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(4)カウンセリング
「上手く聞く、上手く伝える、ができているか」 担当美容師がやって来る。初対面だ。 どんな人だろう? 自分の注文をちゃんと聞き入れてくれるかな? 「このスタイルにはできませんねえ」なんて言われたら、どうしよう・・・。 担当者との最初の会話=カウンセリング。 緊張の瞬間だよね。 ヘアサロンから見ても、カウンセリング、つまり施術前の会話は、 サロンとお客様を結ぶ生命線ともいうべき大切なものだ。 お客様との意思の疎通がうまくいかないと、後のクレームの原因にも なりかねない。 当然、お客様は二度と来てくれないだろう。 お客様が初めての方なのか、2回目、3回目なのかでは、 カウンセリングの仕方や内容は大きく変わる。 ヘアスタイル写真の切り抜き持参か、お任せをご希望か、 他店で失敗して来店されたのか・・・タイプはいろいろだ。 ここでは初めて来店されたお客様を対象にしたカウンセリングの トークを見てもらいたい。 リッツ(担当美容師) 「○○様ですね? 本日担当させていただきます○○です」 お客様「あ、どうも」 (プロフィールはもらってるから、よく知ってるよ!) リッツ「本日はカラー&カットがこ希望ですが、お望みのスタイルは お決まりですか?」 (ここでは、切り抜き持参の場合を例に) お客様「そうですね、こんな感じ(切り抜き写真)にしたいと 思うんだけど」 リッツ「はい、わかりました。 では、この(写真の)イメージで好きなところはどこですか?」 お客様「なんとなく雰囲気が好き、かな」 リッツ「では、○○のイメージにより近づけたいので、いくつか 質問してよろしいでしようか?」 お客様「ええ」 リッツ「どのような人に見られたいですか? かっこいい人? それとも柔ららかな印象ですか?」 お客様「かっこいい感じ、かな」 リッツ「ファッションだったら、インテリジェンスを感じさせる かっこよさと、モード系のかっこよさ、どちらが好きですか?」 お客様「モード系、かな?」 リッツ「服の形や色の好みは、ソフトですか? シャープですか?」 お客様「ソフトだと思う」 (そしてこのあと、お客様に対してどんなヘアスタイルにしようと しているかを説明する「デザイントーク」に入る・・・) さて、カウンセリングで重要なのは、「聞く技術」と「伝える技術」だ。 「聞く技術」っていうのは、もちろんお客様の要望を汲み取る、 ということ。 オープン・クエスチョン(答えがイエス/ノーの形にならないもの)と クローズド・クエスチョン(答えがイエス/ノーになるもの)を 使い分けることが大事だ。 たとえば、 「お望みのスタイルはお決まりですか?」(クローズド・クエスチョン) という質問と、 「今日はどうしますか?」(オープン・クエスチョン) という質問では、当然お客様の答え方が違うよね。 美容師は「能動態」でなければいけないから、一番最初の質問で、 お客様の具体的な答えを待つ「受動態」になってはいけない。 「今日はどうしますか?」では、その時点でお客様がスタイルを 考えなくてはいけないというプレッシャーがある。 スタイルをすべてお客様任せにしているということだ。 まずは「お望みのスタイルはお決まりですか?」と問いかけ、 すでに決まっているのか、そうでないのか、いろいろな答えの選択肢を渡し、 その中から望むスタイルを明確化していく。 その後で初めてオープン・クエスチョンを始める。 「どんなスタイルがお好きですか」 「絶対に切りたくない場所はどこですか」 「気になるところはどこですか」 というような質問だ。 デザイントークとは、文字どおりデザインを言葉にして表現するものだ。 お客様が望むデザインを提案する際に、わかりやすく伝える。 自分がそのデザインを提案する理由を伝える。 こだわりのある飲食店で、メニューにその料理へのこだわりが 書いてあるところがあるけど、あれと同じ。 また、テクニカルトークも、文字どおりスタイルをつくっていく際の 技術的な話や施術内容を、わかりやすく伝えるものだ。 飲食店の例えで言えば、 「この料理は何を使って、このように調理しました」 という説明が、これに当たるね。 もちろん、「どんなヘアスタイルになるんだろう・・・」 というお客様の不安を取り除くことが目的だ。 ここでとても重要なことは、美容師が、 「なぜならば・・・」 という言葉を言えるかどうか、ということだ。 「ではカラーはこんな色にしましょう。なぜならば・・・」 「パーマはこのくらいにしましょう。なぜならば・・・」 この「なぜならば」を言うことが、リッツのお客様に対するトークの 基本中の基本だ。 「なぜ、この色が似合うのか」 「なぜ、この長さが似合うのか」 それを説明していかなければならない。 「なんとなく」は許されない。 たとえば、カラーリングの際に、なぜその色が似合うのかをきちんと 説明できるよう、つまり似合う色をきちんと提案できるよう、 リッツではスタッフ全員、カラーアナリシスの勉強をしている。 トークにありがちな「世間話」を、僕たちは重視しない。 もちろん、コミュニケーションの潤滑油としてや、お客様の情報を 拾い出すための手段としては認められるだろうけど、少なくとも、 この「カウンセリング」の段階、ましてや初めてのお客様には、 ありえない。 リッツに来てくれるお客様の目的は、「きれいになりたい」という、 その一点に尽きるからだ。 会話を楽しみに来てくれているとは思っていない。 その目的「きれいになりたい」という願望を、すべて受容することが、 僕たちの仕事だ。 さて、これまで、初めてのお客様に向けてのカウンセリングを 例に話してきたけれど、実は、お客様の気持ちをつかむ秘訣は、 2回目の来店の際のカウンセリングにある。 ◎2回目の来店時のカウンセリング◎ リッツ(美容師) 「なにか問題点はありましたか?」 (前回のカルテを参考に) お客様「別になかったけど・・・少し重くなった感じかな・・・」 リッツ「前回のスタイルでよろしいですか?」(あるいは) 「スタイルを変えますか?」(あるいは) 「今のスタイルで、ちょっとだけ変えますか?」 お客様「ちょっとだけ変えたいです」 (こう答えるお客様が一番多い) リッツ「前回は○○○○だったので、○○でしたが、今回は○○○な スタイルはいかがですか? なぜならば・・・」 (以下、デザイントークに) 1回目がお客様に満足してもらったからといって、前回と同じ注文に 応えるというだけの「受動態」になってはだめだ。 2回目は、違う角度からお客様を分析して、そのスタイルがどれだけ 似合っているかどうか、また、もっと似合いそうなスタイルがあるか どうかなど、より提案型にならなければいけない。 こちらはお客様のことはわかっている。 だから今度は、お客様に、自分の新しい魅力に気づいてもらうことが大事だ。 (「すべては記憶に残るサービスのために」金井豊著より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.06.25 00:42:55
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