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空の独り言

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2005年08月07日
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テーマ:小説日記(233)
 駆けて駆けて行った先、目の前に霧がかかる。あんなにもはっきりとしていた町並み、大きな城、それらさえも濃い霧の中に見えなくなってしまっていく。迷う気がして立ち止まる足。歩いて、立ち止まる。それの繰り返しの中、思い返していた。旅をしていた。分かれ道の選択にコインを投げ、コインの選択に神殿へと向かい、そこで物凄い見えない力に引き裂かれた感覚があった。いや、違う。仕立屋の父がいた。出稼ぎ先で戦が起こり、激しくなることに帰ってきた。仕立屋を継ぐ年の離れた兄。でっぷり太った優しい母。ルーディアの街に住む子供だった。戦は遠い南の話だったはずだ。断頭台の露と消える人など、この街にはなかったはず。なぜ? 頭を振る。いや、違う。自分は、戦に駆り出されて、怖さに震えて茂みに隠れていた。同じ年代の子達が、剣を振るい、戦っているというのに、茂みに隠れて。判らなくなった者は、立ち止まる。何だろう。この思い出は。この記憶は。自分でありながら、自分でない者達の記憶を見せられているのだろうか。白い霧の中、微かに晴れてきたことに目を細める。晴れた時、目に飛び込んできたのは木目の見える天井。そして、そこから吊り下げられてゆらゆら揺れる無数の飾り。鳴らされる可愛らしい音楽。しばらく見ていた瞳は、起きることができないことに気づいた。目だけは動かせられるらしい。キョロキョロしていたら、人影が目に飛び込んできた。白いスカートをはいた人が背中を向けていた。その人が振り返って、気づき、笑顔を見せて近づいてきた。
「起きましたかぁ」パタパタ振るのは小さな紅葉だった。
「ユウちゃんはいい子ですねぇ」抱き上げられ、後ろ首に手を添えられてしっかり支えられた。そして、感じる温かい温もりにホヤァッと何ともいえない笑みを浮かべていたのだった。

~Fin~


傷ついている地球がよくなることを祈って。






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最終更新日  2005年09月21日 19時25分03秒
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