VWビートル(カブト虫)の駆動系を流用したリア・エンジン装備し後車輪駆動のライトバン
フォルクス・ワーゲンのタイプ2は,VW社のVWカブト虫に次ぐ2番目の自動車として1950年に登場した小形のマイクロバスである.VW社製乗用車のカブト虫(ビートル)のユニットを利用して荷物と乗客を運ぶライトバンとして登場した.このバンは空冷エンジンを後部に搭載した後輪駆動(RWD)車だからスペース効率がよく使いやすいトランスポータとして欧米の自動車ユーザーに受け入れられ,後輪駆動のバン・コンセプトを真似したライトバンが欧米のメーカーから製品化されて登場した. VW社のタイプ2は最初ドイツで正式に「ブリー」と呼ばれていたが,ランツ・ブルドッグ農業トラクター社のハインリッヒ・ランツが抗議したため,ユーザーの間ではVWバス,VWトランスポーター,VW小形マイクロバスという呼び方が定着した. ドイツ語ではトランスポーターとコンビと社内で呼んでいたが,英語ではデリバリー・バン(配送用バン)とかステーション・ワゴンに相当した.メキシコではメキシコ・シティの輸送システムにコンビが使われている. タイプ2のバリエーションには,後部座席がなく側面に窓のないデリバリー・バン(パネル・バン),屋根を高くしたデリバリー・バン(ハイルーフ・パネル・バン),貨客コンビバン(側面窓と後部可動シート),マイクロバス(内装を豪華にした乗客輸送用),サンバ・バス(布製屋根カバーと開閉式屋根),ピックアップ・トラック,4人乗りピックアップ・トラック,キャンピング・バンがシリーズ化された. これらの工場標準モデル以外にも,第三者メーカーによる改造車が製作され,冷凍バン,霊柩車,救急車,警備車,消防車,はしご車などがある. 初代タイプ2は,1950年3月8日~1967年まで製造されたが,米国では多用途キャンピング・バンとして販売価格が適切だったことも手伝って個人の仕事用にも多数使用された.なおT1として1950年~1956年まで本社工場(ウォルフスブルグ)で量産されたタイプ2が区別されている.1956年以降は新しくハノーバーに建設したのトランスポーター工場による生産に切換えられた.もちろんVWバスには,乗用車のカブト虫と同じ排気量1.2Lで出力19kW(25馬力)の空冷水平対抗4気筒エンジンを装備していた.1955年に乗用車用に登場した22kW(36馬力)の出力アップしたエンジンが,タイプ2に装備されたのは1959年になってからだった.ところがこのエンジンは欠陥のために1959年に改良された25kW(40馬力)エンジンと交換された. 1955年までの初期T1は後部エンジン・カバーが大きかったためにT1aまたは「焼き付きドア」と呼ばれたが,後期のボディが変更されてエンジン収納部が小さくなり,ホイル径を381mm(15インチ)に小さくした(もとは406mm)ためT1bと区別している.1963年以降のモデルは,後部ドアが広くなったためT1cと区別している.なお1963年モデルには荷物室の屋根がスライドするオプション(標準はヒンジ形式)も追加された.さらに1962年より荷物を1トン(従来は750kg)までとした重装備仕様車が工場オプションとして追加された.タイヤ径を356mm(14インチ)小さくしたが幅広に変えた.エンジンは排気量1.5L(31kW/42馬力)のものを装備した. 好評だったため1年後には1.2Lの750kgタイプは製造が中止された.かぶと虫に1.5Lエンジンを装備したのは1967年からだったが,出力を32kW(44馬力)にアップしたものになっていた. タイプ2のドイツにおける生産は1967年に打ち切られたが,ブラジルの工場でT1が1975年まで生産された.さらにT2に似たノーズとテイル・ライトを大きくしたT1.5が1996年まで製造が続いた.ブラジル製のT1sはドイツ製の最終モデルとは異なり,T1aの荷物ドアのようなスポーツ仕様となっている. また米国では熱心なVWバス・ファンが,前部窓と側面の窓構成により区別するして好みのモデルを探し出すほどに関心が高い. 1968年にタイプ2のVWバスが2代目(T2)にモデル・チェンジされた.このモデルはドイツでは1979年まで生産され,1980年からメキシコ工場,1996年にはブラジル工場に生産が移行した.1971年以前のモデルはT2a,1972年以降のタイプ2VWバスはT2bとして区別されている.エンジンは少し大きくなって1.6L/35kW(48馬力)が装備された.