らくがんの休日

２００７年０７月　双葉文庫より

中西道場一門の無念を思うと湯瀬直之進の胸は張り裂けんばかりに痛んだ。
道場主。悦之進以下６名の主従は中西家を取り潰しに追い込んだ者を探索する途中、
殺し屋・土崎周蔵の手に掛かり、返り討ちにされたのだ。
みすみす周蔵を逃がしてしまった直之進は線香を手向けながら、
改めて６人の御霊に復讐を誓うのだった。
好評書き下ろし長編時代小説、シリーズ第８弾。
（裏表紙 紹介文より）

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以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。



中西悦之進と元家臣５人が全員土崎周蔵に殺されてしまい、
関係者達は仇討ちの思いを強くして、周蔵を探しに精を出します。

周蔵が殺人現場に選んだのは呉服屋の玉島屋の別邸で、玉島屋儀太郎の先代である
和右衛門が道楽で建てたもの。
今は空き屋となって使われていなかったのですが、空き屋であることを
周蔵がどうやって知ったのか？
和右衛門の交友関係の中に周蔵がいたのでは？という推理の元に、
富士太郎と珠吉は和右衛門の妾の線から調査を開始。
妾の家で、妾の旦那である緒加屋増左右衛門という金貸しに出会います。
ここで富士太郎は、根拠はないが直感で緒加屋に不審なものを覚える。
更に盆栽仲間を当たり、周蔵と一緒に逃げた船頭が与之助という名である事を知ります。


直之進と和四郎は、周蔵が逃げたときに川を船で逃れていったので、
その船を操っていた船頭をたどろうと船宿を調べていきます。
富士太郎から与之助という名を聞き、札差の的場屋登兵衛が調査してくれて
以前勤めていたという料亭がわかりましたが、既に辞めていてその先の消息は不明。


琢之介と弥五郎は玉島屋別邸の庭にあった貴船石という希少な庭石を調べます。
弥五郎は悦之進の道場の門人で、師範代である琢之介に迫る勢いで上達している石工。
かつて家が火事になった時に、琢之介＆又太郎に子供の命を救われています。
弥五郎が意外と探索に向いていて、琢之介は驚くんですが、
父親が岡っ引きだったらしい。
でも弥五郎は岡っ引きを継ぐ気はなく、父親が死んだ時に今の石工の親方に拾ってもらい
石工になったとのこと。
なるほど、これは珠吉がもう歳で後継者が必要ってずっと言ってたから
弥五郎がそっちへ行くっていうフリね。
と、思っていたら。
琢之介が道場の用事があって弥五郎が一人で探索に行っていた時、
弥五郎は志摩屋という運送屋が玉島屋別邸に石を運んだ事を突き止め、
志摩屋に話を聞きに行きます。
その後、周蔵に殺されてしまったのです。
えーっ!? 珠吉の後を継ぐんじゃなかったの!?
弥五郎が死ぬとは思ってなかったのでビックリでした。

死ぬと言えば、悦之進の妻・秋穂も自害をしてしまいました。
悦之進とはおしどり夫婦だったので、後を追ったと見られていましたが、
後に、実は周蔵に手込めにされそうになって貞節を守るために自殺したと判明。
それにしてもこの作者、簡単に惜しげもなく登場人物が殺していくなあ。


佐之助は再び、かつて晴奈をナンパしてきた周蔵を含む３人組の不良侍の１人に
話を聞きにいきました。
ここで、ある料亭で周蔵が商人風の男と一緒にいたのを見かけたと情報を得る。
その料亭へ行き、その商人が志摩屋であることを突き止めます。
夜中に忍び込み、志摩屋の主人・鑑蔵を締め上げて、周蔵の居場所を聞き出しますが、
佐之助の隙をついて、鑑蔵は舌を噛んで自殺。

佐之助は直之進を訪れ、周蔵の居場所を教えます。
直之進は登兵衛の屋敷にいるんだけど、呼び出すにあたって佐之助が取った手段が
屋敷の外で殺気を振りまく、というのがちょっとおかしかった。
ちゃんと直之進も来るし。

直之進は和四郎と共に周蔵の隠れ家へ向かいます。
周蔵は口封じのために与之助を刺し、直之進と戦う。
秘剣を持っているため、直之進は押され気味でピンチだったんですが、
最後の瞬間に与之助が周蔵の足を掴んで、これにより逆転勝利。

ようやく周蔵は倒せましたが、まだ島岡真之丞が残っている。
話はまだまだ続きます。