テーマ:海外生活(7780)
カテゴリ:日常生活
一昨日、こちらの国営第二放送の「外国ジャーナル」という世界ニュースの番組で、日本の全国亭主関白協会のことがとりあげられていました。
といっても、この協会を「マッチョクラブ」と訳していましたけどね。まあ、意味としては合っているかな。 亭主関白だった人が、このままでは奥様に三行半をつきつけられそうになって、家庭を守るために、奥様に対する自分の態度をあらためる訓練を、ほかの「亭主関白」たちとなさっているとか(あくまでテレビからの知識ですが)。 この協会が提唱する愛の三原則、「ありがとう」「ごめんなさい」「愛しているよ」を奥様に言うとか、ドアを開けて押さえて、奥様をさきに通らせてあげるとかができるようになって、免状をいただいている男性の風景も紹介されていました。 こんなん、あったりまえじゃんと思うけれど、当たり前ではないこともあるんでしょうね。 母が昔、話してくれたことがあります。 結婚したてのころ、父と二人で買い物から帰ってくると、祖母(父の母、例の不器用で家事ができなかったエゴイスト)がかんかんになって、 「この子(父のこと)に買い物で荷物をもたせたことなんぞはない。この子にそんなことをさせて」と母に詰め寄ったのだとか(自分は荷物なんぞ、持ったことないくせして)。 母は、なんてところに嫁いできてしまったんだろうと、もうそのときに後悔したそうです。 日本に住んでいたとき、ご近所の家(とてもやさしそうなご主人と親切な奥様)でお茶をいただいていると、ご主人がいる前で、奥様がわたしにちょっとした考えを発言したことがありました。そのとたんに、ご主人が「お前は黙ってろ」と激しい調子で叱責なさり、奥様がすぐに言葉をひっこめたので、私はびっくりしました。 こういう話をドイツ人の友人たちにすると、信じてもらえません。 こっちはね、一応「騎士道精神」とかで、ドアなどでのレディーファーストはもちろん、荷物は男性が運び、女性にコートを着せかける(男性すべてがこういうことしてくれるわけではありませんがね)とか、ま、日本では女性が自分でしていることを、ささっとすることになっているみたい。 多くの妻(またはカップルの女性側パートナー)が、休日の朝に男性が朝食をつくって(作るといっても、ゆで卵ぐらい、あとはチーズとかハムとかを冷蔵庫から出したり、コーヒーを入れるぐらい)、まだ寝ている女性のところに運んで、ベッドで朝食を食べたーい、と願っているという話も聞きます。 実際にこういうことをするドイツ人男性がどれほどいるかはしりません。わたしはそういう男性を経験していませんし、してもらいたいとも思わないです。朝食はやっぱりテーブルで食べたい。 パーティーなどの場でも、飲み物を男性が女性にとってきてくれて、細々と世話をやく光景が見られます(全部の男性ではないです、トホホ)。 では、日本の夫たちの方がヨーロッパよりも亭主関白なのかというと、そうとばかりは言えない気がします。 たとえ、みかけはそうでもね、内容をじっくり吟味すると、ちょっとちがうような。 たとえば、日本のご夫婦では、妻が財布を握るというか、お金全体の管理をする場合が多いですよね。夫の給料も妻が管理して、夫がお小遣いをもらう、というケースも多いはず。 父は、自分の給料がいくらだかも知らないことを自慢していました。 私自身も、夫の給料を管理し、夫に相談しないで、必要なものは(必要でないものも)買っていました。ただし、夫も自分が好きなものは、どんどん買っていましたから、小遣い制ではありませんでしたが。 現在の日本のご夫婦がどうなのかを、実態調査したわけではないのですが、いろいろな言葉のはしはしから想像するに、妻が大蔵大臣、という状況は多少なりともあると思います。 これをドイツ人の友に話すと、またまた驚かれます。 こちらの夫婦は、夫が稼いでいる場合、夫の給料の額を妻が知らないという場合すらあります。夫は自分が稼いだ金の中から、「家計費」だけを妻にわたし、あとは自分で管理するのです。 だから、妻がたとえば洋服などを買いたいときには、夫の許可を受けなければなりません。 土曜日のブティックでよく見られる光景。 しょざいなげに椅子にすわっている夫。 いろいろな洋服を試着しては、試着室から出てきて、 「これ、どう?」と聞く妻。 「いいんじゃない」と適当な返事をする夫(早く終わってもらいたい態度が見え見え)。 昔、東京でドイツ人に日本語を教えていたことがあります。 ある外交官夫妻は大きな庭付きの洋館に住み、しょっちゅうパーティーを開いていて、はた目にはとてもセレブに見えました。奥様に私が日本語を教えていたのですが、 あるとき、駅ビルの店で、彼女に偶然、出会いました。 店の前に出ているセーターをためすがめつ眺めては、ため息をついているのです。 値段は三千円ぐらいだったでしょうか。 「Solarさん、このセーター、ステキでしょう?とっても欲しいんだけれど」という彼女。 「気に入ったのなら買えばいいのに、きれいでお似合いよ」と言うと、 「でもね、主人に聞かないで買ってしまうわけにはいかなくて」と悲しそうな顔をされるのです。私は 「セーターの一枚ぐらい、なんてことないから、買っちゃえ、買っちゃえ」とたきつけてしまいました(夫に聞かずに、夫の金で何でも買い、家も夫に相談せずに間取りを決めていた私の意見はあまり信用できないけれど) そういえば、日本語の授業料を彼女がもってなくて、私に払えなかったことがあったのを思い出しました。財布を握っているのがご主人なので、彼女の手元には生活費ギリギリのお金しかないようでした。 まさか、全部が全部、こういうタイプの夫婦だとは思いませんが、フライブルクの身近にいるご夫婦でも、同じようなことを体験しました。 奥様もご主人以上に稼いでいるのに、あるとき奥様の一存で子どものTシャツを買ったら(彼女の稼いだ金で)、ご主人に「こういうことは一言、相談してからにしてくれ」といわれたのだとか。 こうみてくると、ヨーロッパでは表面上はレディーファーストでも、中身は夫が実権を握っている場合が多いのかも(かもですが)しれません。ドイツ人と結婚した日本女性からも、そうした内容の嘆きの声を聞いたことがあります。 日本では、一見、妻は態度の上では夫にかしずいていても、実権はしっかり握っていて、夫は妻にすっかり頼りきり、妻なしでは生きていけないほどなのかも。 だからこそ、亭主関白協会で、妻のなだめかたを習わなければならないのかもしれません。テレビの記者にインタヴューされたある男性は「このままでは夫婦の危機なので、入会しました。頑張ります」と殊勝な態度でした。 それに、日本では男性は幼い頃から、レディーファーストの習慣など学ばないし、心の内を言葉や態度でしめす訓練もされないし、さらにはシャイな男性も多いので、こういうことを要求されても、困るでしょうね。 おお、可哀想な日本の亭主関白たち! でも、日本だって、最近のお若い方たちはそうでもないのかもしれませんね。ちゃんと「愛してるよ」とささやき、子どものオムツもとりかえるし、ゴミ出しもする夫たちは多いのでしょうね。 ま、どちらがいいとか悪いとか、夫婦やカップルのことは端が口出しすることじゃないですね。ケース・バイ・ケースで。 いったい私は何が書きたかったんだ? あ、そうだった。この亭主関白協会のことが、ドイツでも報道された、こういうニュースがドイツ人の注意をひく、ということが言いたかっただけなのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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