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日英行政官日記 (旧 英国日記帳)

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Mar 15, 2009
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カテゴリ:カテゴリ未分類
私的に主宰する勉強会「政策懇談会」を開催。
今回は、日本銀行のN氏から「証券化商品と評価」というテーマでプレゼンをいただき、ディスカッションを行いました。

プレゼンの概要

1 これまでの流れ
 2007年春、サブプライム問題が顕在化。同年夏、パリバ・ショックにより欧州への飛び火が認識される。
2008年秋、リーマンショックが発生。世界的な金融危機と実体経済への波及が生じる。
これらを受け、2009年、各国政権による対策が本格化。


2 バブルの歴史
 17世紀のオランダにおけるチューリップ投機に始まり、1990年代の日本における不動産バブルや、昨今のサブプライム問題に至るまで、バブルは異なる国で繰り返されている。
 この背景には、他国でバブルが起きても、当事者達がリスクを認識せず、自分の国では大丈夫だと考える心理的な傾向がある。

3 証券化商品
 証券化商品とは、自己の保有する資産をそのまま証券に転換することによって資金調達を行うもの。ABS(資産担保証券)、CDO(債務担保証券)等様々な種類がある。
 企業活動にはキャッシュが必要であり、会計上利益が出ていてもキャッシュがなければ活動ができない。
 企業(オリジネーター)は資産をSPC(特別目的会社)に売却し、SPCがその資産を裏付けに証券を発行して、投資家に販売する。これにより、オリジネーターは早くキャッシュを入手できるほか、資産の信用リスクを外すことができる。
 住宅ローン債権を証券化して売却した場合、住宅ローンの貸倒れリスクはオリジネーターから投資家に移転するが、そのため、オリジネーター(サービサー=回収業者を兼ねる例が多い)にモラルハザードが起きる危険もある。
 証券化商品を購入する投資家の側には、規則正しいリターンを得たい、高い利回りを得たい、リスクを低くしたいといった様々なニーズがある。こうしたニーズに応えるために、商品をシニア(低リスク)、メザニン(中リスク)、エクイティ(高リスク)といった階層に分割(トランチング)する工夫がなされる。
 証券化商品が機能するためには、一連の取引が合法であること、証券化商品の対象について過去のデフォルト等のデータが存在すること、SPCの資産が他者の倒産リスクから隔離されていること、SPCの流動性が確保されていること、といった前提が必要となる。

4 CDSとCDO
 CDS(credit default swap)は、スワップ取引の一種。
 当事者間で信用リスクとキャッシュフローを交換するものであり、経済効果は保証に類似。プロテクションの買い手Aはプロテクションの売り手Bに対しプレミアムを支払う一方、債務者Cにcredit eventが発生した場合、BはAに支払いを行う。 Credit eventとは、債務者の破綻、債務不履行又はリストラクチャリング(債務免除等)を指すが、リストラクチャリングについては、何がこれに該当するか、文言の解釈が争われることもある。
 取引が活発化するほど、CDSの想定元本は無限に膨張する。同じ参照組織(債務者)について、実際の原債務を上回る大量のCDSが存在する場合に、現物決済できるのかという懸念があるが、最近ではCDSのオークションを行うことにより、多数の当事者間で安全な決済を行うことができる。2009年4月以降は、このCDSオークションが雛形契約に取り込まれる予定。
 リーマンの破綻時にも、リーマンを参照組織とするCDSの決済は順調に推移していた。しかし、リーマン自身がカウンターパーティーとなっていた大量のデリバティブ取引について、事務処理の遅延や係争の多発により、処理が進んでいない。中央清算機関を利用した取引所決済に移行することにより、こうしたリスクを回避することが今後考えられる。

5 信用格付け
 信用格付け(credit rating)とは、信用リスク(発行体が債券の元本・利息を予定通り支払う能力)を評価し、A、B等の単純な符号で表現したもの。信用格付けは、信用リスクのみに着目しており、株価の成長可能性等とは無関係である。
  格付け機関は、メディアと密接なつながりがあり、「表現の自由」を重視する。これまで格付け機関はほとんど規制されたことがなく、格付けの定義も各社区々である。
 当初は、格付け機関は格付け情報を利用する投資家から収入を得ていたが、最近は、格付けを依頼する発行者からの収入が主流。
 バーゼル2の導入により、外部格付け機関の付与した高格付けの資産は規制上有利になることから、格付けの重要性が高まっている。

6 証券化商品の格付け
 格付け機関が付与した格付けの実績推移(格付けされた債券や企業が、その後どう推移したかのデータの蓄積)と、証券化したい商品のパフォーマンスデータを比較し、格付けを決定するのが基本的な考え方。
 証券化商品をさらに証券化した、再証券化商品については、多少のパラメータの変動により、元本損失発生確率が急上昇しやすく、実際、数ノッチの大幅な格下げが頻発した。そこで各社は、こうした商品の格付けに、変動性スコア(ボラティリティに関する情報)を付加することを計画している。

7 テールリスク
 信用リスクが正規分布をとる場合、大きな損失が発生する可能性(テールリスク)は非常に低い。しかし、サブプライム問題においては、テールリスクが顕在化した。これは実際には正規分布よりもリスクが生じる確率が高い(ファットテール)状況を見誤っていた可能性がある。
 経済学者のRajanは、2005年当時、金融危機の発生メカニズムをほぼ正確に予測していた。ファンドにおける高い成功報酬により、インセンティブ体系に歪みが生じ、ファンドが過大なリスクテイクを行ったことにより、テールリスクが拡大することとなったのである。

8 金融安定化フォーラム報告書
 サブプライム問題等を受けて、金融安定化フォーラム(各国当局、国際機関等により構成)において要因分析を行い、2008年4月、報告書を発表。各国当局、国際機関等に対し、政策提言。CDSの市場インフラ改善、市場で取引されなくなった金融商品の公正価値評価方法確立、格付機関の利益相反管理等。

9 時価会計
 時価(公正な評価額=fair value)とは、(1)市場価格及び、(2)市場価格がない場合、合理的に算定された理論価格。(2)も以前から存在しており、これを使うことは「時価会計の凍結」ではない。
 時価会計の見直し論の根拠として、各国政治家等には、損失を隠したいとの思惑もあるが、これは問題の解決にならない。しかし、時価会計が、過度なリスクを取る誘因になる等の観点から、学者・実務家にも見直しを支持する意見はある。
 すなわち、時価の上昇により、資産、資本とも増加すると、レバレッジ比率(資産/資本)が低下(自己資本比率が上昇)し、元のレバレッジ比率に戻るまで、さらに借入れを増やし投資を拡大することが可能となる。逆に時価が下落すると、レバレッジ比率を下げるためには資産を圧縮(売却)する必要があり、市場参加者が一斉にこうした行動に出ると、更に資産の時価が低下する。このように、時価会計には市場変動を増幅する効果(procyclicality)がある。
 実際には、時価が上昇すると、投資銀行のレバレッジ比率は低下ではなく、むしろ上昇しており、(レバレッジ比率を元に戻す以上に)更にリスクテイクしていたことが分かる。
 

ディスカッションの概要

・今後の規制の方向性はどうか。
・まず、金融資産の評価の方法を確立することが重要。不良資産の適正な買取価格が分からないため、資産処理が進みにくい。
・シニアの証券化商品については、多くのローンが同時に貸し倒れとなる可能性が限りなく低いため、リスクは極小化されるとの前提であったが、個々のローンの貸し倒れは実際には独立の事象ではなく、経済的なショック等で一斉に貸倒れるリスクがあったのではないか。
・どこまでのリスクを予め織り込むかについては、コストの問題もある。むしろ各国は、破綻が実際に起こったときの対策について検討している。また、CDSオークションについて雛形契約に盛り込むなど、市場参加者の自助努力による改善もみられる。
・格付機関の規制について、日本でも今国会で法制化されるとのことであるが、他国と比べてスピード感はどうか。また、規制と呼ぶに値するような内容なのか。
・昨年6月にIOSCOでガイドラインが発表され、日本はこれを受けて法制化する形となっている。3大格付機関はすべて米国にあり、SECはガイドラインが出る前からすでに動いていたが、他の国は、これを見てから動くこととなるので、どうしても遅れることとなる。日本の場合、国会に法律を提出する必要があり、一般的な立法のスピード感からして遅いとはいえない。また、これまで何ら規制を受けていなかった格付機関が、初めて金融庁の監督を受けることとなるものであり、それなりの意義を有するのではないか。
・CDSの価格はどのように決まるのか。日本の企業のCDSについて、異常なプレミアムが付いているのではないか。
・CDS価格のモデルのパラメータに株価が入っており、株価が下がると自動的にプレミアムが上がるようになっている。市場が不安定であるため、異常なプレミアムが付くことがあり、必ずしも絶対値として国際的に比較可能なものではない。
・これまで繰り返しバブルが起きてきたということであるが、また別のバブルが起きる可能性もあるのか。
・今回のサブプライム問題の本質は、不動産バブルであった。これが基軸通貨国である米国で起こったことが問題であり、米国が金融緩和すると、ドルにペッグしている他の国の金融も緩和され、世界的に余剰となった資金がサブプライムやRMBSに流れた。
・当事者は、バブルの歴史を知っていても、「今回は違う」と思ってしまう。ITバブルの際も、ニューエコノミー論がはやったが、結果的には全く間違いであった。今回問題となった証券化商品も、本来はむしろリスクを減らすためのものである。日本ではかつてのバブルの際、銀行部門にリスクが集中したことの反省から、証券化市場の整備に取り組み始めた経緯があり、皮肉である。
・日本では米国のように激しく証券化商品にのめりこまなかった。日本の金融機関は、米国のそれと異なり、契約に書いていないことでも良識で気をつける面がある。また、日本の銀行員は必ず最初の何年間かは下積みで取引先等を回るため、危険なものは感覚的に分かるが、大学を出たてで数式だけを操っているような米国の金融マンにはこれが分からない。
・今回のプレゼンで一番重要なポイントは。
・証券化商品はあくまでツールに過ぎず、それ自体をどうするかということより、実体経済の回復が必要ということである。
・ツール自体を規制する方向性はあるのか。
・再証券化商品についてはやめようという動きが欧州で出ている。CDSについても規制すべきといった議論はあったが、これは筋違いであり、規制で解決する問題ではないことが認識されている。
・むしろ、金融機関への資本注入、国有化が必要か。
・国有化の後、どのように平常状態に回復するかが課題。
・リスクを評価するのは、本来難しいことであり、face to faceでなければ分からない。市場に依存する仕組みより、伝統的な間接金融の方が優れていたということではないのか。
・伝統的な間接金融は手堅いことは確か。しかし、そのためのコストをどう考えるか。銀行がすべてのリスクをチェックすることは非効率であり、バランスが重要。







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Last updated  Mar 18, 2009 12:48:24 AM
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