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2021.03.29
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梦回 dreaming back to the qing dynasty
第29話「梅の花のように」

七香(シチキョウ)はここ数日、胸騒ぎがして食欲がなく、夜も眠れなかった。
そんなある日、掃除中にうっかり花瓶を落とし、破片を拾おうとして手を切ってしまう。
ちょうど通りかかった茗薇(メイビ)は驚いて傷の手当てをしたが、手際の良い七香にしては変だと気づいた。
すると七香は嫌な予感がすると訴え、兄の身に何かあったのではないかと気が気でない。
「もうすぐ約束の日なのに便りがないなんて…
 心配でなりません、十三爺から何か聞いていませんか?」
「聞いていないわ」
茗薇は七香に心配かけまいと嘘をつき、ずっとこの屋敷にいてはどうかと提案した。
しかし七香は唯一の肉親である兄との絆は何ものにも代えられないという。
「兄のいる所こそが私の家です」

七香は幼い頃に両親を失くし、他に身寄りもなく兄と2人で生きて来た。
趙鳳初(チョウホウショ)は兄として父として妹を育て、武術と生き方を教えてくれたという。
…兄さんがお前を守る…
七香は2人だけで暮らした日々を懐かしみ、しみじみ幸せだったと言った。
「私が大人になったら2人で地方へ行き、馬を駆けて何にも縛られずに生きると約束したのです…」
刺客として生きる兄には高い志があり、だからこそ危険な任務でも必ず果たすという。
しかし七香はなぜか今回だけは不安で仕方がないと漏らした。

貝勒(ベイレ)への厳しい拷問が続いた。
しかし貝勒は一向に口を割らず、次第に朝廷では四皇子への非難の声が上がり始める。
十四皇子はそろそろ潮時だと考えたが、茗蕙(メイケイ)は貝勒が釈放されても何の解決にもならないと意見した。
すると十四皇子は口を出さない約束だと釘を刺し、出かけてしまう。

十四皇子は皇帝に謁見した。
すると康熙(コウキ)帝がなぜか胤禛(インシン)を弾劾する奏状ばかりだと訝しむ。
十四皇子は四兄に義憤の声が集まっていると訴え、あの優しい貝勒に残虐な拷問を加えていると非難した。
「ご決断ください、皇阿瑪、皇権の乱用で忠臣を死なせてはなりません」
皇帝は朝廷に広まる不安を鎮めるため、今日中に取調べの結果が出なければ釈放を命じると言った。
しかしその夜、収監されていた貝勒の元に新しい衣装が届く。
「老四…罪のない命を奪うとは…世は何と不公平なのか…貴様の負けだ」
貝勒は長い水袖を見てその意味を悟り、濡れ衣を着せられた恨みをひとしきり歌い上げて首を吊ってしまう。
その頃、茗蕙はひとり涼亭で琴を奏でていた。

翌朝、貝勒の突然の自害で朝廷は紛糾した。
皇帝も四皇子を弾劾する声を無視できなくなり、すぐ胤禛を呼ぶよう命じる。
一方、茗薇は南山へ向かったまま一晩中、戻らなかった十三皇子を心配していた。
すると慌ただしく出かけようとしている順児(ジュンジ)を見つける。
「待って!胤祥(インショウ)はどこ?」
「あ、お伝えするのを忘れていました!」
順児の話では昨夜、貝勒が獄中で自害し、十三皇子は宮中に駆けつけたという。
福晋に事情を伝え、着替えを持って来るよう命じられたのだ。
何でも皇子たちと百官は四皇子が貝勒に白綾を賜ったと怒り心頭で宮中は大騒ぎだという。
驚いた茗薇は貝勒の死で均衡が崩れ、趙鳳初の身が危険だと焦った。

七香は今朝から姿が見えなかった。
茗薇は兄妹の約束の日だと思い出し、待ち合わせ場所の山荘へ向かう。
すると雨の中、七香が花の器を持って立っていた。
茗薇は大雨なので帰ろうと声をかけ、趙鳳初は用事があるので遅れているとごまかす。
しかし七香は意地でも動かず、茗薇は仕方なく真実を明かした。
「来ないの…待たないで」
七香は兄が実は失踪したまま生死も分からないと聞き、愕然となった。

七香は帥府園(スイフエン)に戻ったが、剣を片手にすぐ出かけた。
すると茗薇が追いかけて来る。
「私も行く、心当たりがあるの」
2人は南山に入って趙鳳初を探したが見つからず、結局、夜が明けた。
さすがに七香は本当にここにいるのか疑い始めたが、茗薇は思い当たる場所が南山だけだという。
とにかく探し続けるしかない2人、その時、茗薇がうっかり前日の雨で緩んだ土に足を取られた。
七香は咄嗟に福晋の腕をつかんだが、2人はそのまま抱き合うように山肌を転がり落ちてしまう。

茗薇と七香は谷へ落ちたが、運良くかすり傷で済んだ。
すると茗薇がなぜか梅の花が落ちていると気づく。
「梅の木はないのに…なぜ花が?」
七香はすぐ兄が作った造花だと分かった。
どうやら趙鳳初はこの近くに監禁されているらしい。
その時、茗薇が不自然な山神廟を見つけた。
「山崩れが多い南山でしっかり立っているわ…」
すると古い廟にも関わらず、なぜか新しい札が掛かっている。
茗薇はその札を怪しんで触ってみると、札が動いて岩肌の隠し扉が開いた。



七香は洞窟で兄を発見、見張り番を倒した。
しかし拷問を受けた趙鳳初は深手を負い、切りつけられた目には布が巻かれている。
七香は涙に暮れたが、茗薇は早く逃げようと急かした。

趙鳳初の救出に成功した茗薇と七香、しかし逃げる途中で刺客が現れた。
七香は兄の助太刀もあって刺客を片付けることに成功したが、どうやら新たな追っ手が近づいている。
そこで茗薇は二手に別れて自分がおとりになると決め、刺客たちが残した馬で逃げることにした。

茗薇は途中で七香たちと別れ、追っ手を引きつけて必死に馬を駆けた。
しかし追っ手が放った矢が馬に命中、落馬した茗薇に魔の手が迫る。
すると運良く茗薇たちを探していた十三皇子たちが間に合い、難を逃れた。
「遅れてすまない、怪我は?」
「大丈夫、それより早く七香たちを!」

七香は追っ手をまいて川岸に出た。
安心した七香はひとまず馬を降りて茗薇を待つことにしたが、兄の様子がおかしい。
実は後ろに乗っていた趙鳳初は追っ手が放った矢を背中に受けていた。
すると趙鳳初は激しく喀血し、そのまま倒れてしまう。
驚いた七香は医者を探しに行こうとしたが、趙鳳初は手遅れだと止めた。
そこで履物に隠していた密書を出し、七香に託す。
「お前から十三爺に渡してくれ…いいな?」
趙鳳初は妹との約束を破ったことはなかったが、今回だけは守れそうになかった。
「お前と兄妹として生きられた…最高の人生だった…お前と過ごした日々は本当に楽しかったよ…
 だが…もう…面倒を見てやれぬ…身体を大切にせよ…約束だ…しっかり生きて行くと…」
趙鳳初は最後に童謡が聴きたいと頼んだ。
そこへようやく十三皇子と茗薇も駆けつける。
しかし趙鳳初はかつて幼い頃、背中におぶった妹が歌ってくれた童謡を聴きながら静かに息を引き取っていた。

一方、四皇子は朝議で槍玉に挙げられていた。
皇帝は釈明の機会を与えたが、四皇子は自分が何を言おうと無駄だと開き直る。
今や保身に走る大臣たちと私利を求める弟たちが自らの罪が暴かれるのを恐れ、自分を排除しようと躍起になっていた。
「皇阿瑪、全ての責めは私にあります、どうぞ罰を…」

皇帝は仕方なく四皇子を刑部に収監して厳罰を与えるよう命じたが、そこへ十三皇子が現れた。
「皇阿瑪!お待ちください!」
趙鳳初は密書に金庫の場所を残していた。
十三皇子は貝勒の隠し財産と帳簿を運び入れ、貝勒の罪は揺るぎない事実だったと報告する。
驚いた皇帝は戸部と大理寺で詳しく調べるよう命じたが、その衝撃はあまりに大きかった。
「朕の治世のどこが太平だと言うのだ…」

七香は趙鳳初の墓前に手作りの料理を供えた。
「哥…私をからかっているだけでしょう?私を連れて行くのが面倒で死んだふりしているんだわ…」
なかなか兄の死を受け入れられない七香、すると茗薇がそっと寄り添い、造花の容器を渡す。
容器の中には造花が6つ、本来なら今頃、真ん中に7つ目の梅の花が入るはずだった。
「七香、梅は″強さ″を表す、それが哥の願いだわ、必ずあなたを守ってくれる」
すると七香は梅の花を容器に納め、茗薇の肩を借りて泣いた。
十三皇子もこれから自分たちが七香の家族だとなぐさめ、自分が兄だという。
「哥…約束するわ、私は梅の花のように強く生きて行く…哥の分までしっかり生きてみせるわ」

つづく


( ;∀;)哥哥~
いつも大雑把なのに、なぜ哥哥の死だけ生々しいの?w





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最終更新日  2021.03.29 23:02:15
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