|
风起陇西(ふうきろうせい) 第五計「客を反(カエ)して主(アルジ)と為す」 荀詡(ジュンク)は一足先に天水(テンスイ)を発った。 一方、馬車の事故で死を偽装した陳恭(チンキョウ)と糜冲(ビチュウ)はその夜、天水郡治に滞在する。 郡守・郭剛(カクゴウ)は2人のために送別の宴を開き、偽造した通行証を渡した。 陳恭の身分は商人・陳渭(チンイ)、糜冲の身分は従者・糜衡(ビコウ)だという。 郭剛は2人にわだかまりがあると分かっていたが、今回ばかりは心をひとつにして任務を果たすよう念を押した。 すると和やかな席に突然、梁倹(リョウケン)が現れる。 実は生け捕りにした密偵が急に供述をひるがえし、白帝(ハクテイ)に会ったことがあると白状したというのだ。 「ここに連れて来ています」 郭剛と糜冲は間が悪い梁倹に渋い顔、しかし陳恭が会ってはどうかと言った。 宴席に密偵が連行された。 密偵の話では白帝は郡守の側近だという。 しかし側近はここにいる陳恭と糜冲だけ、すると密偵は陳恭とは会ったこともないと証言した。 「では俺だと?!」 糜冲が呆れて密偵を突き飛ばすと、密偵は隙をついて護衛の剣を奪い取り、糜冲に斬りかかろうとして梁倹に殺されてしまう。 糜冲は再び白帝につながる手がかりを失った。 すると翌朝、見送りに出た郭剛から昨夜は軽率だったと指摘されてしまう。 西蜀の密偵は初めから暗殺目的だったのだろう。 「陳恭を調べるのは構わぬが、だが証拠をつかめ」 そこへ遅れて陳恭が現れた。 郭剛は設計図を奪ったら陳恭は天水に戻り、糜冲は漢中に残って五仙道を編成するよう命じる。 「行ってこい」 その頃、南鄭(ナンテイ)の司聞曹(シブンソウ)に西曹掾(ソウエン)に抜擢された李邈(リバク)がやって来た。 実は驃騎(ヒョウキ)将軍・李厳(リゲン)と面談した際、李邈は北伐の敗因が楊儀(ヨウギ)にあると証言している。 楊儀は北伐で功を焦るあまり現地の密偵に公に活動するよう命じたが、敗北すると正体を知られた密偵は殺され、李邈が隴西(ロウセイ)に敷いた情報網はほぼ壊滅していた。 『元をたどれば全ては楊儀の過ちです』 李厳を出迎えたのは主記室の副司尉・孫令(ソンレイ)だった。 孫令は李邈を居所へ案内し、司聞曹を簡単に説明する。 曹掾・馮膺(フウヨウ)は孫令の姉の夫だが、姉は数年前に亡くなっていた。 陳恭は糜冲が御す荷車に揺られながら、荀詡と別れた朝のことを思い出していた。 『これがお前の通行証だ』 『で、どうやって糜冲に成りすますつもりだ?』 郭剛は陳恭と糜冲の順路を決めていた。 すると渭水(イスイ)を渡って武都(ブト)を東に進み、散関を避けて水路で武興(ブコウ)へ行くとある。 実は冀(キ)州出身の糜冲は泳げなかった。 そこで陳恭は激流の青龍灘(セイリュウタン)で舟を転覆させようと企む。 例え泳ぎが得意でも危険は伴うが、陳恭は空気を詰められる革の衣を準備し、難破した後は糜冲に成り済まして助けを求める計画だ。 郭剛が報告を聞けば陳恭が死んだと思うだろう。 荀詡は見事だと感嘆した。 しかし気がつくと手綱を握る糜冲が勝手に水路ではなく旧道沿いに行くと決め、別の方向に進んでしまう。 「私は泳げぬ、舟が転覆したらお前は助けてくれないだろう?」 ( ತ _ತ)チッ!バレテーラ 一方、帰途についた荀詡は国境付近の山中にいた。 そこで偶然、山賊に襲われた一行を見かけ、かろうじて最後の一人を救う。 荀詡は転んだ女人に駆け寄り手を差し伸べたが、振り返った女人の美しさに思わず目を見張った。 司聞曹では馮膺が李邈を歓迎し、早速、仕事の分担を決めた。 李邈は新参者ゆえ対外は荷が重いと訴え、計画通り対内の担当を任される。 その頃、高堂秉(コウドウヘイ)と陰輯(インシュウ)は新任・李邈の噂をしていた。 陰輯は門外漢の李邈に司聞司や軍謀司を指揮できるはずがないと断言、内勤を担当すると推察する。 「だがそれも困りものだ…内勤の方が厄介だろう?」 「五仙道か?」 「五仙道は張魯(チョウロ)の残党だ、山林に根城を築き、ここ数年、勢力を拡大している」 「なるほど、我々に掃討する力はなく、懐柔する策もない」 「報告によれば五仙道は曹魏と通じているとか、今後は手こずるだろう」 荀詡が助けた美しい女人は柳瑩(リュウエイ)と名乗った。 柳瑩は武都にある玉鳴(ギョクメイ)楽坊の楽師だったが、魏軍が攻め込んでくる前に難民に扮して仲間たちと城外へ脱出したという。 確かに荀詡が通った折、武都は落城間近、恐らく蜀軍はもう撤退しているだろう。 柳瑩は山賊に仲間を殺され、帰る家も失ったと落胆した。 頼れるとすれば漢中の南鄭に住む芸事を教えてくれた師匠しかいない。 師匠の名は紫随煙(シスイエン)、紫煙閣と言えば琴と簫で名高く、荀詡ももちろんその名前を知っていた。 その夜、陳恭と糜冲は山間にある簡素な宿で一夜を過ごすことになった。 あと一日で陽平関に着くだろう。 陳恭は五仙道の黄預(コウヨ)に連絡したのか確認、すると糜冲は心配せずとも知らせたと言って背を向けた。 翌朝、先に起きた陳恭は中庭にいた下働きの小六子(ショウロクシ)に金をつかませ、文を送るよう頼んだ。 すると後から出て来た糜冲が2人の様子を見かける。 そこで糜冲も小六子に金を渡して何を頼まれたのか聞いた。 「文を送れと…」 「どこへ?!」 「天水の金御瑶(キンギョヨウ)です」 しかし文はまだ預かっていないという。 実はその間に陳恭は糜冲と自分の荷物を取り替えていた。 荀詡は柳瑩を無事に南鄭まで送り届けた。 柳瑩は荀詡がただの商人ではないと気づいたが、荀詡は事情があって正体を明かせないという。 しかし柳瑩はそれ以上、追及しなかった。 「ただ何か恩返しができればと思っただけです… これは私が愛用してきた竹笛、記念の品としてお受け取りください」 すると柳瑩はここからは独りで紫煙閣へ向かうと断り、縁があればまた会えると言った。 司聞曹に荀詡が戻って来た。 荀詡の無事な姿に誰もが驚いていたが、どうも様子がおかしい。 その時、高堂秉が現れ、有無を言わさず荀詡を軍謀司に連れて行ってしまう。 聞けば司聞曹では天変地異が起こり、姚柚(ヨウユウ)は罷免され、後任は丞相の元参軍だった李邈に変わっていた。 馮膺と高堂秉は現職に留まれたが減棒、例の事件が関係しているという。 「もはや司聞曹は楊儀には属していない、李厳将軍の直轄だ」 すると高堂秉は戻ったばかりの荀詡に言動には注意するよう警告しておいた。 荀詡は馮膺に任務の完了を報告した。 「武都で高堂秉から状況を聞いた後、13人の精鋭を率いて天水へ 精鋭は小隴山に待機させて1人で城内に入り白帝に会いました」 「…裏切ったのか?」 「分かりません、確かめる任務はなかったはず…」 淡々と話す荀詡に馮膺はどこか困惑しているようだった。 「白帝が語ったのは情報を盗んで送った経緯だけ…谷正(コクセイ)にも会いました 谷正が死んだのは私と会った直後、それゆえ白帝を始末しようと決めました 時期からして白帝が関与しているのは間違いないかと… 谷正の話により己の嘘が暴かれたと思い込んだのでしょう」 荀詡は先月、白帝が間軍司の糜冲と連れ立って小隴山へ巡視へ出かけた時を狙ったと説明した。 帰路の鶏頭(ケイトウ)山一帯は険しい地形、そこで矢を放って馬を驚かせ、馬車は崖から転落したという。 「骸はありません」 しかし馮膺は義弟を殺すのは気が重かっただろうと言った。 荀詡は素直に認め、それでも谷正の家族が捕まるのを見て決心したという。 しかも荀詡たちの動きに気づいた曹魏が兵を動員して山を捜索し、金(キン)隊長と配下たちは荀詡を逃して戦死していた。 すると馮膺はついに納得し、黙って解毒薬を差し出す。 「感謝します」 つづく キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!! お久しぶりのアンジェラベイビー、美貌は健在ですな ←おっさんかw そう言えば精鋭は10人じゃなかったのか? 金隊長もてっきり偽名だとおもったけど本名?いやコードネームなのか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.10.09 13:54:16
コメント(0) | コメントを書く
[風起隴西-SPY of Three Kingdoms-全24話] カテゴリの最新記事
|