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カテゴリ:読書/歴史系
天使か怪物か…
柔らかな喉と驚異の肺活量が生み出す「奇跡の声」で、 音楽史に妖しい閃光を放って消えた去勢歌手たちの短かくも鮮烈な歴史。 多くは南イタリアの寒村に生まれ、8~10歳で危険な睾丸摘除手術を受け、 厳しい修行ののち栄光の絶頂へと登りつめ、 やがて孤独のうちにこの世に別れを告げた処女(?)たち。 バロック黄金期の栄光と夕映えの耀いの中に影を浮かべて去っていった謎の歌手たちの姿を、 西欧社会の運命を重ね合わせて描く感動と陶酔の華麗な歴史=物語。
皆川博子さんの「死の泉」を読み終えた後、 そういえばカストラートについての本を積読していたっけ…ということを思い出し、 読んでみました(^ ^) カストラートとは、一言で言えば『去勢歌手』。 男でもない女でもない不思議な歌声を持ち、 ある時代には王侯たちにも熱狂的に支持されたという人たちのこと。 そのカストラートの誕生から消滅までをとてもわかりやすく書いています。 もともとは教会音楽を歌うために誕生したカストラートですが、 その後舞台やオペラにも出演し、ヨーロッパ各国で人気を博しました。 が、カストラートになるのは主にイタリアの貧しい階級出身の子供たちで、 自分の意志とは無関係に去勢されてしまった子供もずいぶんいたようで。。 (…なんて酷い話 > <) それでカストラートとして成功すればいいけど、 声楽で身を立てられない人たちもたくさんいたそうですから、 (声楽を仕事と出来たのは約1割くらいだったらしい…) 彼らの恨みとか絶望感を考えるととっても悲しいですね。。。 たとえ歌手として成功したとしても、陰では去勢者として嘲笑されていたそうですし…。 カストラートの手記というものは全く残ってないそうなので、 実際彼らがどんな気持ちで自分たちの運命を受け入れていたのか、 わからないのが残念です。。 ちなみにカストラートは、中国等の宦官とは手術で切除する部分が違うので、 子供はつくれるそうなのですが、 現代の感覚からすれば、音楽のためにわざわざ去勢するなんて とんでもないことですよね。。 時代の流れと共にカストラートは消滅しましたが、 でも、全盛期にたくさんの人たちを魅了した一流のカストラートの歌声って いったいどういう輝きを放っていたんだろう? 一度聴いてみたいものですが、それはもう叶わぬ夢…ですね。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.08.07 19:29:48
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