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カテゴリ:感想
赤字経営に悩むダイビングクラブ「MDC」。経営母体から出された存続条件は、「オリンピックに出場する」こと。オリンピックなんて想像できないような選手がほとんどのMDCだったが、新たにやってきた女性コーチ夏陽子は何かを変えようとしていた。
先日、『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞を受賞された森絵都さんの人気作『DIVE!!』。1巻の『DIVE!! 1 前宙返り3回半抱え型』で第52回小学館児童出版文化賞を受賞しています。今回は単行本時に4巻組だったものを『Dive!!(上)』『Dive!!(下)』にまとめて文庫化。 熱く、爽やかなスポ根ものなのですが、飛び込みの躍動感やストーリーよりも何よりも、登場人物たちが一番魅力的です。特に知季、要一、飛沫の3人はそれぞれの置かれた環境、人間関係などが細かく書き込まれ、それが人物造形に生かされています。例えば、要一と父の敬介、飛沫と祖父の白波、そして知季と弟の弘也。そういった関係がうまく取り込まれ、それぞれのキャラクターをいきいきとしたものにしています。 また、この飛び込みというストイックな競技を通して、彼らの青春が巧みに語られています。ただひたすら、水に向かって飛び込んでいくことにかける青春。飛び込み続けること、オリンピックを目指すこと、そして大人の考えに悩み続ける青春。ただし、どんなに悩み迷っても暗い物語ではありません。楽しくカラッと爽やかな青春物語です。 時間さえあれば一気読み必至の青春スポ根小説。ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。シドニーを目指した彼らが今度は北京を目指し、コンクリートドラゴンに上ることはあるのでしょうか。 余談ですが、登場人物の名前を見て、主人公は飛沫だと思ってしまいました。名前の中にさんずいが3つも入るんですから。沖津飛沫って。 2006年7月21日読了 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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