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臨時教員を考える 加藤ブログ

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December 31, 2008
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カテゴリ:臨時教員

 年末より姜尚中の「在日」を読んでいる。姜尚中氏は、いろいろなメディアに出ているので知っている人も多いだろう。在日二世の東大教授であり、自身の在日としてのアイデンティティーと共に鋭い社会批判を積極的に行っている。情の深さが表れたあの静かでソフトな語り口は、心に染み入るものがある。

 その姜尚中の文章、というか正確に言えば彼の講演をまとめた記事だったか、私が初めて読んだのは3年前の2006年の暮れのことだった。このブログの主の加藤氏より、「進める会」(臨時教員の待遇改善を進める会)の主要メンバーが集まる忘年会に誘われた場であった。メンバーの一人の姜尚中氏を敬愛する男性(彼も臨時教員)より、記事のコピーを手渡されたのだった。私は、今もそのコピーを大切にとっている。なぜなら、この姜尚中の記事について父と話をしたのが、最後の父との思い出となったからだ。

 明けて正月、いつものように私は実家のある福岡に帰省していた。いつも、様々な分野の新聞の記事を切り抜いていた父だった。その父と私は、その頃、一般にも知られるようになったワーキングプアについてよく議論していたものだった。常々、そのことを含めた社会状況に憂いを持っていた父に、持ち帰った姜尚中の記事を見せたところ、「この人はすごかねー、よう、物事をみとんしゃーね。この人の記事、お父さん取っときたかねー」と痛く心服した様子だった。

 その翌日5日、私は父と母と14年振りに愛宕神社へ初詣でに出かけたのだった。そこは、私がその春には結婚して東京へ行くという14年前の正月(今や17年前となるが)に一緒に出かけた思い出の神社だった。玄界灘の海が一望に見渡せる愛宕山の頂上にある愛宕神社だった。初詣より帰ったその日の夜、入浴中、不慮の事故で父は逝った。

  と、いうわけで姜尚中の「21世紀をどう切り拓くか」というこの講演の記録は、父の手元にはなく、父との最後の思い出として私が大切に手元に持っている。

 ところで、派遣教員の身の私としては正月(1月)は、その3月に次の任用があるかどうか、心配な時期でもある。幸い、私は連日の報道にあるように突然派遣を切られて、この年の瀬の寒空に投げ出されるという憂き目にはあっていないものの、同情すべきは、そのような、派遣切りをされた若い人々だろう。なぜなら、景気が悪くなれば、真っ先に切られるのが彼らのような若年労働者だからだ。私が就いてるような公教育の臨時教員というのは、景気にはそれほど左右されないだろう。むしろ、国の教育予算削減に連動して、それでも教員数を確保せねばならない自治体にとっては、教育費を節約するのに、正規で雇うより臨時は安上がりなわけだから。 

 今や派遣労働者は321万人に達し、ワーキングプアの温床となっているという。小泉政権の規制緩和の美辞麗句の下に自由化された派遣労働法の結末が今起きている派遣労働者の大量解雇ということなら、やはり、小泉のやったことは間違っていたということではないか「痛みを伴う改革」どころではないではないか。当の本人はさっさと政界を降りると宣言し、責任はとらないし、痛みなど感じているはずもないのだ。

 松下プラズマの偽装請負告発事件訴訟で高裁判決は『松下は労働者供給=人身売買をしていた。中間搾取という賃金泥棒をしていた。これらは公序良俗に違反する』と決定した。派遣労働法の改正については、よく調べてはいないが、おそらくはこのような悪徳企業が人間をモノとして使いまわすのに都合のいいものに改正されたのに違いない、と私は思っている。

 若者が夢を持てないどころか、今日の食べるものにも切迫するという現実は酷い世の中になったものだ。派遣切りや、松下やトヨタという大手企業がおこなっている偽装請負などは、本当に、人間をモノとしか扱っていないとしか思えない悪行である。この年末、You tubeで何度も共産党の志位委員長の国会答弁を聞き返した。以前、このブログに紹介した時の答弁から繰り返し、彼は派遣労働の切迫した実態について国会で首相に質問をし続けている。

 前回、ブログで紹介した時のものは確か、福田首相だったと思うが、昨日見たのはその福田首相に次いで、現麻生首相に対しての答弁だった。ここで、その状況を説明する気もないが、率直で的を得た志位委員長の質問に対し、のらりくらりの答弁、質問されているのは首相本人なのに、福田、麻生、両者ともひたすら、厚生労働大臣の舛添要一氏に答弁させているのが姑息だ!

まずは志位委員長より両者への質問の様子をご覧ください!→                          

                     福田さんへの質問 麻生さんへの質問

 姜尚中はその講演で述べている。以下、姜尚中の「21世紀をどう切り拓くか」より抜粋。

戦後はじめての格差と矛盾

 自己責任ということを私たちが認め、容認し、それを積極的に進めていくとするとどうなるか。その結果として、昨年だけで3万2,000人近くの自殺者が出ております。私の教え子がライフリンクというNPOを立ち上げ、自殺防止のための立法化にむかって新しい動きを始めました。今から八年前日本の自殺人口は3万人を超えました。約30万人近くの人間がこの年間で亡くなっております。1人の人間が死ぬということは、その親戚やいろんな人々を入れて最低でも10人の人にとっては大きなショックであり、トラウマになっているのではないかと思います。

 日本の人口当たりの自殺率は、ロシアに次いで世界で第2位か第3位ぐらいで、グローバル化を進めていく本家本元といわれたイギリス、アメリカと比べても、断然高いんです。社会はほとんどこ3を自己責任として、個人の悩めるできごととして放置していたという問題は、深刻です。三万2,000人を365日で割ると1日あたり90人の人が死んでおりますし、私の話が約1時間ちょとだとすると、私の話が終わったときには4人ぐらいは亡くなっている計算になります。

 一方では、巨万の富を得る人がいます。パソコンひとつクリックして、それで何億、何十億というお金が飛び交うような社会もあります。これはただ単に不平等や格差があるというのみならず、戦後日本が一度も経験しなかった目もくらむような落差です一度も経験していない未来への希望がないという事態です。<中略>

 パリにおけるもう一つの現実

 3月の初旬から二週間、NHKのBSでフランスへ行きました。1万台の車が全土で焼かれた移民暴動の取材です。フランスというと自由、平等、博愛のすぐれた民主主義の国だと考えますが、現実に起こっていることは移民の子弟による暴動でした。さらに、CPE(初期雇用法案)という、だいたい2年間にわたって雇用主が被雇用者を理由も言わずに自由に解雇できるという、官公庁では労働市場の弾力化と言われている首切り自由化法が出されたのです。これが通るということになって、パリで約一五十万近くの中学生や高校生たちのデモが発生しました。しかも肌の色も民族もそして自分の主審母体も違う若者が、結局この初期雇用法案を廃案にしました。

 この取材で思ったことは、若者たちが街頭に出る、自分たちの未来にむけて自分たちのことを決定する、これは非常に清々しいことでした。これは私も一度も見たことのない光景でした。六十年安保の時も国会を取り囲んだのは、まあ30万くらい。このデモは150万でしたからさすがに驚きました。そういうことが若者に中から起きている。つまりさきほどの全体会の発表が、このようかエネルギーとなっていくならば日本の未来はあるのではないかと思うんですが、発表した一人ひとりは、そう簡単ではないと、ある程度はわかってらっしゃるのではないかと思います。

 フランスで、移民系の人々は9・11以降、人種差別の対象になり、チュニジア系・アルジェリア系等を問わず、ほとんど自分の未来が奪われる状況です。かつて「在日」の人々が潜在的な犯罪者と見られ、自分の未来を閉じざるをえない状況と酷似しています。母語としてフランス語しかしゃべれない。アルジェリアに行ったこともない。にもかかわらず自分たちはフランス国民ではない。失業率は50パーセントに達している。華やかなパリから車で約40分、シテといわれている廃塊のような高層アパートがありました。そのゲットーのような中で、唯一の楽しみは、食べること。そこにはマクドナルドが一つ、あとは何もない状況です。<中略>

  紙面の関係でかなり抜粋したがこの文章を読んで思ったこと。暴動を起こすエネルギーと正義を持っている若者が結集するならまだ、日本に希望はあるけど、今、若者は内へ内へと向かうから、それが切れたときには連帯の暴動ではなく不特定多数に向かう暴力となることが問題なのだと思う。また、そんな若者にしてしまったのは私達大人なのだろう。そして、今、日本の若者はかなり不幸な現実に直面しつつあることは、たぶん確かな事だと思う。このまま、この状況が続けば、間違ったカリスマ指導者が登場する時、彼らは付和雷同的に追従するかもしれない。

 全体主義の再来とならないよう子供たちに教えるのは私達教師に課せられた仕事である。ただ、そんなことを教える間もなく、臨時教員の私はあとわずかで切られるのも現実である。これも全体主義者のもくろみかー。(怒)

                                         じゅんじゅん






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Last updated  January 1, 2009 10:56:53 AM
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