テーマ:食べ物あれこれ(49590)
カテゴリ:料理・パン焼き・菓子・食材
最近、x回目の誕生日を迎えた。
父が逝った年齢についに達してしまった。 誕生日というのは、「また歳とった」となげく日なのか、「とにもかくにも、ここまで生きてこられたことに感謝」すべき日なのか。この歳になると、やっぱり後者だろう。 もう、いつ死んでもいい、という気分にもなる。 親に「わたしを生んで育ててくれて、ありがとう」と感謝すべき日なのだ、という人もあるが、育ててくれたことに感謝はしても、生んでくれたことをありがたく思うことは、正直いってあんまりない。 子どものときから、「生まれて来たというのは、死にいたる電車に無理矢理のせられたようなものだ、終点には死だけが待っている」という意識につきまとわれているから。 死そのものは怖くはないけれど、死にいたる過程を自分で選べないところが、怖い。 途中下車することはできても、どこの駅も死でしかない。 とはいえ、自分がアフリカでもなく、シリアでもなく、コロンビアやハイチでもない、恵まれた国に生まれ、しかも、第二次大戦と(おそらく起こるであろう次の)大戦やカタストロフの間に生きることができ、苦労もせずにノホホンと生きてこられたのは、ひたすら親のおかげだ。 やっぱり親に感謝すべきだけれど、もう遅い。親にはもらうばかりだった。 でも、親というのは子どもから何かをもらいたいとか、何かをしてもらいたいなどとは思わないのではないかしら。少なくともわたしは、自分の子どもからプレゼントをもらいたいとか、何かをして欲しいと思ったことは一度もない。娘の夫に窓ふきとバスタブ掃除をしてもらったことがあるけれど(恥)。 とにもかくにも誕生日。 ドイツでは誕生日はクリスマスと並んで、一年で一番たいせつな日。 ただし、周囲に祝ってもらうというより、誕生日を迎える人自身が家族や友だちを招待するのが普通。 幼稚園や職場などでも、誕生日を迎える子どもの親、誕生日を迎える人自身がその日にはケーキを焼いてもっていって、クラスの子どもたちや同僚に振る舞うことがある。 もちろん、周囲の人がロウソクのともったケーキを用意して、本人を驚かせることもあるにはあるけれど。 一般的には誕生日を本人が祝い、身近な周囲を招待することが期待されている節がある。 そういう期待から逃れるために、旅行してしまった年もたびたびある。 でも、今回は去年と同様に、身近な人を夕食に招待した。それでも、スペースの関係で、客の数を7人にしぼった。 10年ぐらい前までは、立食式にして、20人以上は招待して、寝室を除く家のすべてを開放して、お客たちがどこでも食べられるようにしたこともあるけれど、こうすると、お客の知っている人どうしがかたまってしまって、スモールトークがかわされ、深い会話になることがなくて、なにか薄っぺらい感じがしないでもない。 そもそも、こういうイベントを開催する気力や体力はないわ。 お客(娘の義父母さん、悪友良友、BFの姉)はすべてドイツ人。今回は、彼らがふだん食べる機会がないものにした。例年はラムとかノロジカのローストをメインにするのだけれど。今回は中華と和食が中心。 前菜は、BF姉(いつもおいしいワインやシャンペンをたくさん寄付してくれ、自分でもたっぷり飲む)のたっての要望で、エビ入り春巻き(これが一番手間がかかる)。 メインはイベリコ豚のロースト、シーフード八宝菜、筑前煮、五目寿司、トマトのマリネ。 デザートはパンナコッタとフルーツサラダ。 筑前煮にはコンニャクや蓮根、五目寿司には金針菜(ハスの花の乾燥)など、ドイツ人が知らない食材をいくつかのアジアショップで買い集めてきた。コンニャクが買えるのはありがたい。トマトのマリネには、紫蘇の花穂を添えた。 どの料理も、日本人にとっては日常的に食べる、ごくふつうのものなのだけれど、ドイツ人にとってはエキゾチックで特別なご馳走だったようで、大いに感激された。 コンニャクとかハスは、味よりもどちらかというと質感を味わう食材なところも、彼らにとっては興味い体験だったようだ。 わたしが個人的に気に入ったのは、イベリコ豚のロースト。 値段が高いのが難だけれど、今回は思い切って、霜降り肩肉のブロックを1・6キロ買った。 レシピは、AEGの日本のサイトで見つけたもの。AEGのコンベクションオーブンの宣伝と関連したレシピだろう。 赤ワインでマリネしてから、焼き、焼き上がった肉に、ネギ・ショウガ・ニンニクを混ぜた、バルサミコ酢たっぷりのソースをかけてサービスする。 酢の量の多さにぎょっとしたけれど、イベリコ豚の脂身のこってりを中和してくれて、酸っぱさも感じない。 2時間近くかかって、じっくり焼き上げたイベリコ豚は、柔らかくてジューシーでとてもおいしかった。 脂身が多い霜降り肉だったので、お客たちがいやがるのではないか(周囲のドイツ人たちはみんな、ハムやロース肉から脂の部分をいちいち取り除いて食べるほど、脂身をいやがる)と心配したけれど、イベリコ豚の脂身のうまさに誘惑されて、みんな食べていた。アハハ、脂の多さに気がつかなかったらしい。 このレシピはAEGのよ、と言ったら、みんな驚いていた。 「なんで、電気機器企業のサイトにレシピが載っているの?」と。 AEG(ドイツの電気機器企業)が日本でイベリコ(つまりはスペインの)豚のレシピを出して、それをドイツにいる日本人が作って、それをドイツ人が食べているという巡り合わせが面白い。 アルコールが飲めない人(元アルコール中毒で今はクリーンな人、運転をしなければならない人、元々飲めないわたし)のために、パッションフルーツジュース+紫蘇シロップ+水+レモンとライムの絞り汁を材料にしたノンアルコールカクテルを作った。 これが意外においしかった。 昨日、サルサダンスのレッスンに行ったら、先生(とても教えるのが上手な、すてきな若い女性)がぐぐっと近寄ってきて、いきなり私を抱きしめて、耳元で「おめでとう」とささやいたので、びっくりした。 ダンス学校は、生徒たちの誕生日をいちいちチェックして、コンピュータのデータに入れて、毎回、教師が気がつけるようにしているようだ。 銀行やデパートからも誕生日カードが届く。 ドイツって、ほんとに誕生日が大切なんだな。 でも、日本からも、息子が電話をくれ、弟からは、毎年おもしろい近況報告メールが届く。 彼とはお互いの誕生日と正月だけ、メール交換をしている。こういう程度の付き合いがちょうど良いのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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