バレンタインSS 11話
「石田、チョコ寄越せっ!」昨日の今日でよくもまあ。呆れるというより、いっそ天晴れだと思う。「君、井上さんと朽木さんから貰ったじゃないか。手数料もあげたし……」「全部みずほに取られたんだよっ!」ご愁傷様。それ以上何も言わず、石田は啓吾にチョコレート詰め合わせ特大パックを渡した。それを切っ掛けに、石田の机の前にチョコを求める列が出来る。……女子のほうが明らかに多かったが。織姫の無限の胃袋を考え、クラス全員を賄ってあまるほどのチョコを作ったのだが、なんだか彼女が戻ってくる前に無くなりそうである。……こんな大事になるとは思わなかったのだが。こうなると、ホワイトデーは自分があげる側なのか、貰う側なのか、どちらにしろとんでもない事態になりそうな気がする。結局織姫たちは始業ぎりぎりまで教室には戻らず、その頃にはチョコは綺麗に売り切れていた。「……」ムースを作るかどうか、石田はまだ考えている。