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長編時代小説コーナ

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Feb 23, 2007
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カテゴリ:小説 上杉景勝
  直江山城守兼続は、その足で景勝の居室に向かった。

  景勝は居室の窓をあけ、ぽつっりと孤独で酒を呷っていた。

「御免こうむります」  「山城、奥に参っていたか」

「久しく仙桃院さまにお会いいたさず、申し訳なく思っておりましたが。ご尊顔を

拝し嬉しい日にございます」  「母上は元気であったか?」

「いたってお健やかにお過ごしにございました」

「そうか、側に参れ。沢庵じゃが一献参るか」  「頂戴いたします」

  気心の知れた主従は一刻(二時間)ほど盃を交わした。

  景勝は黙々と大杯をあおっているが、心なしか青味をおびた頬に苛立ちの色

が浮かんでいる。 (苦悩しておられる) それが兼続には手に取るように判る。

「そのように飲まれますな、お躯に障りますぞ」

「合戦もない世になり、なにが面白い。飲まずにおれまいが」

「ご心境は分ります。しかし一国を統べる国主としての態度とは申せませんな」

「分った」  珍しく景勝は素直(すなお)であった。

「いらざる雑事を申し上げました」 主従が視線を合わせた、兄弟同士のような

暖かい思いが通いあった。いずれ真実を語り合う時がくるであろう、そんな思

いが兼続の胸中を奔りぬけた。

          (唐入り)

「山城、大阪が気がかりじゃ」  「はて、何のことにござる」

「そちの賢しげな面が、惚(ほう)けて見えるわ」  「これは手厳しい」

  景勝の烈しい言葉に兼続が苦笑で応じた。

「殿下には老衰の兆(きざ)しが現れておる」  景勝が沢庵を噛み砕いた。

「いつ聞いても小気味のよい音ですな」

「はぐらかすな。殿下はお気に入りの千利休を切腹に追いやった、この一事を

もってしても、殿下の気力の衰えが分る」  景勝の顔色の優れない原因は、

太閤殿下の躯と気力の衰えにあったのだ。

「利休の屋敷を三千の兵で取り囲んだのは、お屋形さまですぞ」

「分っておる。殿下の命令には逆らえぬ」

ひっさぐる我得具足の一つ太刀、今此時ぞ天になげうつ。茶人の利休らしから

ぬ辞世の偈(げ)ですな」

「殿下にとり、弟の秀長殿の死が痛手であったの。利休の事件なんぞ笑って済ま

せる殿下が、お赦しに成られなかった」

「これから殿下は益々専横に走りましょう。我が家も注意せねばなりませぬ」

「初めてお会いした頃は、気風のよいお方であった。闊達で情けを知っておられ

たが、年を経て陰湿になられた」

  両人の脳裡に越水城で最初に会った、秀吉の態度が思いだされた。自由闊

達な態度とひょげた会話が秀吉の器量の大きさを物語っていたものだ。

「それも仕方がない事でしょうな。八月に鶴丸君を亡くされ、豊臣家にはご継嗣が

おられません。それで気が滅入っておられるのです」

「天下人が正気をなくされ、この後の天下の仕置きを考えると先が思いやられ

る」  景勝の顔色が冴えない。

「山城、殿下は兵士の血を望んでおられる」  景勝が驚くことを口走った。

「・・・・そうなると朝鮮ですな」  直江山城守も直ぐに反応した。

「そうじゃ、朝鮮出兵計画が本決まりとなろうな。まずは九州諸侯からお呼びが

かかろう、その内に我らにも渡海の下知が参ろう」

  景勝が空になった盃を眺め、苦々しい顔を見せた。

  こうした大阪の情報は山城守をつうじ、石田三成からもたらされていた。

太閤殿下が鶴松君を亡くされ、その心の傷を癒すために朝鮮出兵を考えている

と、三成から知らせを受けていた。三成もこの作戦には反対であったが、秀吉

は三成に朝鮮渡海の兵站業務を命じていたのだ。こうした膨大な物資の搬送に

係わる能力は、日本広しといえど三成をおいて他に人材は居なかった。

「まずは、九州に兵站基地としての城を築かれましょうな」

  兼続が、ぐびっと盃を空けた。

  景勝主従の思惑どおり、秀吉は突然に唐入りを宣言し、朝鮮出兵の兵站基

地として肥前名護屋に築城を命じた。それは大規模な工事であった。

  朝鮮渡海の諸大名の屋敷や、武器弾薬、兵糧、衣料を扱う町が築かれ、

侵略戦争用の城下町の完成が急がれた。

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Last updated  Feb 23, 2007 11:07:14 AM
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