フライブルク日記

前回の日記について、次のようなコメントをメールでいただきました。
私も同感するところが多いので、ご当人の同意を得て、以下に公表させていただきます。

日本での話ですが、最近トヨタが次のようなCMを流しています。
プリウスというハイブリッド車のCMです。

「白熱灯、まだ使えるけど、省エネ電球に換えちゃおう」
（他にもいくつか同じような話が出てきて）
「自動車も、まだ乗れるけど、環境やガソリン代のためにプリウスに買い換えち
ゃおう」

このCMを初めてみたとき、無性に腹が立ちました。

白熱灯の話は、まあ良いとしましょう。
消費エネルギーが5倍以上違い、電球の寿命も6倍の違いがあります。
白熱灯の電球は製造コスト（エネルギー的にも経済的にも）が低いですから、す
ぐに交換したほうが環境にも経済にも優しいかもしれません。

しかし電球を換える話と車を換える話を同列に語ることはできません。
新たに新車を買うことが決まっている場合、プリウスを選ぶのは良い選択かもし
れませんが、必要も無いのに乗り換えるのはむしろあらゆる意味でマイナスでは
ないかと思うのです。

いくらプリウスの燃費が良いと言っても、データ上で2～3倍、町中での実質燃費
では1～2倍程度の違いです。1リッターくらいの小型車とほとんど変わりません。
一方、自動車を一台作るのに必要なエネルギーをガソリンに換算すると、一般的
な車で5万キロ走れるそうです（一般的な車ってなんだ、ってつっこみどころが
ありますが）。
燃費が2倍良いとして、環境コストで釣り合いがとれるのは10万キロ運転した時
です。
今乗っている車がリッター10キロ走るとして、プリウスの値段で14万キロくらい
走れるガソリンが買えます。今の車を100万で売ったって、経済コストで釣り合
いがとれるのは17万キロも運転したときです。

そう、とんでもなく頻繁に車を運転する必要が無い限り、環境的にも経済的にも
買い換えのメリットは無いのです。

僕は別にプリウスが悪いとは思っていません。
そういう技術を作っていくのは正しい事だと思うし、
良い悪いとは別に面白いし。
どうせ新車に買い換えるならプリウスはグッドチョイスですよ。

でも「環境のため」と声だかに叫ぶなら、買い換えない方が正しいんです。
「お金を節約するため」と叫ぶにしても、買い換えないのが正解です。

もっと言うなら、それが燃費の悪いアメ車なんかであっても、中古で買うならば
新たに製造にかかる環境コストはゼロですから、たいして距離を乗らないならば、
プリウスよりも「環境」にやさしい訳ですし、安い中古車なら「お財布」にも優
しい。
わけわかんないデカイ車にのっている人が、意外とプリウスに乗っている人より
も環境に優しいのかもしれない、ってことですよ。

だから、そのCMは偽善的、というかた「偽」のにおいがプンプンとして腹が立つ
のです。
そして、そんなCMを見て「なるほど、環境のためだ」とか言って実行しちゃう人
や「ガソリンが高いから、お金を節約しよう」とか言って買い換えちゃう残念な
人にもがっかりなわけです。トヨタ以外、だれのためにもなってないって。どう
しても買い換えたくなるまで今の車に乗ろうよ。


日本でも原油高騰による経済インセンティブ・ライクな効果はあって、車が減っ
ています。（都内のパーキングから庶民の車が減り、ベンツばっかりになったと
いう噂。金持ちは原油高を気にしないから）

しかし、同時によく考えないせいで、おかしな行動に走る人々も多いのですよ。
ガソリンが高くなって、車用の省エネグッズがよく売れるようになったそうです。
「取り付けるだけで燃費が10%アップ！」なんてしろものです。
試してみると、ほとんど効果がないか、あっても1%とからしいのですが、値段は
1万円くらいするものがざらです。
1%なんて、アクセルのふみ具合での簡単に変わるので、グッズの効果は解りよう
もないのですが、ま、1％の効果といったら、ガソリンを満タンにして60円くら
い。166回の給油でようやく元が取れます。リッター10キロとして7万5千キロ走
ってようやくです。
でも、そんなグッズががんがん売れる。
みんな、もっと良く考えようよ。何が得で何が損なのか。


せっかくのガソリン高も、受け手が頭を使わないと、意味無い所へ向かっちゃう
な、という話でした。
世の中、おめでたい消費者が多いんだなぁ。
「ガソリンが高くてつらい」なんて言いながらも、真剣にお金を計算するほどに
せっぱ詰まってないってことかね。

あ、外に発表するつもりのない文章なんで、データの確認とかはとってません。
適当なデータも混じっているかもしれません。