テーマ:エコライフの工夫♪(808)
カテゴリ:エコライフ
発電規模では世界一となった、ドイツの太陽光発電。
ふつうの電気代よりもずっと高く電力供給企業に買い取ってもらえるので(法律で定められている)、個人の家でもさかんになりました。 中でも日照時間が長いフライブルクは、太陽光発電がさかんです。 そのフライブルクでも、設置された太陽電池が盗まれることもよくあるそうです。 でも、今回、運転がはじまった、広さ800平米の太陽電池は、絶対に盗まれそうもないところにあります。 それは、ケ・イ・ム・ショ! 市内のどこよりも監視がきついところです。 フライブルクの刑務所の建物は1878年に建てられたレンガづくりの歴史的建造物で文化財保護に指定されています。 中央から星型というか、ヒトデのように五つの棟が放射状に出ている建物。 この棟の二つと、同じ敷地内にある、木工作業所の大きな屋根に取り付けられ、 一年に9万4千キロワット時、30世帯家族分の発電をするそうです。 ここをクリックしてくだされば、ビデオが見られますよ。 実は、わたくし、この刑務所に入ったことがあります。 っていっても、ここは男性用ですから、いちおうまだ女性のわたくしは、住んだわけではありません。 十一年前にある環境研究所の人に、「フライブルク刑務所のゴミ減らし・資源活用の取り組みはすばらしいですよ」と教えてもらいました。 さっそく、これをネタに記事を書こうと、取材を申し込むと、「いいですよ」と快く応じていただいたのです。 当日はやっぱりちょっと緊張しましたね。「ふたたび出てこられるだろうか」という心配もちらっと頭をよぎりました。 入り口でパスポートを提示すると、「預からせてもらいます」と取られてしまい、ますます心配に。 ここには、500人あまりの男性が収容されています。ただし、殺人犯のような重罪犯はいません。 所内には学校、各種作業所、診療所、食堂などがあって、小さな村のようです。 でも、ゴミの面では、ふつうの村とはちがった問題があります。 例えば、逃亡防止のために、タオルは布ではなくて、使い捨ての紙タオルなので、ゴミの元になるし、残飯も大量に出ます。 私は物品管理担当と廃棄物・技術担当の職員の方に案内されて。房の並ぶ棟の一つに入りました。 廊下では、ちょうど授業や作業を終えた囚人たちがおしゃべりをしたり、ブラブラ歩いていました。職員は囚人にも「ハロー」と気さくに声をかけ、囚人も「ハロー」と答えるので、誰が職員で誰が囚人なのか、区別がつきませんでした。 独房の一つに入らせていただきました。ちょうど住人がいなかったのです。 ベッドや洋服ダンス、小さな流しなどがあって、なんだかアパートみたい。 流しの下には、ゴミ用の小さなバケツが二つ、色分けされてありました。一つは残飯用、もう一つは資源用。一日に二回、ゴミを廊下の端にある、中間収集場所にもっていって空けます。 中間収集所には六種類の大型容器がならんでいました。 紙類、包装材(プラスチックや缶)、ガラスビン、パンの残り、その他の残飯に分けて捨てるのです。乾電池用の容器も別にありました。 収集所には当番の囚人が立って、分別がちゃんとされるように注意するそうです。 この中間収集所のゴミ容器が、さらに大きなコンテナに種類別に空けられて、それがゴミ事業所によてって回収されるのです。 まあ、ここまではフライブルクの一般家庭とあまりかわらないんですが、この刑務所では、むかしから物を無駄にしないで、再利用する伝統があり、規則で定められている以上のゴミ減らしを実行してきたのだそうです。 大量に購入される食料品や消耗品の包装容器(バケツ、タンク、ボール箱)は房や事務室のゴミ容器として、または掃除用バケツとして使われ、ボール箱は、縫製作業所や製本作業所でできた製品の納入用の梱包にも使われます。 縫製作業で出る布くずは製本作業所のぞうきんになります。 かびの生えていないパンは、職員が買って、ウサギの餌に。 木工所ででる木くずは、燃料用に職員が買います。 電気工作業所ででるコードの切れ端は、市民がひきとって、銅を取り出します。 節約にも努力 電池は充電式にかえられました。 洗濯機は節水タイプ、手洗い用の液体せっけんは容器に泡立て装置をとりつけて節約(なるほどー!)。 ここでは職員だけでなく、刑に服す人びとにも環境教育をしており、ゴミについての情報は数ヶ国語で出されているそうでした。 管理者と囚人代表者のあいだで話し合う機会ももたれました。 話し合いでは、囚人からの提案も出され、実行されているそうです。 一人当たり300gだったパンを250gに減らして、もっとほしい人は前日に申し込むとか(これでパンの残りが激減したそうです)、収集箇所に捨てに行くときには、当番の囚人だけでなく、職員にも立ち会って欲しいとか。 こうして、この刑務所はフライブルクの廃棄物処理事業所から、 「所内のゴミの資源別分別は、一般家庭よりも優秀だ」とほめられたそうです。 「ここの住人は、環境意識が高い」と職員の方がおっしゃるので、「なぜ」とたずねました。 すると「囚人には、自分は責任感のある人間であって、他人にうしろ指をさされるようなことはしない、という誇りがあるからだ」というお答え。 わたしには、職員と囚人のなごやかな雰囲気やコミュニケーションも、ポジティブに働いているのではないかと思えました。 製本作業所の壁には囚人の手で書かれた大きな貼り紙がありました。そこには 「君たち、おれたちは地球をゴミの山にし、海や川をよごしてしまった。(中略)地球を守るために、小さくても意味のあることをしたいなら、ゴミを減らすことからはじめよう。 さもないと、刑務所ではなくて、おれたち自身が被害を受けるんだ。わかったかー」とありました。 これは数年前から貼られているのに、だれも破らなかったそうです。 ただし、「わかったかー」の言葉のあとに、だれかが小さく「わからん」と小さく書いていましたが。 このように、昔から環境意識の進んでいた刑務所。今回、ドイツでおそらく最初の「ソーラー刑務所」になったことで、ますます元気(?)が出るかな。 ちなみに、太陽電池の設置費用(4000万円弱)の三分の一は、個人の市民が出しました。といっても、寄付ではなくて、財テクのためです。 出資額におうじて、電気の買い取り料金が支払われるので、うまく太陽が照ってくれれば、ふつうは十年あまりで元がとれます。さらにもう十年間も高い買い取り料金が保証されていますし、太陽電池の寿命はいまでは二十年よりもずっと長いですから、全体としては出資額の倍以上が戻ってくるというわけ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[エコライフ] カテゴリの最新記事
|
|