五瓣の椿 最終回「父と娘」
最後のターゲットは実の父。「私は何故かずーっと前から知り合いのような気がするよ」これほど知らぬが仏な台詞ってないよ。かもし出す雰囲気が母そっくりだというのでおしのは内心穏やかではない。あの母の血を引いているというのが一番嫌なんだから。流石に父は勝手が違うのか、羽織を誂えて貰ったおしのはヒステリックな声を上げる。優しくされるのも嫌、性的に愛されるのも嫌。有罪確定してるし、早めに勝負をつけないと神経が持たない。丸梅屋源次郎には他にも子供を産ませた女がいたが、ほったからして知らん顔。「出すぎた真似を……お前一体何様のつもりだ!」捨てられた女に金を渡した、とおしの=おようが言うと源次郎は怒りだし暴力を振るう。でもすぐに謝る。「貴方にぶたれる筋合いなんてないわ!」あちこちの女を孕ませて追い払う、おしのは源太郎に対する殺意を無事固めた。店を飛び出した徳次郎、寺の階段で寝泊り。おこよは彼を探しに行き、従姉妹のおしのが生きてることを知ってしまう。で、どうする?売るか?売っても徳次郎が手に入らないことは自明の理だが、社会正義では売るほうが正しい。青木の元に、おしのの二度目の手紙が届く。それは自分の素性を明かしたもので、あと一人殺します、と宣言したものだった。探偵役である青木はおしのの最大の理解者、だが一度あっただけでよくそれを理解したものだ。おこよは徳次郎を取り返すべく、おしのの居場所を青木に密告。若い女が思い込むと怖いな。おしのが死罪になったって、徳次郎は店に戻ってきやしないよ。おしのの隠れ家に乗り込んだ青木与力たちがみたのは、自衛のため人殺しとなった徳次郎の姿だった。その場にいなかったおしの=おようは最後の殺しを決行していようとしていた。「生きてるんですよ。おしのは、行きてるんです」大金持ちは瓦版なんてろくに読まないらしい。おしのが持参した瓦版には、下手人の名前までしっかりと書いてあった。「しの。おっかさんを焼き殺したのは。私なんです」「おっかさんとかかわりをもって、おとっつあんを苦しめた男を四人、殺した。貴方が、一番たちが悪い」完璧に据わった目で一緒に地獄に落ちましょう、とすりよる娘に、さすがの源次郎も震え上がる。頼みの綱は血のつながり。源太郎は上手く娘を丸め込んだ。おしのは3通目の手紙で、青木に呼び出しをかける。おとなしくお縄になります、と言われたのでやってきてみれば、おしのは父を貫くはずの簪で自害していた。おしのは法を曲げて罪人を裁くのは間違いだったと青木に詫びる。そしておしのは死亡、徳次郎は八丈島送りに。親子の情がどうこうというより、おしのは命乞いされて殺せるほど非情になりきれなかったようなきがする。他の面子は問答無用で殺していたが、父だけは言いたいことを言ってやらずにいられなかった、それが元で正気に戻ってしまったような。彼女の魂の平穏のためにはこれでよかったのか?個人的にはすっきりしないが……