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空の独り言

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2005年08月06日
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テーマ:小説日記(233)
 戦乱戦国の世と化し、国の王だった者が引き出され、断頭台の露となることが珍しくない時代。石畳を駆ける幼い足。駆ける先にあるのは人だかり。今まさに断頭台に引き出され、剣が振り下ろされるという。大勢の兵士が来たのはつい先頃。大勢の兵士達。黒や焦げ茶、様々な色の馬に乗せられた黒光りの鞍。そして、徒歩の兵士の一人の槍に括り付けられ、ぶら下がっていたのは、つい一月前に凱旋の先頭で立派な馬に乗り、大勢の兵士を従えていた人物の頭だ。固く閉じられた瞼。口を覆う立派な鬚。年の頃三十代の王だった。そして、本日断頭台に引き出されるのは、彼が慈しんでいただろう家族達である。辿り着くも大きな大人達の山に阻まれて引き出される人達の姿が見えない。王となるも王の家族となるも負ければ、それは敵の手により逃げ出そうとも捕まえられ、その血筋をことごとく絶たれる。女だろうと、子供だろうと、その血筋を残すことは、後に反逆に立たれる禍根ともならないとも限らないと王になることをめざす者達のエゴの防衛である。引き出された木製の断頭台の上で女性が毅然として立っていた。つい先日まで、綺麗なドレスを着ていただろう人は粗末なローブ一着に腰ひも一本で結わえて立っていた。屈強な兵士装束の者達によって両肩に手を置かれ、跪かされた。一人、一人、日をおいて引き出され、切り落とされるのだ。女性の頭上で刃が振りかぶられ、今まさに一つの命の灯火が消えんとしていた。勢いをつけて、振り下ろされようとしていた時、どよめきが起こった。薄汚れたマントが数名飛び込んできたのだ。瞬く間に勝利に酔いしれていた者達の剣は払われ、却って命を絶たれていた。ざわめいている。大人達が。
「あ、王妃が」後ろ手に括られていた縄が剣を差し込まれぱらりと解け、目隠しさせられていた布も取り払われていた。信じられない思いの女性の手を取った者がいた。
「そなたは」
「ご忠告を聞かず、凱旋に出た報いですよ」
「王子は、姫は」
「城にてお待ちです」臣下のごとく、別の人物が片膝をついて報告している。
「そなた、生きておったのか」
「恥を忍び、せめて王妃様を始めご家族方の無事を図るためにやむなく」項垂れている。その手を取る女性。
「わが子達の下に」促されたことにまた深々と頭を下げ、その手を取り、ともに立ち上がった。断頭台より降りていく人達。それも追われることの恐怖などなく、堂々と立ち去っていくことに野次馬をしていた人達はざわついていた。何が起こったのだろう。大人達の会話から、見ることができないでいた幼い者は、大人達の顔の動きのある方向に駆け出していた。広場より延びる石畳の道の向こう、森に城壁を囲まれた馴染みの城が主を変え、そこに大きく建っていた。

傷ついている地球がよくなることを祈って。






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最終更新日  2005年09月21日 18時18分51秒
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