1 クーリング・オフとは
一定期間,契約を無条件で解約・解除・撤回できる制度です。
例えば,訪問販売においては、販売業者が,突然自宅へ訪問し(
不意打ち性),購入を検討していなかった商品について,積極的な販売攻勢によって、消費者(購入者)は,
受動的な立場に置かれ、商品について,消費者の有利を装い,いわば押しつけ的に業者に有利な内容のみを理解させられ,購入意思の不安定なまま契約の申込みや締結に至ってしまいます。
また,自宅玄関などの密室で,長時間粘られたりすると,
投げやりな気持ちになって,商品の価値や必要性の判断を冷静に行えないまま,契約指定しまいいます。
そこで,後日契約の履行や解約をめぐって紛争が生じることが少なくありません。
このような消費者の心理的な弱さをついた商法は,自宅にセールスマンが来る典型的な訪問販売に限られず,路上で呼び止めて連れ出すキャッチセールスや電話などで呼び出すアポイントメントセールスなど様々です。
そこで、このような
訪問販売などにおける売買特有の弊害を除去し,消費者に冷静な判断により,契約を締結する機会を与えるために,契約の申込みまたは締結後一定期間内は、申込者または購入者が「無条件で」契約申込みの「撤回」あるいは契約の「解除」を行うことができる制度が設けられています。
これを
クーリング・オフ制度といいます。
このクーリングオフとともに,業者には,契約の内容を示す書面の提示・交付義務など,商品内容を明確にする書面交付義務があります。そこで,その書面交付義務とクーリングオフ制度によって,実質的には,消費者は,書面等により契約を十分に検討して、考え直すことができ,その結果契約を解除できるわけです。
そこで,クーリングオフ制度は,実質的には,熟慮期間を与えて,その期間経過まで契約の締結を先延ばしにする制度です
なお,本問販売,エステ,英会話,塾などの継続的サービス等についてクーリングオフなどを定めた法律は,「特定商取引法」といいますので,知っておくとよいでしょう。
2 [書面不備]によるクーリング・オフ
ところで、消費者被害事案ではこのクーリング・オフの期間が経過してから相談を受けるケースが珍しくありません。
ただ、この場合でも,業者から消費者に交付された契約内容やクーリングオフができる旨の記載がある
「契約書面」等の法定記載事項に不備・漏れがあれば,特定商取引法が要求する契約書面の交付があったとはされず,従って,クーリング・オフ期間は進行しません。
ですから,8日とか,20日とかのクーリング・オフ期間を過ぎていても,クーリングオフの主張ができる場合がありますので、まずは、申込書面や契約書面等が法定書面の条件を備えているか否かのチェックをする必要があるでしょう。また,
あきらめずに,消費生活センターや弁護士等へご相談下さい。
なお,具体的にこれらの書面に記載すべき事項は法(特定商取引法等)や省令(施行規則)で定められており、たとえば契約内容の明示やクーリング・オフの権利告知が義務づけられています。
裁判所も、書面の交付がなされていてもクーリング・オフに関する記載が欠けている場合には、法が定める書面の交付があったとは認められず、クーリング・オフの期間は進行しないとしています(神戸簡裁平成4年1月30日判決・判時1455号140頁)。
3 クーリング・オフ妨害への対応
クーリング・オフに対しては、事業者がクーリング・オフを消費者に、行使させないために、契約締結の際に、契約書のクーリング・オフ欄を重ね書きして読めないようにしたり、「解約しない」という念書をとるなどの妨害行為がなされていました。
このような
クーリング・オフ妨害に対し、特定商取引法は、「不実の告知」または「威迫・困惑」類型の場合、クーリング・オフ妨害が行われたときには、
クーリング・オフ期間が延長されます(特定商取引法9条1項1号ただし書等)。
クーリング・オフ妨害を受けた消費者は、事業者がクーリング・オフできる旨を記載して交付した書面(クーリング・オフ妨害を解消する書面。記載事項は同法施行規則7条の2第1項参照)を受領した日から起算して8日間はクーリング・オフができることが定められたのです。
つまり,クーリングオフ妨害があった場合には,業者は改めて,消費者にたいし,クーリングオフができるのですよと,理解させるために,クーリングオフができると書いてある書面を交付しなければならず,この書面の交付がなければ,消費者は何時までもクーリングオフができるのです。
4 来年,特定商取引法改正! 原則全商品についてクーリングオフ可能
来年特定商取引法が改正されます。
これまで,訪問販売など一定の販売方法による契約について,一定期間,無条件で契約を解除できる,クーリングオフ制度は,それができる商品が限定されていました。
法律(省令など)に,クーリングオフできる商品が列挙されていました。
これを逆にして,
原則何でもクーリングオフできるようにして,「クーリングオフできない商品」を列挙する用にするようです。
クーリングオフ制度は,訪問販売など不意打ち的な販売方法によって,消費者が冷静に判断着ないまま契約させられる弊害を取り除いて,消費者に契約について冷静に判断させる機会を設けるためにある制度です。
ですから,訪問販売であれば,どのような商品であれ,このような不意打ち性などが内在しているのですから,クーリングオフできる「商品」を限定することは,消費者保護の観点からはあまり合理性がありませんでした。
実際悪徳業者は,法規制を免れるために,対象商品に該当しない高額なものを訪問販売などで売りつけ,後から法が規制するといういたちごっこでした。
今回の改正は,消費者保護の観点からこのような実態をふまえて,なさるものなわけです。
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