看護師向け雑誌のため、吸引のことも多く書かれていますが、スクイージング(呼吸介助による排痰法)が第一選択ではないことが、よくわかりました。
どうしても、「痰の貯留がある」→「排痰(スクイージング)」→「吸引してもらう」と考えがちですが。
担当患者さんで、前傾腹臥位にしたことはないのですが、今後、検討してきたいと思いました。
勉強になったことは、
◆排痰に必要な要素は、
1、重力 : 痰のある部位を上にして、重力を利用して痰を移動させる。
2、痰の粘性(粘稠度) : 湿性(保湿性、加湿性)、気道粘液と線毛のエスカレーター機能
3、空気の量と速度 : 吸気量と呼気速度
◆痰は通常1日に50-100ml産生される(健常者)
大部分は気道壁から吸収、あるいは蒸発する。残りは線毛運動で喉頭へ送られ嚥下される。
◆無気肺は肺胞の虚脱によって、そこに存在する空気が吸収されることで起こる。強い陰圧で奥まで吸引カテーテルを挿入すると、末梢気道は収縮し、肺胞は虚脱する。
炎症などで脆弱化した組織では正常化せずに無気肺を形成してしまう場合もある。
◆主気管支レベルより末梢に痰があったとしても、緊急な場合を除いては気管吸引の適応とすべきではない。(気道粘膜の組織を傷つけるリスクが高いため)
◆下気道は原則として無菌状態に保たれている。
(気管吸引カテーテルは微生物を下気道に押し込むとも考えられ汚染のリスクがある)
◆脱水傾向では気道粘膜も同じ状態と考えられ、痰の粘性も高いことがある。
◆現段階では、排痰目的における人工呼吸中のネブライザーに対する評価は、回路や気管チューブの過剰な水滴貯留、感染の機会を助長する可能性から、目的を凌駕するほどの効果はないといえる。
◆頚部聴診にてゴロゴロという音が確認できたら、主気管支レベルに痰貯留していることを示している。
◆患者への効果と弊害を考えると、パーカッション(タッピング)にはエビデンスがなく、弊害が大きいことが挙げられる。
◆卯野木健らは、2003年、成人の人工呼吸器患者においてスクイージングが排痰量を増加させず、血液ガスも改善しなかったという学会報告を行い、2005年に論文を発表している。
◆徒手的胸郭圧迫手技(スクイージングなど)は、排痰の効果が科学的に検証されていない。しかし、科学的に効果が明らかになっていないからといって、臨床経験から効果があると感じられる手技やケアを否定するわけではない。
◆末梢気道や肺胞の状態をアセスメントすることは簡単ではないため、閉塞・虚脱の有無にかかわらず、優先的に実施すべきは体位ドレナージと加湿である。
◆背臥位での弊害
換気 : 重力により、背中側が腹部臓器で圧迫される→換気は腹側へ移行→正常肺胞の可膨の危険がある。
血流 : 重力により、血流は背中側に集まる。
⇒ガスと血流の比率にミスマッチが生じ、「換気血流比の不均衡」となり、低酸素血症が引き起こされる。
解剖上、最も下になる肺の下葉区域に分泌物が移動し貯まる→痰が末梢気道をふさいでしまい、無気肺が形成されてしまう。
◆後傾20~30度程度の体位では痰はほとんど移動できない。
痰を主気管支へ移動するためには、少なくとも、前傾60度程度の体位が必要。
末梢から痰が上がってくるのは、数十分が目安。
2007年9月号 Vol.23 No.11 Expert Nurse(エキスパートナース)
同じ、道又元裕先生が編集されている書籍です。
人工呼吸管理実践ガイド [ 道又元裕 ]
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