『未熟なボクら ―もう一つのNARUTO-ナルト物語― 』
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第60話「過去の夢と未来の夢」
駆け寄るリーに、ネジはめずらしく動揺の目を向ける。
「今までのは準備段階で……肝心の、呪印そのものを解除する方法……。オレは感覚のみで覚えている故……こ、言葉での表現が至極難しい……。シカマル……どーすればいい……」
かなり困惑しているのだろう。ネジは青ざめ、声はわずかに震える。
「……無理だ。いくら解きやすいとは言え呪印だ。それを感覚で覚えちまってるってんなら、言葉で表現するのは無理だ! ただ……アンタがそれをするのを客観的に見ることの出来るヤツがいれば話は別だが……こんなかじゃヒナタしかいねぇ……」
「ヒナタはもう無理だっ! これ以上白眼使ったら――」
「だい……じょうぶだよ……キバくん……。……びゃく…が……」
「ヒナタお姉ちゃん!!」
夢之助は思わずヒナタに駆け寄る。だが、ヒナタの目のまわりから浮き出しそうになった血管は、すぐに消えてしまった。もう、白眼をする力が残っていないらしい。シカマルは、苦渋に満ちた顔をする。
「くそっ! 万事休すか! こんなことなら無理矢理サスケを連れてくるべきだったが、もう時間もねぇ。いや、サスケがいたとしても洞察力じゃ写輪眼は白眼に敵わないか……」
「言ってくれるぜ、シカマル」
上から降ってきた声に皆が見上げると、木の枝に立っていたのはサスケだった。高慢そうに笑う表情が、相変わらずサスケらしい。
「てめーに無理矢理連れてこられるなんて、死んでもゴメンだ」
サスケは木からスタンと降り立つ。
「それに、オレの写輪眼をなめてもらっちゃ困るぜ」
サスケは夢之助に近づいていく。
「サスケくんっ!」
「サスケっ!」
サクラとナルトがうれしそうにサスケに駆け寄る。
「へっ、カッコつけて登場しやがって!」
「なんだお前は……オレのことなんか大嫌いなんだろう? 何笑ってやがる」
サスケは、ナルトにフッと笑う。
「サスケくん……。来てくれてありがとう」
サクラは、目に涙を浮かべて笑った。
「……考えが変わったんでな」
目をつむり満足そうに笑ったサスケは、どこか穏やかだ。
サスケは夢之助の前へ立つ。
「サスケお兄ちゃんっ……!」
夢之助はサスケにぎゅっと抱き付く。肩をひくっと震わせ、しゃくり上げる。
「……抱きついてんじゃねぇ暑苦しい」
サスケは夢之助を引き離そうとするが、夢之助はしがみついたまま離れない。
「抱いててやれよサスケ。こいつ、すっげぇ不安だったんだ。けど今までずっと、泣かねーで我慢してたんだぜ?」
「だからって……お前……」
シカマルの言葉を聞いたサスケは、堰を切ったように泣き続ける夢之助に目を向ける。
「うちはの血の繋がりってやつだろ? 安心して、気がゆるんだんだ。いーことだ。コイツ緊張しすぎて、呪印解放に手間取ってたからな」
「……」
サスケは、そっと夢之助の肩に手を置く。小さくて。少しでも力をこめたら骨が折れてしまいそうな……頼りなく、心許なく、弱い肩。その肩を震わせる子供は、弱くて、無力で、孤独で……。そう……あの紅い月の夜、一族に、父に、母に、そして兄に置いていかれた、独りぼっちになった子供は、こんな風だった。
「泣くな」
あの時の自分に言い聞かせるように。
「生きて……生き延びて……」
伝わる体温はあたたかく、うちはの血が同じように流れるのを感じ、けれどやはり目の前にいる子供は、自分ではない。
『復讐者になれ。過去の夢のために』
「木ノ葉の忍になれ。未来の夢のために」
夢之助は、顔を上げる。ハッとした顔で、サスケを見上げる。涙は、止まっていた。
その時、夢之助の体の光は急激に強まる。
ナルト『次回は……ネジが…死ぬって、ヒナタが……』
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