らくがんの休日

２００６年５月　双葉文庫より

湯瀬直之進の妻・千勢は、密かに思いを寄せていた藤村円四郎を殺した
倉田佐之助を追って駿州沼里を出奔した。
江戸で暮らす千勢を探し当てた直之進は、小日向東古川町の口入屋・米田屋に
出入りするかたわら、事件の背景にある藩内騒動の真相を掴もうとする。
折しも沼里城主・誠興が危篤に陥り、事態は大きく動き出すことに・・・。
好評書き下ろし長編時代小説、シリーズ第四弾。
（裏表紙 紹介文より）

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以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。


いろいろな謎が一気に解明される巻。

又太郎の正体が判明。
直之進の仕える沼里城主・誠興の嫡男でした。
誠興も又太郎も江戸屋敷にいて、誠興は病床にあって危篤。
そういえば、又太郎が登場時に父親の命がもう長くないことを憂いてたっけ。
この時代にずいぶん甘えっ子だなと思ってたけど、跡を継いで城主となり
今の自由な生き方ができなくなることを考えてたんだな。
お金に不自由していないのも道理。

直之進に刺客を差し向けていたのは、沼里にいる中老・宮田彦兵衛でした。
佐之助が夏井与兵衛・古田左近・藤村円四郎の３人を殺したのも、宮田の指図。
末席家老の夏井が宮田派から渡辺派（これも家老）へ寝返ろうとしたので、
口封じのために殺させたのです。
渡辺はこれに怖れをなし、また宮田から金を渡されたこともあり、
勢力争いから退きます。
そして、この暗殺を筆頭家老の大橋民部がやらせたと噂を流し、
沼里での実権を得たのです。

直之進は親の代から宮田の汚れ仕事（暗殺や脅迫など）を引き受けていました。
宮田は賄賂をもらって一部の商人などを肥えさせ、その利益を得るなど悪行が目立ち、
ある日、反感を持つ一団の襲撃を受けました。
護衛していた直之進は一団と戦い、２人を斬り殺してしまう。
しかし、そのうちの１人は実の弟だったのです。
弟を自らの手で斬り殺してしまったショックで、刀が持てなくなった直之進。
妻を探しに江戸へ行きたいと申し出ます。
腑抜けの役立たずは口封じに始末しよう、それには沼里より離れた江戸の方がいいと
宮田は江戸行きを許可し、刺客を差し向けたのです。

宮田の娘は誠興の側室で、元服した息子もいます。
正室は江戸にいるので、国元ではほぼ正室のような扱いを受けているらしい。
そして宮田は城主の跡を孫に継がせたいと、又太郎の暗殺を決意。

又太郎は４人の侍に襲われます。
幸い琢之介が一緒にいたので、又太郎は何とか逃げ伸びることができました。
行方不明になった又太郎を捜して、琢之介と直之進が保護。
ここで又太郎の身分が明かされ、琢之介はびっくり、直之進は平伏。
直之進は主筋である又太郎を護衛して、取り敢えず米田屋へ避難することに。

宮田は暗殺に失敗したことを知り、佐之助に又太郎の暗殺を依頼します。
直之進が富士太郎と共に犬塚屋へ行っている間に、佐之助が米田屋へやってきます。
ドキドキした～。
琢之介がなんとか防いでいるうちに、直之進が間に合って佐之助は撤退。
又太郎は無事でした。

又太郎は江戸屋敷へ来ていた大橋民部を米田屋へ呼び寄せ、宮田の悪事を全て
明らかにします。
これで宮田一派は掴まって一件落着。

そして、佐之助は本格的に千勢を好きになりました。
自分はプロの殺し屋ではないから、依頼者（宮田達）が死んだ後まで
又太郎殺しを完遂するつもりもない。
前金などで金もたくさんあるし、どこか知らない場所で商売でもして
新たな生き方をしてもいいかも。
でも、その時には一人ではつまらない、と千勢の顔を思い描いたりしてかなり本気。
そんな佐之助に直之進は嫉妬めらめら。(笑)
でも何で？
これ、絶対愛情じゃないと思うんだけど。
そもそも江戸へ出てきた時点で、妻とやり直したいというよりは
なぜ何も言わずに妻がいなくなったのか知りたいだけ、と言っていた。
妻との結婚生活は１年。
その１年の間、自分は自分で、宮田の汚れ仕事を引き受ける裏稼業を妻に隠していて
心から打ち解けていなかったし、千勢は千勢で他に好きな男を作っていた。
お互い愛情ないじゃん。
今だって、米田屋の商売を手伝う生活に充足感を感じていて、双子姉妹を抱きたいと
思うこともあるし、このままどちらかの婿になって米田屋の跡を継いでもいいとか
思っているわけですよ。
ただ単に美人の元妻に対する所有欲？
こういう所を見るたびに、直之進のポイントが下がっていく感じ。

そして佐之助と直之進は決着を付けることに。
人気のない原っぱで一対一で戦います。
今までの様子から、佐之助の方が強いんだろうと思っていましたが、
直之進が粘りを見せて長期戦になったら、最後は直之進が優勢で
佐之助が逃走して終わりました。
敏捷さや気配を消したりの技術では佐之助が勝るけど、純粋に剣の腕では直之進が
勝っていたってこと？
ちょっと意外でした。

そして負けた佐之助は悔しさに泣きながら走り去ったのには笑った。
泣くんかい。(笑)
そして千勢の家に行き、「町方を呼ぶなら呼べ。直之進を呼んでもいいぞ」と言って
倒れて気を失ったところで終わりです。
いや、絶対誰も呼ばないよね。
そっと介抱するに決まってる。
千勢ってこの時代の女性にしては、自由に生きてるよね。
結婚後１年も経たずに浮気して出奔、それから２～３ヶ月でもう心変わり。
まあ、直之進とは家同士が決めた結婚だし、藤村円四郎は優しくされて
舞い上がっただけ、佐之助こそが初めての恋と言えなくもないのかもしれなけど。

さて、沼里絡みの大きな陰謀は落着。
今後、この昼メロみたいな三角関係はどこへ行く？