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驭鲛记之与君初相识 The Blue Whisper 第20話 順徳仙姫(ジュントクセンキ)・汝菱(ジョリョウ)は北淵を奪還すると息巻いて従棘所(ジュウキョクショ)をあとにした。 紀雲禾(ジーユンファ)は仙師・寧清(ネイセイ)がなぜこれほど順徳を溺愛するのか分からなかったが、寧清は″顔″だという。 「つまり密室の絵は仙姫ではないのですね?…恋人?この天下の乱はその方が原因ですか?」 「お前は知り過ぎたようだ、ともかく汝菱に手は出せぬとだけ言っておこう この世において彼女のあらゆるものを守ってやりたい、奪おうとする者は誰であろうと許さぬ」 「顔が似ているだけなのに?」 「そうだ…もうひとつ警告しておこう」 寧清は雲禾が隠魂針(インコンシン)で霊力を御せるようになったと気づいていた。 しかし双脈を無理に鍛えて天地の法則に反すれば反噬(ハンゼイ)から逃れられないという。 「どれだけ得てもその分を失う、公平とは言え往々にして残酷だ」 北淵に遣わした万花谷(バンカコク)の弟子たちが拘束された。 林昊青(リンコウセイ)は寒霜(カンソウ)の発作が起きる前に救い出したいが、慎重を期さねばならない。 一方、天君・汝鈞(ジョキン)は閬風巓(ロウフウテン)で悶々としながら菩提樹を見ていた。 両親を失ってから日夜、自分の世話をしてくれた姉、当時の汝菱の心は慈愛に満ちていたが、なぜこんなことになったのか。 その時、汝鈞は仙師しか眼中にない姉の口から″紀雲禾″という名が出たことを思い出した。 従棘所に突然、天君が現れた。 天君は仙師が姉以外の誰かを守ったのは初めてたと驚き、その理由を知りたいという。 しかし雲禾も分からないと苦笑い、この身体が原因だと答えた。 「ただ仙師の弱みを握りたいならお門違いかと…」 汝鈞は憶測など無礼だと憤慨したが、ふと紀雲禾が鮫族世子を救って捕らわれたことを思い出した。 「世子は別の伴侶を選んだそうだな?もしやり直せたらまた世子を救うか?」 「また救います、彼は私の初心ですから…以前、彼にこう言われたのです ″己の心に従い、結果は自ら背負う″と…」 雲禾は天君が解決策を探りに来たのだろうと指摘、図星だった汝鈞は怒って帰ってしまう。 一方、北淵では狐王・卿玄(ケイゲン)が御霊師たちの処遇について意見を聞いていた。 すると兵士が駆けつけ、御霊師が倒れて身体中が霜で覆われているという。 長意(チャンイー)と空明(コウメイ)は無妄窟(ムボウクツ)の冷気が寒霜の発作を誘発したのだと気づいた。 そこで空明は自分が作った薬を飲ませ、症状を和らげてやる。 長意は尾を切った時、雲禾に解毒薬を飲ませたことを思い出し、なぜ空明が薬を持っているのか訝しんだ。 「これは解毒薬ではない、私が作った毒を緩和するものだ」 長意はようやく寒霜を作ったのが林滄瀾(リンソウラン)ではなく仙師だと知った。 しかも万花谷に霜花(ソウカ)を届けていたのは空明だったという。 実は空明は寧清の一番弟子だった。 当時、万花谷に新たな御霊師が入ると霜花を届ける役割を担っていたという。 空明が仙師に対抗するのは正義のためだけではなく、寒霜で失われた命への償いのためでもあった。 汝菱が出征した。 汝鈞は雲禾から″己の心に従うべき″と聞いて迷いが吹っ切れ、戦を阻止すべく再び雲禾を訪ねる。 「決断が遅れて大勢を見殺しにしてしまった…」 しかし雲禾はまだ遅くないと励まし、天君に全力で協力すると決めた。 「その前に言っておくことが…寒霜をご存知ですか?」 その夜、長意と空明は珍しく酒を飲んだ。 2人は心に傷を持つ同士、知己だと認め合ったが、空明は寒霜であまたの命を奪った自分の方が悲惨だという。 しかし長意は空明の責任ではなく、仙師が寒霜を操り、謀略や野望を抱いたせいだとなだめた。 「私の知る空明は強くて果敢、勇敢に舵取りができる」 長意は今の北淵があるのは空明の功績だと励まし、必ず裏切りの代償を払わせてやると奮起した。 汝鈞は仙師が寒霜で万花谷を支配していると知り驚愕した。 しかし解毒薬を持っているのが仙師だけのため怒らせれば2度ともらえないという。 雲禾はこの従棘所もどこかおかしいと訴えた。 最近、仙姫が自分に恨みをもつ罪仙を連れて来たが、なぜか彼らの霊力が消滅していたという。 実は汝鈞も近年、ここに収監された囚人が相次いで塵と化したと聞いていた。 「恐らく仙師が霊力を移しているのではないかと…」 雲禾は順徳に良く似た肖像画に霊力が流れ込んでいたのを思い出した。 詳細は分からないが秘術か禁術の類かもしれない。 「仙師の狙いは乱です、近頃、頻繁に争いを煽る仙姫を仙師は見ているだけ 仙姫に殺し合いや紛争を起こさせ、無限の殺戮を企んでいるようです これぞまさに″天下のための弔い″、私も手駒の1人かもしれません」 そこで雲禾は自分の仙侍・洛錦桑(ルオジンサン)を見つけ出し、楽游山(ラクユウザン)の青羽鸞鳥(セイウランチョウ)へ使いに出すよう頼んだ。 仙師を牽制させ、罠を仕掛けるという。 「はお、そなたを信じよう」 汝鈞は林昊青に捕らわれていた洛洛を幻境に呼び出した。 「天庭の主?またまた~それにしちゃ小さ過ぎない?( ̄▽ ̄;)」 「紀雲禾からの伝言だ、順徳仙姫が出征した、楽游山の青羽鸞鳥に仙師を牽制させよ」 「雲禾は元気?」 「かろうじて生きておる、だから急げ」 すると汝鈞は昊青の結界から洛洛を解放し、楽游山へ飛ばした。 その頃、空明も仙師府へ攻め込むなら青羽鸞鳥の力を借りるよう提案していた。 青羽鸞鳥が十方陣から出たとは初耳、狐王は鸞鳥の力があれば鬼に金棒だと喜ぶ。 すると長意は付霊と寧若初(ネイジャクショ)が消散する時、″楽游山″と言ったことを思い出した。 洛洛が結界に触れることもなく逃げ出した。 林昊青と思語(シギョ)は驚き、何か見えない力が働いたと怪しむ。 一方、長意は強がっていながらも雲禾の無事を祈っていた。 …紀雲禾、君の命は私のものだ、復讐してやるから死なずにいろ… 楽游山では離殊(リシュ)が療養する雪三月(セツサンゲツ)を密かに見守っていた。 しかしその夜、ついに三月に見つかってしまう。 「君が怖かったんだ…確かに君を利用したが、俺の心は君に奪われていた 会って説明したかったけど怖くなったんだ 真心を尽くしても信じてもらえなければ今度こそ完全に君を失う だったら見てるだけでいい、できるだけ長く…」 「偽善者ぶらないで、2度と信じるものですか」 三月は復讐のため剣を招喚したが、結局、剣先を軽く刺しただけだった。 「三月!許してくれるのか?!」 「私が好きだったのは穹陵峰(キュウリョウホウ)で助けてくれた山猫の英雄、万花谷で守ってくれた仙侍 狡猾な山猫世子ではない」 そこで離殊は霊丹を差し出して仙侍に戻ると言ったが、三月は受け取らなかった。 「…私の山猫は十方陣の中で死んだ」 すると三月は逃げるように洞窟へ戻ってしまう。 離殊は雪三月に拒否され、傷心の日々を送っていた。 そんなある日、十方陣が破れたと聞いて世子を探し回っていた大歓(タイカン)・小歓(ショウカン)が現れる。 離殊は兄弟のような侍従との再会を喜んだが、崇吾山(シュウゴサン)に帰りたくないと拒んだ。 「女子との縁が切れたくらいで~」 「見てたのか?!」 実は崇吾山には世子が御霊師に惑わされ、こき使われていると報告が来ていたという。 「世子~帰りましょうよ~」 そこで離殊はちょうど食料を集めて戻って来た三月を呼び止め、崇吾山に帰ると伝えた。 「君が帰るなと言うなら、これからもそばにいる」 しかし三月は冷たく突き放し、行ってしまう。 雪三月は洞窟に戻った。 すると部屋は綺麗に整頓され、机にはいつも離殊が準備してくれた汁物が置いてある。 三月は思わず洞窟を飛び出したが、すでに離殊の姿はなかった。 そこへ青姫が現れる。 「離殊はあまり本音を話さない、言ったことではなくてやったことを見てあげて 誰があなたの寒気を吸ってくれたか考えたことある? 誰が万花谷の追っ手を阻み、日夜、世話してくれたと? …あの子はね、霊力を消耗し、気を損ね、ようやく人像を取り戻した 相当、苦しんだはずなのに弱音は吐かなかったわ」 青姫は離殊が必要ないならさっさと別れろと言い放った。 離殊は結局、大歓と小歓と一緒に山を降りることにした。 しかし雪三月のことがあきらめられず、休みたいと言っては時間稼ぎしている。 その時、偶然にも青姫を訪ねて空明がやって来た。 離殊は御霊師だと気づき、三月を捕らえに来たのだと誤解する。 「楽游山へ行くなら俺を倒してからだ」 「殺したくない、どいてくれ」 「嫌だと言ったら?」 「容赦せぬ!」 2人は真っ向勝負となったが、そこへ三月が現れた。 三月の長い髪から垣間見える霜花、空明は御霊師だと気づき目を丸くする。 つづく ( ゚ェ゚)唯一、素直だった鮫人までこの有様よ… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.04.18 23:59:02
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