想像です。違ってたらごめんなさい!
追記 サクラちゃんは激辛が大嫌いだそうで…。すみません^^;

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この小説は、「天使の笑顔」「悪魔の笑顔」で対になっている作品です。

「天使の笑顔」について
アカデミー時代、ほのかな恋心を抱くナルトとヒナタの話です。(ナルヒナ・ほのぼの)
「悪魔の笑顔」について
アカデミー時代、危ない恋心を抱くヒナタとナルトの話です。(ヒナナル・ギャグ)

警告:「悪魔の笑顔」は、ヒナタが壊れています。イメージを壊されたくないかたや、万が一「天使の笑顔」を気に入ってくださり余韻にひたりたい方は、読まれないことをおすすめいたします。
逆に、ギャグ小説がお好きな方、両方お好きな方は、「天使の笑顔」をお読みいただいてから読んでいただきますと、ギャップの激しさとギャグで二度楽しめます。


『ヒナタの笑顔』(NARUTO 9)

――其の一 天使の笑顔――

 今日もアカデミーの授業が終わると、ナルトはいつものように森で修業を始めた。木に手裏剣やクナイを投げつける。
「はぁっ…はぁ……。今日はなんか体だるいってばよ…。けどもうすぐ卒業試験だ。修業をさぼるわけにはいかねぇ!」
 ふらふらになりながら手裏剣を飛ばすナルトを、影から心配そうに見つめる人物がいた。それは、いつもナルトをそっと見守っているヒナタだった。
(今日のナルトくん、なんだか辛そう……。だいじょうぶかしら)
 ヒナタが胸に手を当てはらはらしているうちに、とうとうナルトは倒れてしまった。顔は赤く、意識ももうろうとしているようだった。
(ナルトくん……!! 早く手当てしなくちゃ! でも私が出ていったら、影で見てたことがばれちゃう……。でも…でも……!!)
 今はそれどころではない、と覚悟を決めたヒナタは、ナルトの元へ走った。
「……ナルトくん!」
「……ヒナタ? …どーしてここに……」
「そっ、それは……」
 倒れたままかすれた声でたずねるナルトに、ヒナタは顔を真っ赤にした。
「あの…その…、そっ、そんなことより、だいじょうぶ?」
 ヒナタは、あわててナルトのそばに座った。
 ザク……。気が動転していたヒナタは、座る拍子にそばに刺さっていたクナイに足をひっかけてしまった。ふくらはぎから血があふれ、ヒナタの白いズボンはどんどん赤く染まっていく。
「ヒナタ!」
 ナルトはあわてて体を起こした。その時ヒナタの顔があまりにも近くにあったので、ナルトはドキッとした。ヒナタは反射的に少し後ずさりしたが、そのとき足に激痛が走った。けれどヒナタは痛みで顔が苦痛にゆがむのを必死で抑え、おそるおそるナルトの額に手を当てた。
「すごい熱…! あ、あの、ナルトくん……私におぶさって!!」
 ヒナタは精一杯の勇気を振り絞って言った。ところがナルトは、さらに顔を真っ赤にした。
「何言ってんだ……。おぶさるのはお前だってばよ」
 ナルトは弱々しくも意志の強い声でそう言うと、ポーチから布きれを取り出した。はぁはぁしながら、ナルトはヒナタの足に布をぎゅっと巻き付け止血した。そしてふらふらと立ち上がり、有無を言わせずヒナタをおぶった。
「はぁ…はぁっ……。薬付けないとダメだってばよ」
 ナルトは一歩一歩、ふらつきながら歯を食いしばって歩いていった。途中で、首にまわされたヒナタの手に力が入った。抱きしめられたような感覚に、ナルトは心臓がばくばくした。
(こっ、これってば、熱のせいじゃないってばよ……)
 もうろうとした意識で考えていると、ふと感じたのは小刻みに体を震わせているヒナタだった。
「どっ、どうしたってばよ、ヒナタ……」
「だって……、ひっく、ナルトくんも…熱があるのに…ひっく……」
 ヒナタは、肩をふるわせてナルトにしがみついた。ナルトは、顔のすぐそばでヒナタの熱い涙を感じた。
「こんくらい……だいじょうぶだってばよ……」
 ナルトは虚勢を張って、体に気合いを込めた。このまま倒れるわけにはいかない。
「ごめんなさい……ナルトくん……」
「いーから、あやまんなって」
 無理をして平静をよそおいながら、ナルトは息も絶え絶えに自宅へ向かった。

 家に帰ると、ナルトはヒナタをベッドへ座らせた。そして薬をつけてやった。
「よーし。もうこれでだいじょうぶだ」
 ナルトはほっと一息ついたが、ヒナタの表情はあまりにも辛そうだった。
「どうしたってばよ。そんなに痛むか?」
「ううん! ただ……、ナルトくんに申し訳なくって……」
 ヒナタの言葉に、ナルトは心にひっかかる何かを覚えた。
「ヒナタ……申し訳ない、なんて……、大人が使う言葉だぞ……」
「ナルトくん……」
 少し不機嫌そうにも見えるナルトに、ヒナタは泣きそうな表情になった。
「ごめんなさい……。ナルトくん……」
「そーじゃなくって……こーいうときは笑ってありがとって言えばいいんだってばよ」
 少しそっぽを向いてぼそりとつぶやいたナルトに、ヒナタは涙目になった。
「わーっごめんってばよヒナタ! 泣くな泣くな」
 ナルトは、ヒナタの頭を優しくぽんぽんした。ヒナタは赤くなったが、よほどうれしかったらしい。
「ありがとう。ナルトくん」
 先程目にためた涙をこぼしながら、ヒナタは天使のように笑った。
 それを見たナルトは、ついに倒れてしまった。
「ナルトくんっ。顔が真っ赤! 熱が上がって……」
「お前のせいだってばよ……ヒナタ……」
「えっ!?」
(笑ったヒナタ、マジでカワイイってばよ……!!)



――其の二 悪魔の笑顔――

 今日もアカデミーの授業が終わると、ナルトはいつものように森で修業を始めた。木に手裏剣やクナイを投げつける。
「はぁっ…はぁ……。今日はなんか体だるいってばよ…。けどもうすぐ卒業試験だ。修業をさぼるわけにはいかねぇ!」
 ふらふらになりながら修業をするナルトを、影から一挙一動見逃すまいと肉眼で見える距離なのにわざわざ白眼で見つめている人物がいた。それは、木ノ葉の里のナンバーワン女ストーカー・ヒナタだった。
(今日のナルトくん、なんだか辛そう……。だいじょうぶかしら)
 ヒナタが胸元の服を両手でつかみながらじれったそうにしているうちに、とうとうナルトは倒れてしまった。顔を赤くして、意識ももうろうとしているようだった。
(ナルトくん……!! 早く手当しなくちゃ! でも私が出ていったら、私のストーカー行為がばれちゃう……。でも…でも……!!)
 今はそれどころではない、と覚悟を決めたヒナタは、ナルトの元へ走った。
「……ナルトくん!」
「……ヒナタ? …どーしてここに……」
「そっ、それは……」
 倒れたままかすれた声でたずねるナルトに、ヒナタは顔を真っ赤にした。
「あの…その…、そっ、そんなことより、だいじょうぶ?」
 ヒナタはあわててナルトのそばに座った。
 ザク……。気が動転していたヒナタは、座る拍子にそばに刺さっていたクナイに足をひっかけてしまった。ふくらはぎから血があふれ、ヒナタの白いズボンはどんどん赤く染まっていく。
「ヒナタ!」
 ナルトはあわてて体を起こした。その時ヒナタの顔があまりにも近くにあったので、ナルトはびっくりした。ヒナタはどさくさにまぎれてキスをしようとしたが、そのとき足に激痛が走り未遂に終わった。ヒナタは痛みで顔が苦痛にゆがむのを必死で抑え、チャンスとばかりにナルトの額におもむろに手を当てた。
「すごい熱…! あ、あの、ナルトくん……私におぶさって!!」
 ヒナタは言った。けれど言葉とはうらはらに、ヒナタは夢見がちな表情だった。
(ナルトくんの体温が私の背中に……!!)
 ところがナルトは、冗談じゃないという顔をした。
「何言ってんだ……。おぶさるのはお前だってばよ」
 ナルトは弱々しくも意志の強い声でそう言うと、ポーチから布きれを取り出した。はぁはぁしながら、ナルトはヒナタの足に布をぎゅっと巻き付け止血した。そしてふらふらと立ち上がり、有無を言わせずヒナタをおぶった。
「はぁ…はぁっ……。薬付けないとダメだってばよ」
 ナルトは一歩一歩、ふらつきながら歯を食いしばって歩いていった。途中で、首にまわされたヒナタの手に力が入った。抱きしめられたような感覚に、ナルトは一瞬驚いたが、ヒナタが必死で傷の痛みに耐えているのだと解釈した。しかしそれはヒナタの確信犯的行動だった。
(ナルトくんにぎゅってしちゃった!)
 幸せを感じるヒナタだったが、苦しげなナルトに我に返った。自分のために必死でおぶってくれているナルトを思うと、急に胸が苦しくなった。ヒナタは、小刻みに体を震わせた。
「どっ、どうしたってばよ、ヒナタ……」
「だって……、ひっく、ナルトくんも…熱があるのに…ひっく……」
 ヒナタは泣きながらも、またここぞとばかりにナルトにしがみついた。ナルトは、顔のすぐそばでヒナタの熱い涙を感じた。
「こんくらい……だいじょうぶだってばよ……」
 ナルトは虚勢を張って、体に気合いを込めた。このまま倒れるわけにはいかない。
「ごめんなさい……ナルトくん……」
「いーから、あやまんなって」
 無理をして平静をよそおいながら、ナルトは息も絶え絶えに自宅へ向かった。
 ところがヒナタは、この状況に我慢出来なくなった。
(ダメよヒナタ! お熱のあるナルトくんにこんなことさせちゃ!!)
 ヒナタは、いきなりナルトの脳天にチョップをかました。ナルトはあっさり気を失った。
「ナルトくんは、私がはこんであげる!」
 ヒナタは、ナルトをおぶった。だが、どうもしっくりこなかったらしい。ヒナタはなんと、ナルトをお姫様抱っこした。
(このほうがナルトくんの顔が見えていいわ。ああ、幸せ……)

 ナルトの家に着くと、ヒナタはナルトをベッドへ寝かせた。そして足の傷などおかまいなしに床中血をしたたらせながら、ナルトの為におかゆを作った。
「……ん? あれ? オレ倒れちゃったのか?」
 ナルトの表情はあまりにも辛そうだったが、ヒナタは一息ついた。
「どうしたの? そんなに、辛いの?」
「いや。ただ……、ヒナタに済まなくって……」
 ナルトの言葉に、ヒナタは心にひっかかる何かを覚えた。
「ナルトくん……済まない、なんて……、大人が使う言葉よ……」
「ヒナタ……」
 泣き出しそうなヒナタに、ナルトはあせった。
「ごめんってばよ……。ヒナタ……」
「ちがうの……こういうときは…その、笑ってありがとって……」
 少しそっぽを向いて頬を赤らめるヒナタに、ナルトは首をかしげたが、熱で深く考える気力もなかった。
「ありがとうってばよ……。ヒナタ……」
 意識がもうろうとするなか、ナルトはヒナタにかろうじて笑った。そしてそのまま、意識を失った。
「ついに見られたわ私に向けられたナルトくんの笑顔!!!」
 ヒナタは笑った。自分では天使の笑みをしている感覚だったが、はたから見たら悪魔のほほえみだった。ヒナタにとって、今日はストーカー人生最良の日だった。
(笑ったナルトくん、私の胸にいつまでも焼き付けておくわふふふ……!!)



☆あとがき☆
「天使の笑顔」について
初のノーマルカップリング小説です。ナルヒナです。ナルトのほのかな恋心とヒナタの純粋さを書きました。
「悪魔の笑顔」について
初のノーマルカップリングギャグ小説です。ヒナナルです。ストーカーヒナタの歪んだ愛を書きました。



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