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政策懇談会を開催。
今回のテーマは、通商関税政策及び「食」。 財務省 T氏によるプレゼンの概要 ・ 日本の関税は、国内法のほか、WTO協定や、各国との経済連携協定(EPA)の枠組みにより定められている。 ・ 今日、関税の主な目的は、国内産業の保護である。関税は、輸入品の価格に一定割合をかける従価税が基本であるが、輸入品の価格が低い場合に保護機能が薄れるという短所がある。農産物など、保護の必要性の高い品目の多くは、従量税となっている。このほか、季節によって関税率が変わる季節関税や、輸入が一定の数量を超える場合に関税率が高くなる関税割当など、様々な制度を組み合わせて、国内産業の保護と、利用者の利便のバランスを図っている。 ・ 日本の関税率は、GATTにおける類似の多国間関税交渉(ラウンド)を経て低下してきており、先進国の中でも最も低い水準となっている。工業製品についてはほとんど無税であるが、農産物や皮革製品などには高い関税率が残っている。 ・ 前回のラウンドであるウルグアイ・ラウンドの結果として、1995年にWTOが発足した。WTO発足後の最初のラウンドであるドーハ・ラウンドが現在行われているが、2001年に交渉を正式に開始して以来、途中中断などもあり、交渉は長期化している。今回のラウンドは特に、開発途上国が主要なプレイヤーとして参加していることが従前のラウンドとの大きな違いであり、交渉は難航している。しかし他方で、WTOの下、紛争処理に関するルールの蓄積等は着実に進展しており、決してWTOが機能していないわけではない。 ・ 現在、最大の争点は農業交渉であり、関税大幅削減の例外とできる重要品目の割合や、上限関税の有無などが主な論点となっている。日本は農業交渉においては必然的に守りの立場となるが、攻めるべきところは攻め、守るべきところは守るという交渉姿勢が必要である。 ・ ラウンドが停滞する一方で、特定の国や地域の間で締結される経済連携協定が増えている。日本も、2002年に最初の経済連携協定がシンガポールとの間で発効し、以後、メキシコ、マレーシア、タイ、チリとの協定がこれまでに発効している。その他、フィリピン、ASEAN、インドネシア、ブルネイとの間でも協定は妥結済みであり、さらに交渉中のものが複数ある。 ・ 関税は様々な分野と関わりをもっており、最近では環境政策として、バイオ燃料の一種であるバイオETBEの無税化措置などが行われている。 ・ また、セーフガードやアンチ・ダンピングといった特殊関税のあり方も重要な論点である。最近、韓国産ハイニックス社製DRAMに対する相殺関税措置について、初めてWTOで敗訴するという出来事があった。通商法の専門家の確保なども今後の課題である。 読売新聞社 S氏及びY氏によるプレゼンの概要 ・ 日本の食料自給率はカロリーベースで先進国最低の39%(2006年)に落ち込んでいる。今、日本の食料輸入がすべてストップすれば、国民一人当たりの一日のカロリーは996キロカロリーに激減する。食材も、米、イモ等、極めて限定されることとなる。 ・ 政府は自給率を2015年度に45%に上げる目標を掲げているが、耕地面積の減少等を踏まえるとハードルは高い。農水省は、ぎりぎり2000キロカロリーの供給は確保できるとしているが、1980年代、耕地面積が650万ヘクタールであったときにも同様の試算がなされており、耕地面積が450万ヘクタールに減っている現在、信憑性が低い。 ・ 食料安全保障のためには、自給率の向上、食料輸出国との関係維持、備蓄の三つの手段があるが、そのうち最初の二つは相反する面がある。備蓄をもっと増やすべきと考えられる。 ・ 他方で飽食が続けられており、日本人一人当たり一日に供給されるカロリーは2548キロカロリーだが、実際の摂取量は1891キロカロリーであり、4分の1が捨てられている計算になる。 ・ 日本人の、賞味期限・消費期限への行き過ぎたこだわりが、食物の大量廃棄の一因となっている。缶詰のほとんどは賞味期限が3年となっているが、実際には半永久的に持ち、25年前の缶詰でさえ人体に害はない。また、牛乳や卵も、海外と比べて賞味期限を短く設定する傾向がある。賞味期限にとらわれず、自分で食べられるかどうかを判断すべき。 ・ 流通業者には「3分の1ルール」があり、賞味期限の3分の1を過ぎた商品はそもそも仕入れないというが、こうした慣行も見直す必要がある。 ディスカッションの概要 ・ 賞味期限への過度な反応には、マスコミの責任もあるのではないか。賞味期限切れのものを使っていた企業があると、重大犯罪のように徹底的に叩かれる。 ・ 賞味期限については、消費者に対し約束したことを破ることはやはりよくない。そもそもの約束自体が妥当かどうかという問題はあるが。 ・ 食料安全保障という言葉にはあまり馴染みがない。自給率を上げるために耕地面積を拡大することは現実的に可能なのか。今日において、輸入に頼ることは否定できず、むしろ海外からの調達を確保することに主眼を置くべきではないか。 ・ 関税交渉においても、農業保護の文脈で食料安全保障という言葉はあまり使っておらず、「農業の多面的機能」という言葉を使っている。最近問題は、食料生産国における輸出規制も問題となっており、交渉の地平が変わってきている。 ・ 海外からの調達に頼るとしても、需要と供給のミスマッチは起こりうる。危機管理としての備えは必要。 ・ 水産物など、日本が国際市場で「買い負け」する事態なども出てきている。 ・ 耕作放棄地に何かを植えようと思っても、土壌が悪くなっておりできない。土壌を元に戻す方法を知っている人も徐々に少なくなっている。 ・ バイオETBEへの関税を引き下げるという話があるが、バイオ燃料が食料危機を加速しているとの指摘もあり、どう考えるか。 ・ バイオ燃料と食料価格高騰の因果関係については議論がある。いずれにせよバイオETBEのロットは大きくない。 ・ 通商交渉において、攻められるところは攻める、というが、どのような分野があるのか。 ・ 日本の場合、工業製品についていかに攻めるかがポイント。また、アンチダンピングのルールについて、アメリカを批判する立場にある。もっとも、知的財産権など、攻めるべきテーマのいくつかが既に、途上国への配慮により議題から落ちていることに留意すべき。 ・ WTOの枠組みで、一律に関税を引き下げることを止めて、各国の自給率水準を守れるようにすべきといった議論はないのか。 ・ 自由貿易が経済合理的であるという原則は今日の経済学の基本的な考え方であり、これを根本から変えることは難しい。 ・ WTOが通商問題についてルールに基づく枠組みを構築したことには大きな意味がある。これにより、かつてアメリカとの間であったような通商摩擦は、ルールの中で対処することができる。 ・ 日本は、アンチダンピングなどの措置を発動した回数が圧倒的に少ない。WTOルール遵守の姿勢については優等生といえるが、国益の観点からはもっとしたたかに立ち回ってもよいのではないか。 ・ 以前、ねぎ等3品目について暫定セーフガードを発動したことがあったが、中国が報復措置に出たため、協議の結果取り下げることとなった。あの局面では、日本は一応WTOの手続に則ってセーフガードを発動したのに対し、中国の報復関税はWTOルール上一切根拠のないものであったが、日本は結局中国の脅しに屈する形となった。 ・ 仮に輸入が途絶えたとき、農作物をすぐに作ることはできないが、水産物はいざとなれば獲りにいくことができる。漁業に活路を求めることも考えるべき。そのような事態においては、クジラを獲ることもやむをえないだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Aug 14, 2008 01:05:38 AM
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