『未熟なボクら ―もう一つのNARUTO-ナルト物語― 』
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第34話「バイバイな」
木ノ葉病院。集中治療室でキバは医療忍者に懸命の処置を施されている。覚悟をしておくように……そう言われても親兄弟は任務から帰れない、厳しい忍の世界。しかも今は里から出ていくことを霞の国に禁じられているため、里外にいるキバの母や姉がそれを知ることさえ出来なかった。
シノとヒナタが集中治療室へ入ったとき、キバはとなりに身を寄せる赤丸に話しかけていた。
「赤丸……オレは、だいじょうぶだから……。なっ……」
そうして、意識をもうろうとさせながら、赤丸の頭を力のない手でなでていた。シノとヒナタがキバの前に行くと、キバは二人に目をむける。もう体を動かす力もない。青白い顔。弱い、息づかい。
「キバ……」
シノは、キバの手をそっとにぎる。シノの手は、かすかに震えている。
「キバくん……」
ヒナタは泣くのを必死でこらえ、シノのとなりの、キバの手首を両手で包み込む。
「なぁ……任務成功……したらさ……三人で遊び……いかね……?」
一言一言大事そうに言葉を紡ぐキバに、シノもヒナタも深くうなずく。するとキバは、震える手に精一杯力をこめ赤丸を抱きしめた。
「赤丸……しばらく、バイバイな……。また……会うときまで……オレの代わりになって……くれよな……」
赤丸は、キバの胸の中で、きゅうんと悲しげに鳴いた。そのままキバは眠るように目を閉じ、何かの機器がとたんに警報音を鳴らす。医療忍者たちが騒ぎだし、シノたちは赤丸といっしょに外へ出された。
病室前のベンチにシノとヒナタは座る。辺りは怖いほど静まりかえり、治療室の中の騒音は、なんだか夢のように遠く聞こえる。時折、ヒナタの膝にうずくまる赤丸が切なく鳴く他は、誰も何も言わなかった。
しばらくして、やっとヒナタが口を開く。
「キバくんがいないと……すごく静かなんだね……」
ヒナタは、微笑してシノを見上げる。
「あのね……私ね……八班に配属されたとき最初……ホントはキバくんが怖くて……」
不安定に笑いながら、ヒナタは続ける。
「だけど……いつの間にか……怖い、は……頼もしい、に……変わって……それに、優しい人なんだってことも……知って……」
ヒナタの声は、表情と同じく不安定に揺れる。
「あのね……中忍試験の時ね、私のことすごく心配してくれたの……シノくんが本戦残ったときはね、二人で喜んだの……あのね、私ね、任務中ふと思うの、すごく自然に、いつの間にか同じ班になれてたの私たち……あのね、実は赤丸くんのことも初め怖くって、でも今は可愛いって思って……あのねシノく――」
「ヒナタ」
シノはそっとヒナタの頭に手をやり、自分の肩に寄せる。ヒナタの涙を隠すように。
「……シノくんと私と、赤丸くんと……キバくん……みんなで……」
ヒナタの声が震える。
「みんなで……八班……なん…だよね……。きっ…キバく……いないと……っ、だめ……な…だよね……」
ヒナタは堰を切ったように、声をあげて泣き始めた。震える華奢なヒナタの肩に、シノは手を重ねる。
「……オレも初めはキバのことを……虫が好かないヤツだと思っていた……」
シノは、低く静かに語り出す。ヒナタはシノの腕の中で、かすかに反応する。
「けれど……ともに任務をこなす日々の中……キバはオレにとって……」
ヒナタの肩は、シノの手にぎゅっとつかまれる。その痛みを通して、シノの思いがヒナタに伝わってきた。ヒナタはシノからそっと離れ、両手で目をこすり涙をぬぐうと、うつむくシノの手をそっとにぎった。シノも、その手を握り返す。
シノはかたくなに押し黙り、ヒナタは震えながら赤丸をなで、暗い廊下でただキバを待っていた。
ナルト『次回は……おい夢之助っ! ネジの言うこと聞けってばよ!』
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