49 常盤本館
旅館常盤本館(現ときわ茶寮)は1952年より4年以上の歳月を費やし完成する。建て主は溝渕寿吉(じゅうきち)氏。戦後、町名の由来ともなった常盤座を再興した事業家だ。現在は1,2階が料亭として使われているが上階には旅館時代の天守=写真=が、今もシャチホコと青瓦の輝きをそのままに形をとどめている。旅行客を強く印象付けるための意匠で、竣工当時は高松港からこの天守が眺められたそうだ。 外観もすごいが内部にもすごい部屋がある。二条城の御殿を模したと言われる「桃山」と名づけられた大広間で、金色に輝く吹き寄せの格天井と壁がレトロなシャンデリアの光に浮かび上がる。下座側には明石朴景氏作の松竹梅の漆絵が壁面いっぱいに描かれている。建物竣工後まもなく寿吉氏は急逝するが、その時この漆絵はまだ完成していなかった。慶賀を表してはめ込む予定だった88匹の蝶は享年を示す56匹に改められ、今も寿吉氏の業績を偲んでいる。物件名 旅館常磐本館所在地 高松市常磐町1丁目8-2 竣工年 1956年設計者 溝渕寿吉(施主)施工者 不詳