『未熟なボクら ―もう一つのNARUTO-ナルト物語― 』
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第62話「ありがとう」
サスケは汗をだらだら流しながら、ネジの複雑なチャクラの動きを捉える。
「血のかたまりの中に、絡めた糸を埋め込んでいくんだ。かたまりの筋に合わせて……慎重にやれ」
サスケの声が聞こえているのかいないのか、夢之助は苦しむネジに涙を流す。自分の呪印を解くことは一生出来ないのに、夢之助の呪印を解くことに必死なネジ。
「……ネジさん」
とたんに、夢之助の頬にサスケの平手がパアンととんでくる。
「アイツのことを本当に心配するなら、呪印を解くことだけに集中しやがれっ! ネジがなんのために苦しんでると思ってる!」
「……!」
夢之助はうなずくと、キッと前をにらみ据える。涙をこらえ、呪印に集中する。目をぎゅっとつむる。サスケの腕を、食い込むくらいに強くつかむ。肩で息をする。汗が、滝のように流れる。
やがて、夢之助は糸をすべてかたまりの中へ収めた。
「出来たよっ!」
夢之助の叫びと同時に、ふらりと倒れるネジ。リーは抱きとめ、テンテンもかけつける。
「よかった……ネジ……。よかった……」
テンテンは涙をあとから流し、ネジを抱きしめた。リーもヒナタも、ナルトも、他の皆もほっとした顔をする。夢之助も、余裕のない中、余力で笑う。
「……あ」
かすかな声を、夢之助はもらす。サスケの腕をつかんでいた手を片方するりとはなし、呪印にその手をそっと当てる。
「どうした夢之助!」
「サスケお兄ちゃん……。熱い……」
夢之助が押さえる額から、強烈な光がもれる。
「……爆発する」
青ざめた顔で、夢之助はボソリとつぶやく。
「ネジ! 次はどーするんだっ!!」
サスケは怒鳴る。
「次で最後だ……。だが……最後のプロセスはオレには出来ない……。封印がかけられているからだ……」
「なん……だって……?」
サスケは、体中の血が凍るような感覚を覚える。
「聞け夢之助……。ここまでくれば、後はお前の意志の力で解放出来る……! 呪印は、最終的には自分の意志で解くものだ。理屈ではなく……解きたいと思う気持ちが強ければ、体の中がそう動いてくれる……。人の体は、そういう風に出来ているんだ……」
「解きたいよ! 死にたくない! みんなも死なせたくないっ! だけど体が……熱い……熱いよ……! はっ……はぁっ……もう…ダ……」
「あきらめるな夢之助っ!」
ナルトは夢之助のもとへ駆け寄る。
「木ノ葉の忍になるんだろっ! オレたちと木ノ葉の仲間になるんだろっ!! だったら意地でも呪印解けっ!! 死ぬな夢之助ぇ!!!」
ナルトは涙をボロボロこぼしながら、夢之助の肩をゆさぶる。他の皆も、夢之助をせいいっぱいに応援する。
「ナルトお兄ちゃん……みんな……」
夢之助の呪印からは光があふれ、直視出来ないほどまばゆい。
「ごめんなさい……ボクせいいっぱい頑張った……。だから許して……。それから、ありがとう……」
光は森一面に広がっていく。
「逃げて」
ボソリと夢之助がつぶやいた瞬間。サスケは夢之助を抱き空高く跳んだ。それは本当に一瞬のことだった。サクラがサスケの名を呼ぶ間もなく、ナルトがサスケを止める間もなく。
「サスケお兄ちゃん……。なぜ……?」
「もう独り残されるのはゴメンだ……」
「……ごめんなさい」
サスケと夢之助は、光に包まれ――風もなく爆音が響いた。
ナルト『次回は……サクラちゃんが泣いてるってば……』
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