Stellabeer's Swing

乃木坂にひっそりたたずむ、もう今はなくなってしまったお店。

たぶん８年前。
大事な友達の誕生日をお祝いしていました。

日本酒を飲みながら、日本庭園を眺めながら、お互いの報告を。
私たちはちょっと日常から離れた空間で、ゆるやかに時間を過ごすのが好き。

二次会は敷地内に併設しているＢＡＲに行こうね、なんて話しながら
私は彼女がトイレに立つのをひたすら待っていました。

「ちょっとトイレ」
彼女が席をはずした瞬間に私はＢＡＲまで走りバーテンダーさんに耳打ち。
そして席に戻り何食わぬ顔で彼女を待ちました。

「ＢＡＲに移動しようか」
２人カウンターにそろって腰を下ろすなり、コトリ。
バーテンダーさんは「お誕生日おめでとうございます」と
彼女の前にシャンパンを置きました。

グラスからは音を立てて泡がのぼり、底に沈んだベリーは宝石のようです。
お願いした私まで感嘆のため息。

しかし、それよりも何よりも、彼女のびっくりした顔がおもしろかった。あはは。
にやり。　してやったり。



あれからたぶん８年。


月日がたった今でも、２人カウンターに並び、
お互いの近況を語り合えることをうれしく思いつつ、
やっぱり私は彼女がトイレに立つのをひたすら待っていました。

「ちょっとトイレ」
彼女が席をはずした瞬間にバーテンダーさんにお願い。「お祝いのシャンパンを」

席に戻った彼女の前に出されたグラスは、
ブルーキュラソーを含んだ角砂糖から、輝く泡の立ち上るシャンパン。
彼女と同時に私も感嘆のため息。

そして何よりも、
８年前と変わらず、盛大に感動してくれる彼女の姿がうれしかった。
（本当は予期してた？）と疑いながらも、
顔を真っ赤にして喜んでいる彼女を見ると、そんなことどうでもよくなる。






少しずつ　少しずつ成長しながら
ＢＡＲカウンターの似合う素敵な女性になろう。

お誕生日おめでとう。