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空の独り言

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2005年08月17日
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テーマ:小説日記(233)
 まどろみの中、遠く耳殻に聞こえるジェット音。ばさりと揺れる背中の翼。空にある町に住む種族の中、蒼い屋根持つ宮殿を遠く眺め、人はゆったりとした時間を過ごす。いつから暮らし、いつから空を漂うようになったかは定かでない。そして、飛び立つ時以外は種族の者達は、背にある翼を仕舞う。そう、遠く遙か地にある人間のように町を歩き、駆けている。
「レ-テル様とリ-セル様が歩いていらっしゃるぞ」いつもの悪友が、うたた寝をしていた者を騒々しくも布団を捲って叩き起こしてくれた。不機嫌な顔で目を擦りながら上体を起こした。
「朝帰りなんだよ」
「朝帰りって、何してたんだよ」
「何って、決まってるじゃないか。仕事」腕を掴まれ、有無を言わさず引き起こす。
「拝顔してからでもいくらでも寝られるだろう」
「嫌だ」振り払い、再び布団をかぶって寝る。どんなお偉いさんだろうとなんだろうと眠いものは眠いんだ。悪友が再び果敢に引っ張ろうとウンともスンとも動かない。
「こんなので力使うなよぉ」悪友も意地になっているらしく、布団を挟んで双方の力がぶつかって、稲妻が発生している始末である。そんな彼らの様子に溜め息を吐いて入って来る人物が居た。ツカツカとサンダルが石畳を歩く音を立てて、側に来るなり、先まで稲妻を発生させていた中に光の球を打ち込んでくれた。当然、双方が跳ね飛ばされる感じになる。もう、こうなったら眠るどころではない。
「眠りへの貪欲さは買うがな。リュシファーナ。サフィリア様がお呼びだ」窘めたのは蒼い髪の青年だった。金髪の子は、頭を掻き掻き手に持つかつては布団だった残骸を布団に落とす。呼び出しに簡単に着替えた彼は、ザマァミロと舌出して見送る悪友をジロリと睨みつけてから、呼びに来た遣いの青年の後について部屋を出て行くのだった。
 白い大理石の円柱が円柱が並ぶただ広い中、人工の泉が澄んだ水を湛えていた。そして、長いローブを幾重にも重ねて並ぶ女性達が、その泉を前に並び、座って祈りを捧げていた。その中央に台座があり、そこにも女性が座って祈っていた。祈りは厳しく、たおやかな中に厳粛な空気が張りつめ、力を持たない者でもその場に足を踏み入れたならばどんなにふざけた者でも神妙な面持ちになってしまうことだろう。そうした中に青年に連れられて、金髪の子が入ってきた。彼は、思いきり不機嫌そのものである。中央の台座に座る人の顔が仕方なさそうに微笑んで彼らを迎え入れる。青年が泉を挟んで片腕をヘソの辺りに拳で添えて、お辞儀をした。その隣で、同じようにお辞儀をする子。
「もうすぐ成人ですね」
「はい」
「見つかりましたか?」問いかけにますます不機嫌な顔になっている。
「意地悪いですよ。サフィリア様。私にどこをどう捜せと」
「感じなさい。きっと見つけられます。心を澄ませなさい。姿でなく光を求めなさい」唇を噛みしめる。睡眠を貪ったのも、物凄く長く行動していたがため。見かねて寝所に追い立てられ、眠りを摂ることを命ぜられたためである。他方より、少し大きめの子が他の同じような大人によって連れられて来る姿がある。
「心で捜しなさい。リュシファーナ。いいですね」
「はい」頭を下げて神妙に了承する。それ以上留まることは許されないとばかりに、青年に背に手を添えられて立ち去ることを促される。順番だとばかりに先ほど入ってきていた大人と子供が彼らが動くと共に入れ替わって同じ場所に立っていた。入り口のところでほんの少し振り返れば、先ほどの彼と同じように女性が話しかけ、神妙に聞き入っている子供の姿があった。

傷ついている地球がよくなることを祈って。






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最終更新日  2005年09月26日 05時54分16秒
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