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September 30, 2010
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 「アメリ」ジャン=ピエール・ジュネ監督最新作は、頭に銃弾を撃ち込まれた男が、その銃弾を作った武器製造・販売会社と、父親の命を奪った地雷を作った軍事会社に、仲間ともにハチャメチャないたずらを仕掛ける、エスプリ&ブラックユーモア満載ムービー。


 この手のノリの映画は嫌いじゃないし、監督の言わんとする事も一応理解できる。しかし、「復讐劇」という部分に固執し過ぎたためか、本来語らんとするテーマがすっかりぼやけてしまい、結果、その思惑とはまったく異なるところへと着地してしまった観のある、非常に惜しい作品だった。

 数々の奇想天外なギミックや、軟体人間、人間大砲、人間計算機といったキャラクター一人一人の特技を生かした作戦は面白く、さながらコメディ版「ミッション・インポッシブル」。多少、かなり無理やりな計画に「んなアホな」と思いながらも、なかなかスリリング且つ巧妙な展開で、最後まで飽きさせない。
 また、主人公・バジルとその仲間達の個性豊かすぎるぶっ飛んだ顔ぶれはもちろん、どこか憎めない軍事会社社長ら敵役たちも、フランス映画独特のアンニュイな雰囲気とマッチして、ハチャメチャな世界観に温かな空気をもたらしている。
 
 が、如何せん彼らのやってる「ハチャメチャないたずら」というのが、どうにもただのテロ行為にしか見えず、結局単なる自己満足じゃないの?という落とし方をしてしまったのは、なんとも残念なマイナスポイント。
 「非暴力的な」とパンフにはあったが、ボディガードに薬物不正所持の冤罪かけたり、相手の商品トラックごと盗んだり、ついには工場丸ごと爆破したりでは、もはや死者が出なけりゃいいというレベルではなく、人道的にどうなのかと首を傾げてしまう。
 そもそも、復讐するなら兵器を作っている会社はもちろんだが、それよりも責めるべきは、その兵器を使って戦争、あるいは殺し合いをしている連中であって、そこに対しても(例えば、銃弾を使った張本人か、地雷を使った軍隊に)イタズラを仕掛けるのがスジのように思うのは小生だけか。
 「コメディなんだから、そのくらい寛大に観ろよ」と思われるかもしれないし、実際そうなのだが、本作をおとぎ話しと捉えるには、少々冗談が過ぎるように感じてしまった。

 なぜあのメンバーが、揃って揃ってバジルの復讐劇に付き合おうと思ったのか、明確な行動理念が明かされなかったのも気になるところ。
 どうやってあのメンバーが揃ったのか、なぜそこにバジルが誘われたのかは、まあこの際置いといても、バジルタンブイユ以外、あの軍事会社(あるいは戦争そのもの)に個人的恨みがあるような描写はなかったように思えるが。
 いわゆる「一人はみんなのために」精神か。それとも家族愛か。はたまたただの暇つぶしか。うーん、分からん。


 繰り返すが、決して嫌いなわけじゃないし、「世界が平和でありますように」というキャッチコピーどおりの、監督のメッセージも分からんではない。が、彼らの行為が平和に繋がるかと聞かれれば、あの2つの会社の社員たちが路頭に迷うだけでなんの解決にもならないと答えざるを得ず、ともすれば本作そのものが「ダークすぎて笑えないジョーク」に落ちてしまった観がある。

 余談だが、人間大砲がクッション代わりにしようとしていた金属の切り屑。念のため注意しておくが、アレは驚くほど切れ味鋭く、言うなれば無数の小さな剃刀かナイフの塊と思ったほうがいい。
 しかも、曲がりくねったそれらが皮膚に深く突き刺さると、ギザギザの表面が釣り針の返しよろしく引っかかり、場合によっては手術が必要なほど食い込んでしまう。多量の油も付着しており、目に入ろうものなら一撃で失明は免れまい。
 多少衝撃を吸収してくれるとして、引き換えに身体中ズタズタに斬りつけられるのがオチなので、クッションにはあまりオススメできない。
 試そうと思っている諸兄姉は、くれぐれも注意されたし。
(やらねぇよ)


 そんなわけで、小生の、この映画に対する評価は…、

 ☆☆☆★★--

 嫌いじゃないんだけどねぇ(しつこい)、星3つのマイナス2つ!!



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最終更新日  October 1, 2010 08:41:32 PM
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