フェルマーの最終定理
「スミスの本棚」でDeNAのファウンダーの南場さんが推薦していた本。フェルマーの最終定理とはXのn乗+Yのn乗=Zのn乗を満たす整数解はないといういたってシンプルな命題にもかかわらず、三世紀にわたって証明されることはなかった数学界で最も有名な難問。もともとはギリシャの数学者ディオファントスが残した「算術」の訳本の余白に、フェルマーが残したメモが始まりだった。ピタゴラスの定理に関連する記述からヒントを得てフェルマーが発見し、余白に記述したものである。そしてその書き込みに続けて<私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない>と、残したのである。この本では、フェルマーの最終定理の背景として、古代ギリシャから中世、現代に至る数論の歴史を、実際の定理の生い立ちと内容、それに関わる数学者の人生を交えて俯瞰してくれる。一般の人が雰囲気を咀嚼できるくらいにエッセンスを抽出したうえで、きちんと数学的な内容まで踏み込んでいるのがすばらしい。さらに、500ページにも及ぶ分厚い本にもかかわらず、一気に読み終えることができたのは、かかわった人々の人生や、運命のドラマまで踏み込んでいるからだろう。フェルマーの最終定理をついに証明したのは、アンドリューワイルズ。読み進めてみると、その成果は、ゼロから積み上げたものではなかった。過去の数論の最高のエッセンスを集めて、さらにそれを組み合わせながら、改良発展させて、独創的な証明を導き出している。独りよがりにならず、世界の知恵を見つめた上で、 さらに独自の観点を追求して行くそうした姿勢が、大きな成功を生み出したのだろう。そのステップの中で、日本人の果たした役割も大きく、この本の中でも大きく取り上げられている。谷山・志村予想という日本人が考え出した独創的な推論が、これまで別々の世界だった、楕円方程式の世界とモジュラーの世界をつなぎ合わせて解法を導き出すキーとなったのだ。フェルマーの定理は証明されてしまったが、数の深遠なる世界は、まだまだ終わりがない。約数の和が、元の数と同じになる数を完全数という小さい順にいうと、6,28,496,8128,33550336,8589869056,・・・また、約数の和が、元の数より1少ない数は、2のn乗がすべてそうであるように無数に存在するが、約数の和が、元の数より1多い数は、まだギリシャの時代から発見されていない。約数の和が、元の数より1多い数が1個も存在しないことの証明は、2500年を経ていまだに証明されていないということだ。この本を読めば、こうした不思議な数の世界に触れることができる。アンドリューワイルズの印象的な言葉 大事なのはどれだけ考え抜けるかです。考えをはっきりさせようと紙に書く人もいますが、それは必ずしも必要ではありません。とくに、袋小路に入り込んでしまったり、未解決の問題にぶつかったりしたときには、定石になったような考え方は何の役にも立たないのです。新しいアイディアにたどりつくためには、長時間とてつもない集中力で問題に向き合わなければならない。その問題以外のことは考えてはいけない。ただそれだけを考えるのです。それから集中を解く。すると、ふっとリラックスした瞬間が訪れます。そのときの潜在意識が働いて、新しい洞察が得られるのです。数学の世界に限らず、あらゆる難題を解決していくのに必要なことではないでしょうか?「最後の授業」の中でランディ・パウシュ教授の残した言葉を思い出した。夢をかなえる道のりに障害が立ちはだかったとき、僕はいつも自分にこう言い聞かせてきた。レンガの壁がそこのあるのには、理由がある。僕たちの行く手を阻むためにあるのではない。その壁の向こうにある「何か」を自分がどれほど真剣に望んでいるか、証明するチャンスを与えているのだ。▼ 楽天 検索キーワード ▼「フェルマーの最終定理」不格好経営 [ 南場智子 ]「最後の授業」↓ 検索はこちらから