『未熟なボクら ―もう一つのNARUTO-ナルト物語― 』
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第76話「エピローグその5 ガイ・ネジ・リー・テンテン」
ガイ班の三人は、演習場でガイを待っていた。カカシとともに里へ帰ってきたガイは、またすぐに緊急任務に出かけてしまい、今日やっと帰ってきたのである。
ドドドドドと駆けてくる足音とともに、猛烈な砂埃が舞う。
「リー!!!!!」
「ガイ先生ー!!!!!」
ガイとリーはひしと抱き合う。
「手術が成功してよかった!!! 本当に、本当によかったあああああ!!!」
「うわあああん~!! ガイ先生~!!!」
二人は号泣する。ネジは相変わらずの二人にため息をつくが……。
「……」
ネジは二人を、改めて見る。
「うっ……くっ……ガイ…せんせ……」
リーはガイに必死でしがみつく。大好きでたまらない師匠に。
「リー……」
ガイはリーを固く抱きしめる。大切でたまらない弟子に。
バカらしい。暑苦しい。うっとうしい。今までそんな目でしか見たことがなかったネジは。きっと手術の時にはだれよりもガイについていてもらいたかったであろうリーと。そばにいてやりたかったであろうガイと。二人の気持ちをくみ……妙に認めてしまった。
ひとしきり泣き終わった二人は離れ、ガイはネジの前に立つ。
「ネジ!!!」
ガイはネジに抱き付こうとしたが、ネジのたじろぐ様子にハッとし、手を下ろす。
「ネジ……」
「なんだ……」
ガイの必死で悩み考える様子に、ネジはいぶかしがる。
「オレは、お前が夢之助くんという子供の呪印を必死で解いたことに、猛烈に感動している! だから、師匠としてお前を抱きしめてやりた――」
「断る!」
ネジはキッパリと答えた。
「やはりネジは難しい……」
「何か言ったか?」
背を向けボソッと小さくつぶやくガイを、ネジは睨む。
「いや……ネジにはネジに合った接し方がきっとあるはずだ……。考えろオレ……考えつかなかったら腕立て伏せ五万回……」
ガイはブツブツ言いながら苦悩する。
「待て……。テンテンだって良くやった。よし。先にテンテンを褒めてやろう」
ガイは振り向き、いきなりテンテンを抱きしめる。
「テンテン! 良くやっ――」
「きゃあああー!!!」
ガイは吹っ飛ばされ、さらに武器攻撃の嵐を食らう。
「しまった! テンテンはお年頃の女の子だった!!」
ガイはまたも背を向け頭を抱える。
「す、済まん。テンテン……」
「もーっ! 言葉だけでも伝わるでしょ!」
ガイの背に、テンテンはぴしゃりと言う。
「まぁ……テンテンは女の子だから仕方ないが……熱いスキンシップには言葉では伝えられない愛が……!」
ガイはもどかしそうに髪をかき乱す。
「……ネジよ。どうしてもオレの熱い抱擁はイヤか?」
「イヤだな」
にべもなく断るネジ。ガイはしばらく髪をくしゃくしゃしていたが、やがて立ち上がり、再びネジの前に立つ。
「……せめて握手はどうだ」
ガイは手を差し伸べる。
「イヤです!」
ガンとしてはねのけるネジ。
「……」
ガイは、今度は手を下ろさず、じっとネジを見つめる。
「……」
ネジは、ガイを不機嫌そうに見上げる。
「……」
ガイは意地でも手を下ろさない。ネジから目をそらさない。
「……」
ネジは、仕方なさそうにガイの手を握る。ネジの表情が、かすかに変わった。
ガイの手は、思った以上に熱かった。大きかった。頼もしかった。
「本当に……よくやったな。ネジ……」
「別にいちいちアンタに褒めてもらわずとも――」
「辛かっただろう?」
ネジは目を見開く。
「夢之助くんの呪印を解くとき……お前の呪印が一生つきまとうものだと思い知らされて……辛かっただろう……?」
ガイは、泣いていた。ネジの手をぎゅっとにぎるその手が、震えていた。ふいに思い出す。前にガイが言った。宗家とのことでもめるなと。ガイいわく『熱い約束』をさせられたネジは、うんざりしていた。うんざりしていたが、本当は心のどこかで分かっていた。宗家ともめ呪印で苦しめられることを心配してくれていた、師の気持ちを。
「ネジ」
リーは、ネジの空いている方の手をにぎった。
「ネジ……」
テンテンは、ネジの左肩にそっと手を沿えた。
二人とも、泣きながら……。
「フッ……」
ネジは顔を歪ませて笑い――歪ませて……うつむいて……。
「……お前らと青春ごっこをするのは、最初で最後だ……」
そう言って、涙をこぼしたネジ。
人を思いやり、優しい心を持つのは難しい。それでもこの班の皆と一緒なら、ほんの少しずつそれが出来るようになるかもしれないと思ったネジ。
ガイが大好きで大切で、それは絶対に間違っていない。けれどそのために気付かなかった、同じだけ大切なネジとテンテンを、これからはきっと大事にしようと決めたリー。
この三人の男のことを、誰よりも理解している自信はある。けれど大きすぎる三人に何も出来ないと思っていたのは間違いで、苦しんでいる仲間の肩に手を置くことは出来るのだと気付いたテンテン。
三者三様に、チームメイトがこの者たちでよかったと思い。
一人も欠けてはならないのだと思い。
そうして胸を痛める。
サスケを失ってしまった、第七班――
ナルト『次回は……サクラちゃん、カカシ先生も心配してるってば……』
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