向日葵の咲かない夏 道尾 秀介
向日葵の咲かない夏[物語]夏休みを控えたある日主人公ミチオはイジメられ不登校となったS君の家にプリントを届ける役を命じられるしかし、S君の家で彼を迎えたのはS君の首吊り死体だった・・・慌てて学校へ戻ったミチオだったが、その後の捜査では自殺の痕跡はあるものの肝心のS君の死体だけが忽然と消えていたそして、ミチオの元にはS君を"名乗る"蜘蛛が事件の究明を求めて訪ねて来る[観想的なもの]「背の目」「骸の爪」の道尾秀介代表作である「背の目」シリーズ同様、作家道尾秀介自身が主人公かと思いきや今回の「ミチオ」は名前のほうの道夫らしい。どうでもいいことだが「背の目」シリーズが京極夏彦の劣化コピーなら、今回の「向日葵の咲かない夏」はさしあたり乙一のコピーか?主人公が子供である点や、深刻なイジメもしくは周りとコミュニケーションが取れないことを悩んでいる、「死」との距離感などが否応なく「黒乙一」を想起させるそれでいて出来は如何なのかといえば、最悪この作家の特質として伏線が多いことがあげられるが、今回もあれこれ用意してあることはわかるのだが、伏線を張っといて使わなかったり、何度もどんでん返しをしているうちに、前半の前提部分の維持すら放棄してしまったり、正直何でもありになってしまっている少なくとも「背の目」シリーズではこんな雑な作り方ではなかったはずだが。本家乙一でも人とは呼べないようなものが跋扈したり、悪趣味な犯人による身勝手な犯行とかも扱ってはいたが、結果としてはきっちりとまとめてくるしかるにこの作品は最後になればなるほど論理が破綻し、最終的には主人公自身が何者なのか、正気なのか狂気なのかすら判然としない謎解きのほうもいくつか確定的なところまで詰めながら、結局は次々とどんでん返しが起きるそれ自体は大歓迎。しかし、それであれば最後の結論が一番説得力を持つべきだと思うそれなのにかなりのゆるさで流されてしまった感が否めない、っていうか探偵役である主人公は最初から結論に達していた可能性が高いそれなのに紆余曲折したように見せるために回り道しました、って感じが透けて見えて感じが悪い正直これが「本格ミステリ大賞」の候補作になったってだけで不可思議である