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私的に主宰する勉強会「政策懇談会」を開催。
今回は、環境省から尼崎市理事として出向していた福嶋慶三氏から、「地方都市の現場から ~課題先進都市から課題解決先進都市を目指した3年間のまちづくりへの挑戦~」とのタイトルでプレゼンをいただき、ディスカッションいたしました。 <プレゼンの概要>(文責・高田) 1 地方を取り巻く最近の話題 ・最近、地方の人口減少、「自治体消滅」を警告した、いわゆる「増田レポート」が大きな話題となった。 ・政府としても、「地方創生」を最重要課題として掲げ、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置している。 ・地方では、人口減少、特に生産年齢人口の減少が問題となっている。 ・また、財政も悪化している。自治体は国と異なり、借金をすることが制限されており、財政悪化が行政サービスの切下げに直結するため、国の多くの省庁よりも危機意識がある。 2(1)尼崎市のご紹介 ・尼崎は、交通が発達して大変便利なまちで、住んでみると人も温かく、大変住みやすい。成り立ちとしては、工業都市として発展してきた街で、工場労働者が多く住んできた。ものづくり産業の街で、現在、製造品出荷額は1兆6496億円。 ・他方、「公害の街」としての歴史もあった。昭和30年代、関西電力の石炭火力発電所が立地し、近畿一円に電力供給をしてきた。石炭の煤煙で大気汚染が深刻となった。しかし皆で努力して、環境の改善を果たし、今は国の環境モデル都市に選ばれるほどになっている。 ・現在の市長は稲村和美さん。前の市長も女性で、二代続けて女性市長は日本初だった。2009年12月から就任しており、先月(2014年11月)、市長選で再選された。 ・尼崎市の「理事」とは、市長・副市長に次ぐ立場で、市長の特命を受け行動するものとされている。市の各局を、二人の副市長が分担しているが、理事は市長以外では唯一、全ての局に関与する立場となっている。 ・理事は、市長の参謀としての役割を持つほか、局をまたいだプロジェクトのリーダー等の役割がある。 2(2)尼崎市の課題 ・市の財政は厳しい現状。市の予算のうち、新規の施策等に自由に使えるお金は0.2パーセントぐらいしかない。 ・他の街と比べて、市税収入のうち、法人税の割合が高いという特徴があるが、そのため、景気等による税収の変動が大きい。 ・しかし、稲村市長が就任してから、かなり財政を健全化してきた。 ・全体として市民の所得水準は高くなく、生活保護費が高いといった課題がある。 ・生活保護世帯の子どもは十分な教育が受けられず、結果として貧困が再生産されるという負のスパイラルが生じている可能性がある。 ・昭和45年以降人口は一貫して減っており、生産年齢人口をどう維持していくかが問題。 ・市の中心部の商店街にもシャッターが目立つ。駅に直結したショッピングセンターでさえ、テナントがあまり入っていない。市長のトップセールスで企業を誘致するなど、改善を図っている。 ・過去凶悪事件が起きるなど、治安が悪いというイメージがつきまとっており、街のイメージを好転させることが重要な課題であり、まちの課題の解決と魅力の発信というシティプロモーションに力を入れている。 ・また、事実としても、ひったくりなどの軽犯罪が阪神間の他都市と比較して多かったため、相当防犯対策にも力を入れ、今はかなり減ってきている。 ・市職員の年齢構成は、40代以上に偏っており、今後中核となる30代が大きく減少している。これは、行革を進めてきた(職員の数も5000人から3000人へ)ことのひずみ。 2(3)対応策 ・尼崎は、高齢化や人口減少といった、日本全体の課題の前面に立っている。そこで、あえて「課題先進都市」と位置づけ、「課題先進都市から課題解決先進都市(政策先進都市)への転換」を打ち出している。 ・市長と原局のパイプ役となる「政策室」の設置や、産業部門と環境部門を統合した経済環境局の新設などの組織改正を行った。 ・行財政改革の一環として、市民参画型の行政への転換を図っている。高度成長期に行政の役割が拡大し、それまでは市民が自分でやっていたようなことまで行政が代わりに行うようになったが、今日においては新しいモデルが必要。そこで、行政が市民と一緒になって街の課題を解決していくという考え方。 ・市民意見聴取プロセスを導入し、政策を形成していく過程から市民の声を取り入れるようにした。 ・震災がれき受入れの可否について、市長が進行役となって、市民対話集会を開催。 ・「公開事業たな卸し」を実施。事業仕分けのようなものだが、事業を切るだけでなく、充実させることも目的としている。 ・市職員のモティベーション向上にも取り組んでおり、若手職員の自発的な研修「夜カツ」などを行っている。 ・「ECO未来都市」を目指して、「尼崎版グリーンニューディール」に取り組んでおり、環境モデル都市にも選定された。 ・シティプロモーションを推進しており、地元出身の漫画家による漫画をPRに用いたり、「スイーツの街」としてのイメージ造りに取り組んでいる。 ・ソーシャルビジネスの振興に積極的に取り組んでおり、社会起業家が集まる「ソーシャルドリンクス」などのイベントも開催している。 3 政治と制度:地方と国の比較から ・地方政治に関しては最近、県議による不正支出などが問題となっている。地方議員は基本的に兼職の人が多いが、歳費もかなりもらっている。究極的には、国民・住民が地方の政治家に何を求めるかという問題。 ・他方、若手の市長など、地方政治の現場から改革の芽も出てきている。 ・地方は国と比較して、改革を進めやすい面はある。選挙が4年に1回と決まっており、ある程度腰を据えて取り組むことができる。 ・地方発で改革を行い、それを霞ヶ関に広げていくことも考えられる。地方は可能性の宝庫。 <ディスカッションの概要> ・外部から尼崎に行って改革を進めるにあたって、市役所の既存の人達との軋轢やすれ違いは無かったか。 ・市長が理事を登用するにあたって内心で抱えていた三つの条件が、関西弁ができること、改革マインドを持っていること、市長のやりたい施策を同じ目線と方向性で議論ができる人ということだった。市長、副市長が事前に地ならしをしてくれていたことや、自分も意識して腰を低くしていったことで、軋轢はなかった。 ・尼崎で学び、霞が関に持ち帰りたいと思ったことの例は。 ・霞が関の政策や制度を、いかにして自治体に使いやすいものにするか、現場の人の目線で考えることが重要。自治体の場合、首長の任期は4年あり、ある程度のスパンで政策に取り組むことができる。国でも、政治家がもっと長期的な視点で政策に取り組める仕組みを作ることが必要。また、省庁・部局の縦割りを超えた政策造りの仕掛けが必要。尼崎の場合は、理事というポストを置くことによりそれを試みている。 ・行政と国民は、対立ではなく協働型へと進むべきであり、尼崎での市民協働の取組みは興味深い。テーマはどのように選んだのか。参加者の意識はどうか。 ・テーマについては、市民から自発的に出てくることも多い。普段から街づくりに携わっているようなエキスパート市民も多く、そこに行政が出て行ってコラボレートするという形。また、市長が戦略的に争点を問いかけることもある。公営ギャンブルや、震災がれきの受け入れなど、意見が分かれるテーマを議論してもらう。そうすると、市民対行政ではなく、市民同士の対話も生まれ、結果的に利益が相反する市民の相互理解が進むという効果がある。 ・市の財政については、企業誘致など収入を増やす活動と、支出の抑制と、どちらに重点を置いているか。 ・両方とも必要であり、両方の視点で取り組んでいる。 ・市民も多様だが、どのようにして一つの目的のために向かうことができるのか。 ・尼崎としてのアイデンティティをどこに持つかという問題。市民はまさに多様で、住んでいる地域やバックグラウンドにより、何をアイデンティティと考えるかも異なっているため、1つにこだわらず、個別アプローチに切り替えることも重要。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 25, 2014 07:20:43 AM
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