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Nov 29, 2010
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カテゴリ:士道惨なり
 

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      「士道惨なり(1)」

         (一章)

 青葉がむせかえるような緑一色の山並みが、連綿とつづく美濃の

山々をぬうように、細い街道が曲がりくねっている。

 その街道を薩摩絣の羽織、袴に菅笠をかむった中年の武士が足早に

道を急いでいた。厳重な足拵えからみて長旅をしていることが知れる。

 背にしよった綾織(あやおり)の刀袋が旅人の眼をひきつけていた。

「見事なお刀袋じゃ」  「さぞ立派なお刀でしよぅな」

 ひそひそ話が聞こえるが、武士は意に介さずに足を運んでいる。

 今日中にこの難路を越え、今井田宿に着きたい一心であった。

 そこには江戸詰めの藩士が待ち受けているのだ。彼らと無事に落ち合えば、

この任務は終わる。殿の道楽に付き合ったばかりに、このような大任を

引き受けることになったのだ。武士の視線に一里塚を示す榎(えのき)が大きく

枝を伸ばし旅人が三々五々、陽光を避け休んでいる姿がみえた。

 武士は一里塚に足を止め草叢に腰をおろし、木陰で大粒の汗を拭った

武士の名を森弦次郎という。美濃黒岩藩三万石、馬廻役二百石取りの藩士

である。黒岩藩は外様大名で、九頭竜川の源流の油坂峠の要衝一帯を領し

ていた。森弦次郎は美濃街道を抜け中山道に向かっているのだ。

 この馬鹿げた任務の発端は、藩主の戸田忠義の道楽から始まったのだ。

 忠義は小名の藩主でありながら、刀道楽として大名間で知られる存在で

あった。国を発つ数日前に森弦次郎は中老の土井武兵衛の呼び出しで、

長廊下を伝い奥の溜り場へと向かっていた。

 また殿の道楽が始まったな、そうした思いを抱いてのことであった。

 殿は新しい刀を手にいれると森弦次郎に、試し斬りを命ずるのであった。

 弦次郎も剣客の誉れとして栄誉に感じ、請われるまま何度も試し斬りを

行ってきた。中老の溜り場で襖越しより声をかけた。

「待ちかねた、入れ」 武兵衛のしわがれ声に促され部屋に躯をいれた。

 何時ものごとく上座には土井武兵衛は、肥満した体躯を暑苦しげに見せ

待ち受けていた。彼は中老として殿の信頼も厚く弦次郎にも目をかけてくれた。

 そうしたことで、弦次郎も武兵衛には一目おいていた。

「弦次郎、また殿のお道楽が始まったわ」

「今度は、どのようなお刀ですか?」

「・・・・こたびはわしも些か頭が痛い」

 脇息に身をもたせた、土井武兵衛の顔が珍しく曇っている。

 武兵衛の傍らに豪華な唐織の刀袋が置かれている。紫の飾り房のついた

綾紐が巻かれている、よほどの名刀じゃなと素早く見抜いた。

「ご公儀に知れたらことじゃ」 武兵衛が声を低め刀袋を差し出した。

 ずっしりとした重量感を掌に感じ、軽く頭を下げ受け取った。






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Last updated  Nov 29, 2010 12:18:16 PM
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