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スキルス胃癌 サポート

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救いの神

2002年8月

どうしても、納得のいく病院が見つからない。
○○先生が転勤して行った夢の病院の開院はもう来月だった。
あの病院に行く事がずっと夢だったのに・・・・
来月・・・・来月・・・来月???
ふと、思いついた事を主人に言ってみた。
「来月、開院ならあの病院にお願い出来ないものかな?」って。
主人は
「来月開院するS病院は、H病院に匹敵する大病院だぞ。
 優秀な医師を全国から集めて、癌治療に取り組む新しい病院だ。
 そんな、癌治療の中枢を担う病院が受け入れてくれる訳がない」
と、言う主人に私は食い下がった。
「駄目で元々じゃない。これだけ病院に断られてきて、又断られる病院が一つ増え たってどうって事ないでしょう」って。
すると、主人は
「・・・・そうだな、そもそも○○先生の患者だったのだし、近況報告のつもりで 行ってみるか」と言った。

早速、S病院に電話をかける。
事務の人からソーシャルワーカーに繋がった。
このソーシャルワーカーの人に事情を話し、○○先生とお会いしたい旨を告げる。
すると、
「お時間を作って頂けると言うお約束は出来ませんが、○○先生にお話は伝えま す。」と言われ、電話が切れる。

程なく電話がかかってきた。
あのソーシャルワーカーの人からだった。
「○○先生がお時間を作って下さいました。△日の×時に来て頂けますでしょう か?」と、言う。
話を聞いて貰えるだけでも、充分ありがたかった。

当日、開院前のS病院へ行く。
中へ入るにはスリッパという状態で、建築業者が沢山出入りしていた。
約束の時間まで、まだ少しあるというので、ソーシャルワーカーさんが院内を案内してくれた。

ほどなく約束の時間になり、小さな談話室に通された。
久しぶりにお会いする○○先生は大分痩せてしまわれていた。
開院準備で心身共にお疲れなのだろう・・・と思った。

この時とても驚いた事がある。
大勢の患者さんを診てこられているはずなのに、父の事を良く覚えていてくれた。
最初の一言は
「確か、最初にお会いしたのは昨年の11月でしたね」だったのだ。
Y先生がいきなり電話をかけてきて紹介した患者だったから、印象深かったのかもしれないが・・・・
「最後にお会いした時は、あんなにお元気でいらしたのにね」
とも言われた。

紹介状に目を通し、CT画像を見る。
「この状態では、残念ながらやる事はH病院と同じですが、私が診てきた患者さんで すし、私が最後まで面倒をみましょう。」
と言って貰えた。
多分、あの頃は開院前でまだマニュアルも出来上がっていないような、どさくさ紛れの状態だったから、融通が効いたのだと思う。
今では、ありえないだろう。

ただ、ただ、この時は本当に嬉しかった。
最後の診察で○○先生が言ってくれた
「お待ちしています」の言葉は本物だったのだ。
医師のほんの少しの言葉で、救われる思いがある。
まさに、私達にとって○○先生は救いの神だった。 



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