テーマ:★お菓子★(2732)
カテゴリ:おたべやす 京都 和菓子編
花橘 黄羊(おうひ) さつきまつ花たちばなの香をかげば 昔の人の袖の香ぞする (古今集 夏歌 一三九) 黄羊というこなしのような生地を茶巾で絞り、三点に緑を添え、花橘の果実をあらわす。 中心の尖ったところがヘタ、三方へのびる稜線が葉の茎、その先の緑が葉。 このドラ・クエのスライムのような姿、柑橘類の果実にしては、とても抽象度が高いだけでなく、ひょうげてさえ感じられる。このあたり、他の追随を許さない京菓子独特のセンスのよさを感じるのは僕だけだろうか? もっちりとした、弾力のある黄羊の中に黒漉し餡。やわらかい餡は甘さ控えめ。 口のなかで先に餡がとけ、そのあとに独特の風味の皮。 黄羊とは何だろう? 初めて聞く素材。買ったデパートの店員、べつのデパートの売り場の店員に聞いても、ネットで調べても、よくわからない、今のところ謎の素材。 舌触りや弾力などはほとんどこなしなのだが、風味がわずかに違う感じがする。この黄色い色といい、この風味といい、ウコンで着色してあるのだろうか? となんとなくそんなふうに思わせる風味がある。 余韻は、そのウコンを感じさせるような独特の風味に混じって、砂糖漬けの柑橘類を囓ったときのような爽やかな香りが口中にただよう。どことなくホットでかすかにひりひりするのも、ウコンのせいなのか、そう思うからそんな感じがするだけなのか。 風味のスタイルは、やや古風な感じ。 頬張ると、その古風さが風味の奥深いところでふっとと灯って安らぎを感じる。 それにしても、この姿。 なぜ、こんな姿をしているのだろう? たしかに、花橘という銘で柑橘類の果実を意匠化した、といえばそれまでだけど、それにしては、この姿は、あまりにも思い切りがよく、ひょうげていて、見事。 ドラ・クエのスライムのような姿、しかし、見ようによっては、「宝珠」にも見える。つまり、宝の玉。 たかが柑橘類の果実が、なぜ、宝の珠? と・・・そこで、ふと、思い出すのが、垂仁天皇の命を受けて不老長寿の「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)」を常世の国から持ち帰った田道間守(たじまもり)の伝説。そして、その「非時香菓」こそが、今でいう橘の果実(また、蜜柑とも)だった(田道間守が持ち帰ったこの柑橘の果実が日本におけるお菓子の始まりだともいわれ、近年、田道間守を和菓子の神様、菓祖神として奉るところもあるとか)。 不老長寿の果実ならば、それが、象徴的に宝珠の姿をしているのも、頷ける(「如意宝珠」といって仏さんなどが持っているのもこの形の玉。これは、「如意」、つまり「意のまま」になんでも望みが叶う宝珠だとされている)。 などなどと、そんなことに思いをはせながら、このひょうげた、愛嬌あるお菓子を頬張ってみるのも一興かも。不老長寿とはいかないまでも、一日くらい寿命がのびたような、なんとなくそんな気がしたり・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/05/07 12:16:54 AM
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