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2008年02月20日
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カテゴリ:テレビ番組・映画


NHK教育のETV特集「人間国宝 弥生の謎に挑む」を見た。要するに,人間国宝が弥生時代の木器を復元した,という,ニュースとしては素通りしてしまうような地味な内容なのだが,その深い掘り下げ方に引き込まれた。

鳥取県の青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡は,1996年に国道を建設するためにたまたま発掘されたのだが,数多くの木器や鉄器,人骨が出土し,歴史の1ページを塗りかえる発見として注目されている。特殊な粘土質により,2000年前の木器などがほぼそのままの形で真空パックされたかのように残されている。頭蓋骨の中から弥生人の脳まで出てきたというから驚きだ。

出土した木器は,まずその洗練されたデザインに目を奪われる。今見ても北欧家具あたりに通じるモダンな機能性がある。それらは,今まで考えられていた弥生時代の技術水準をはるかに超える精巧さを持っており,どうやって作られたのかが謎だった。数多くの工具も出土しているが,使い方さえ分からない奇妙な形のものも多い。

そこで,木工芸では現在4人しかいない人間国宝のうちの3人が集まり,復元を通してその工具の使い方や技法を解明することになった。まずその3人が代表作とともに紹介されるのだが,それぞれに素人目にも美しく職人の技を凝らしたものばかり。また,復元には現代の工具ではなく弥生時代と同じ工具のみが使われるが,その工具も,古代の工具復元に携わってきた鍛冶師によって特別に作られたものだ。

木をろくろで挽く木地師川北良造高坏を,ケヤキの木工芸で知られるちょっと強面の村山明はスリットの入った蓋付き容器を,そして桶職人中川清司は内側にカーブした板を組み合わせた箱を,それぞれ復元することに決める。

カメラは工房での職人たちに密着し,それぞれに慣れない工具に苦労しつつ復元を進めていく様子を追うのだが,特にドラマティックだったのが中川氏の復元の様子だ。彼はまず,ほとんど使ったことがない工具のために手を切ってしまう。弟子に絆創膏を貼ってもらう様子が映される。人間国宝のこのような様子が見られるのは珍しいのでは。その後も技法に悩みタバコを吸う様子などが出てくる。

仕上げは槍鉋(やりがんな)が使われる。中川氏は普段は台鉋を300種類以上使いこなしているが,当時は槍のような形の槍鉋しかなかった。力加減が難しいようで,結局カメラに「もう次回にさせてください。練習しておきます。こんなに時間がかかるとは思っていなかった。」と告げる。絆創膏が貼られた手がアップになる。苦労している作成の様子を始終映されれば誰でも苛立つだろうに,あくまで礼節を失わないところに中川氏の人柄が感じられた。

中川氏にヒントを与えたのは,槍鉋の達人だった亡き父の写真だった。槍鉋を構えて何気なく何かを彫っている写真なのだが,その1枚から,手の使い方,力の抜き方を会得し,見事に箱を完成させる。「やれやれやな,ほっとしたな。ほぼ(出土したものと)同じでしょ。(弥生人は)名工やな。不思議やね,なんでこんなものができたのか。」そして手をそっと目の辺りにこすりつける。

実はこのカットの始めあたりから彼はしきりに鼻をすすっていたのだが,ここで初めてそれがすすり泣きだったのだと気づく。このあたり,番組の中では1つのクライマックスであり,もしこの番組が民放のドキュメンタリーや,NHKでも「プロフェッショナル 仕事の流儀」などであったなら,必ずセリフにテロップがつきBGMにテーマ音楽が流れているに違いない。しかしここではBGMもなく,さりげなく「名工の技が中川さんに受け継がれた」というナレーションが入るのみ。この辺りの地味な演出は個人的に好みだ。逆に効果音とともに黒字に白で印象的なセリフなど書かれたりすると,いかにも「ここ,感動するところです」と言われているようで,うんざりすることがある。

中川氏は続ける。「2000年前のこういった木器はもっと偶然的に作られたと思っていた。これを作ったことで色々なことを考え,今までの私の全ての体験を生かすことができた。私への大きな教えだ。」実際に弥生人と同じ立場で一から考え,試行錯誤を繰り返すことで,弥生時代の名もない名工と心を通わせるような体験をしたのだろう。あるいはあの涙には,ようやく今になって槍鉋を自分のものにできたという,父への複雑な想いもあったのかも知れない。

しかし,まるでNHKアーカイブスの「NHK特集」を見ているかのような,最近では珍しい抑えた演出のドキュメンタリーだった。ナレーションの声もどことなくそれっぽかった(笑)。その地味さのためにチャンネルを変えた人も多かっただろう。最近のトレンドとして,ドキュメンタリーの演出が派手目になるのは仕方ないのかもしれない。演出というのはただ単に好みの問題で,派手な演出だからといって別に内容が薄くなるわけでもない。しかし個人的には,こういった地味目のものも残して欲しいと思う。



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最終更新日  2008年05月17日 16時05分00秒
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