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「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

◎漆黒の薔薇

漆黒の薔薇

 4月始め。
 私は再び休職した。
 
 1ヶ月もあれば。
 復職くらい訳もない。

 自分では。
 そう思っていたけれど。
 
 主治医と所属長の判断から
 6ヶ月が休職期間になった。

 自分から見る自分は虚構
 他人(ひと)を観ていても他人を理解することは出来ない。
 だから。
 自分なんて理解できやしない。
 主治医の言葉。

 そして。

 何時も考え過ぎ。
 理由(いいわけ)なんて後から考えても遅くはない。
 所属長の言葉。

 私は。
 あらゆるものから自由になった

 だから。
 1週間でも1年間でも、幾らも変わらない。
 そう思った。

 久しく日記を書かなかったのは。
 日記なんて、所詮、自分との「お喋り」。
 そんなものに
 時間を取られたくないから。

 休職が決まった翌週。
 私は。
 本屋に走った。

 自由になって。
 本が読みたい
 走りたい
 この2つを、身体が欲求した。

 走りたいけれど
 未だ右足の傷に不安がある。
 だから。
 本屋。
 単純な理由だろう。

 10冊を超える文庫本を買い漁り。
 昼夜ぶっ通しで読んだ。
 勿論。
 疲れれば眠る
 当たり前のこと。

 『狼と香辛料(支倉凍砂著)』の1巻から7巻まで。
 2日もかかった。
 驚くほど、速度が遅い。
 驚くほどの理解力の減退を知って・・思わず苦笑した。

 「貪欲は多くのものを失うが、禁欲が何かを生み出すこともない。」
 そう書いてあった。

 当たり前のことだけれど。
 そんなこと。
 考えもしなかった。

 「うつ」に苦しんだ3年間。
 「禁欲」を友に生きてきた。
 だから。
 産み出されることなく失ったものは、途方もなく多い。

 「うつ」が収まったら。
 「復職」が叶ったら。

 それまでは。
 何も出来はしない。
 いや。
 何もしてはいけない。
 そう考えていたのだから。

 でも。
 完全に復職すれば。
 何かをする時間なんてありはしない
 そう気付いてもいた。

 今のような。
 「復職」少し前の状態で。
 6ヶ月の休職期間。

 考えるまでもなく。
 神からの贈り物だろう。

 その引き換えは。
 「無給」と「絶望的になった復職への道」。

 何のことはない
 「祈る」には、少しばかりの「お供え」を要求される。
 当たり前のことなのだから。

 そして。
 この6ヶ月間。
 自分自身にだけ因って生きる
 そんな経験なんて。
 誰にも出来やしない。

 躍動する「生」を写し取った「HATHAWAY ROSE」
 どこか「死」を予感させる「ICE ROSE」
 どちらも好きだった。
 でも。
 漆黒の闇を抱きて独り咲く「黒色の薔薇」

 その凛とした立ち姿に。
 今の自分を重ねたい。


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