魔女の隠れ家

畠中恵さんの『【予約】 おまけのこ』を読了。
（ところでいつこの「予約」が取れるの？）

今回もほっとしたりハラハラしたりと、人の機微に触れるお話でした。
いくつか心に残ったお話を紹介。

「こわい」
大事な友達、栄吉とケンカしてしまった若だんな。原因は病み上がりなところに持ってきていつも以上に激マズの栄吉の菓子を吐き出してしまったこと。
謝りたい気持ちと、栄吉本人も悩んでいる菓子の腕をなんとかしてあげたいと思う若だんなに「狐者異（こわい）」という妖が近づいてきて、飲めば「職人の腕が上がる薬」があると云う。
だが、妖「白沢」「犬神」の兄や達は大反対。二人が「近づくな」と云い張る、「狐者異」とは一体？

このお話の中での栄吉がすごく格好いい！
薬の力で人に褒めてもらっても嬉しくない。やがて薬の効力が切れるのではないかと怯えるのも嫌だ。職人の腕と一緒に己へに自信もつけるには薬になんて頼らない。

まさしく兄や達の云うとおり「一人前の男」で「江戸っ子の男伊達」です！

そしてここに出てくる「狐者異」の姿に、切なさと哀れさと怖さを感じました。

関わると災難が災難を呼び、助けた周りにも不幸が及ぶ「狐者異」。
妄念と執着の塊で、不平と不満ばかりで他者の僅かな情など跳ね除ける。もっともっとと強欲で己を変えることなど考えない。

なんて寂しくて哀れなんでしょうか。
でもこれも人間の心には必ず潜む感情なのでしょうね。
ふと、自分の中の「狐者異」が大きくなってはいないかと反省してみるたばさです。

「畳紙」
『ねこのばば』で登場した（手元に本がないので不確かですが）お雛さんとひょんなことから相談に乗るはめになった「屏風のぞき」のお話です。
幼い頃に両親を亡くして厳格な祖父母に育てられたお雛さんは、化粧することで人に素顔を見せないようにしてきました。
そんなお雛さんの白塗りも気にしない許婚も出来て、順風満帆のように思えますが、お雛さんは人知れず悩み事があるのでした。
そう、その白塗りです。心を、弱さを隠すために白粉を塗るお雛さん。けれど許婚のことを思えば厚塗りなんてやめて薄化粧にしてみたい。
だけど怖い。

女心のお話と云ってしまえばそれまでですが、人を信頼する勇気、思いやったりする気持ちが描かれていたと思います。
その人を信じなければ、その人の信頼も得られないんですよね。

どのお話も良かったです！！
個人的には大好きなお兄ちゃんの松之助も出てて嬉しかったです。
（『ぬしさまへ』を読むと本当に幸せになって欲しいと思う）

もう、本当にこのシリーズは読めば読むほど、続きが欲しくなる本です！

前作の感想はこちら。