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カテゴリ:読書感想文
前回の続きです。
▽今回紹介する「大地の子」の主人公、中国名「陸一心(ルーイースン)」 日本名「松本勝男」は、満蒙開拓団として満州国に移り住んだ 家族の長男でした。 家族構成は、祖父、両親、勝男(7歳)、妹(5歳)、生まれた ばかりの弟の5人。 終戦間近、「満州への移民は兵隊に取られない」という話は軽く 無視され、父親が徴兵されてしまいます。 そして、日ソ不可侵条約を破棄したソ連の参戦と、関東軍の身勝手な 撤退。 残された家族は、開拓団の人たちと着の身着のまま逃避行を始め ます。 逃避行の途中、赤ん坊は死に、祖父も力尽き、母親、勝男、妹の 三人になってしまいます。 そこへソ連軍の集中砲火が始まり、母親は血まみれになって息絶え、 勝男と妹のあつ子は何とか命だけはつなぎ止めました。 やっと生き延びたところへ中国人が現れ、勝男とあつ子はバラバラ にさらわれてしまったのです。 この時の過酷な体験で、勝男は記憶喪失になってしまいます。 ▽勝男は、さらわれた中国人の家で「大福」と名づけられ、過酷な 労働を強いられます。 度重なる虐待にやっとの思いで逃亡に成功しますが、再び人さらいに 捕まり、街角で売られそうになったところに、中国で小学校の教師 をしていた「陸徳志」に拾われます。 勝男は「一心」と名づけられ、貧しいながらも子供がいない夫婦に 大切に育てられます。 一心は教育もしっかりと受けさせてもらい、立派な青年に成長 します。 ▽出自が日本人であることは、当時の中国ではかなりのマイナス 要因でした。 人種差別にも耐え、育ててくれた両親に恩を返し、中国の発展の ために尽くそうと決心し、必死に勉強した一心は、やがて製鉄所へ の就職が決まります。 そこそこのエリートでなければ就職出来ない職種でした。 ▽しかし、そこへ「文化大革命」という現代の日本人には考えられ ない発想による革命が始まります。 一心は、生みの親が日本人であるというだけで犯罪者扱いされ、 労働改造所(強制収容所)へ送られてしまいます。 一心は、同じ労働改造所に収容されていた、日本語を話す中国人 と知り合い、ひそかに日本語を教えてもらいます、 ▽いつ終わるともしれない労働改造所で5年、両親には何処にいるか すら知らされず、行方不明のまま過ごしていました。 労働改造所で破傷風を罹った一心は、運良く血清を投与され助け られます。 その時、付きっきりで看病してくれたのが、巡回医療チームの 看護婦をしていた「江月梅」でした。 やがて、江月梅の働きによって、両親と中国共産党の幹部になって いた大学時代の友人に、一心の所在を知らせてもらい、両親と 友人の必死の嘆願により、ようやく労働改造所を出ることができ ました。 ▽労働改造所を出た一心は、国家プロジェクトである製鉄所の製造に 参加することになりました。 宝華製鉄と名づけられた製鉄所は、国交を回復した日本の製鉄所と 日本政府の協力でスタートします。 しかし、宝華製鉄プロジェクトは難航します。 中国と日本の国民性の違いと、中国人は日本の被害者だという 意識が強く働く中国側は、何かと「中日友好の精神で...」と 日本側に譲歩を要求してくるのです。 その中国側技術者の一人が一心で、日本の製鉄所の現場の所長を していたのが、一心と血のつながった父親、松本耕次でした。 当初、二人は親子であることは分からず、一心は生き別れた妹を 探し、父親の松本耕次は行方知れずの家族を捜していました。 やがて一心は妻の江月梅の協力により、生き別れた妹のあつ子と 出会います。 しかし、あつ子は病気と過酷な労働のため、既に死の床にあった のです。 妹の死に目に何とか間に合った一心は葬式の最中に、娘をやっと 探し当てた松本耕次と出会い、お互いに親子である事がはじめて 判明します。 しかし... ▽太平洋戦争終結後、国交が無かった中国と日本は、全く別々の 方向へ向かっていました。 片方は経済大国にのし上がり、片方は打倒ブルジョワ、形ばかりの 肉体労働者称賛を「革命」と称して実施し、大量虐殺を行った国です。 一心と血のつながった父親が親子であることが判明しても、30年 の時間と、国のあり方の違いが大きな壁となり、自由な親子が演じ られません。 逆に中国共産党側に一心と松本耕次の関係を利用され、日本側の 譲歩を引き出すために利用されてしまいます。 現代の中国共産党がどのような思想で国を動かしているのかよく 知りません。 ただ、中国共産党が歩んできた、第二次大戦後の約70年の短い 歴史から見ると、現在の中国の状況は、毛沢東が掲げた当初の 思想とは180度違う路線を歩んでいるとしか思えません。 「打倒インテリ、打倒ブルジョワ」を叫んでいた政府が、ブルジョワ の国になっています。 多くの問題をはらみつつ、中国は肥大化しているような気がします。 ▽「大地の子」は、著者自身の数年の取材の末、事実を再構成し、 小説として描いたものです。 350頁超えの本を4巻読み通す勇気が必要ですが、実はあっと いう間に4冊読めてしまいます。 おすすめの作品です。 人生を成功に導く読書術! ~おやじむしの3分書評~ より抜粋 【メルマガバックナンバー】→ http://www.mag2.com/m/0000194014.html 【豊かな人生研究委員会HP】→ http://www.oyajimushi.com/ 【楽天日記】→ http://plaza.rakuten.co.jp/successread 【FC2ブログ】→ http://successread.blog66.fc2.com/ 【ライブドアブログ】→ http://blog.livedoor.jp/oyajimushimushi/ 【アメバブログ】→ http://ameblo.jp/oyajimushi お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/04/06 11:29:40 PM
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