「あまちゃん」151話 アマチュアの温かみ
北三陸にみんなが来るのはなぜか?「そこにアキがいるから」震災当日ユイは「アキちゃんが来てよ」と言った。あの言葉はユイからのS.O.S. みんなの安否を確認するためにちょっと帰省するのではなく、アキは仕事先にきちんと挨拶をして、北三陸のみんなと一緒に暮らすために地元に帰った。「ここが一番いいところだと教えるために帰ってきた」というアキがそばにいるようになってから、ユイはみるみる元気になっていった。そして、GMTがアキに会いに北三陸に来たことで、ユイのアイドルスイッチが入り、本来の腹黒くて自己中の、「めんどうくさいユイ」が復活した。夏ばっぱをはじめ北三陸の人たちは務めて明るく元気に振る舞っていたけど、「アキちゃんがいなくてつまらなかった」生活を送っていた。アキが帰ってきたことで、それぞれが自分のできることを考え、自主的に行動するようになった。引き寄せの効果は、海女のミサンガ、がれきの撤去、ウニの繁殖、海女カフェの再建、潮騒のメモリーズZの結成、市長当選、北鉄の再開へとつながった。種市が高所恐怖症のために仕事を辞めたとき、地元に帰らなかったのはアキのそばにいたかったから。慣れない板前修業を続けてこられたのもアキがいたから。そのアキが地元に帰ったことで里心がついたのか、大将に無断で帰郷してしまった。水口がハートフルを辞めたのはアキを選んだから。アキの背中を押すためにGMTとの歌番組を企画し、アキを地元に返した水口だけど、鈴鹿ひろ美のマネージャーとして働くことに生きがいを見いだせず春子に辞表を提出した。勉さんと琥珀を掘る北三陸での生活が性に合っていたのかもしれないが、水口が北三陸へ行ったのはアキとユイ二人揃っての潮騒のメモリーズ再結成が夢だから。アキが地元に帰らなければ、水口が勉さんのところに戻ることはなかったかもしれない。しかも、面倒くさいと鈴鹿ひろ美にはメールをしただけだったとは。鈴鹿ひろ美がチャリティーリサイタルを北三陸でと考えたのもアキがいるから。しかもずいぶん早く春子や太巻に無断で東京を離れたのは、春子の歌唱指導が怖かったから逃げたのでは、水口を責められない。勉さんに「円満退社じゃなかったのか?」と言われていた水口を見ながら嬉しそうにしていた種市、そして太巻にスルーされた影の薄いヒロシ、この3人のスリーショットが見られて今日はとてもうれしかったです。「プロでもない、素人でもない、アマチュアのなせる業。まさにアマカフェだ」アキをはじめこのドラマの登場人物は欠点もいっぱいあるけど、太巻がいっていたようにアマチュアだからこそ醸し出す温かみをこのドラマではいっぱい見せていただきました。アキが太陽のように真ん中にいて、その光を受けてみんなが輝きだす。ユイ、ヒロシ、種市、水口、海女クラブ、北鉄、観光協会、ひろ美、GMT、そして夏ばっぱと春子も。それをいつも優しく見守り続けている甲斐マスター、梅頭大将そして勉さん。そのアキが最初に変わったのは、ファン感謝祭で能年さんが一番印象に残っているシーンといっていた、夏ばっぱに海に付き落とされた時から。メモリアルブックに書いてありましたが、このドラマのテーマは「誰かが誰かの背中を押す」ということだそうです。アキは祖母である夏ばっぱによって変わり、アキが周りのみんなを変えていく。水口やひろ美がアキの背中を押し、アキが春子やユイの背中を押す。震災後、久慈にある「高校生海女クラブ」から海女のみなさんに「いつから潜るのですか?」というメールがたくさん届いた。それを読んだ海女のみなさんが「こんなときだけど、私たちは潜らなければいけない」と思ったそうです。この高校生たちが海女さんたちの背中を押したエピソードこそが、このドラマの原点。そして夏ばっぱ役の宮本さんがアキ役が能年さんで良かったとおっしゃっていましたが、能年さんをはじめどの役者さんもこの人でなければというほどキャラクターと一体となって、登場人物を生き生きと命を吹き込んでくれました。たとえ1話の中にしか登場しない人物までもまた観たいと思わせる脚本、演出は細部にいたるまでスタッフみなさんの愛を感じますし、だからこそ役者さんも全身全霊で期待に応えてくださり、その熱意がこれほどまで多くのファンを魅了したのではないでしょうか。家内には甘々の太巻がプロデュースする披露宴。ひろ美の移ろいやすい歌声を一番気にしているであろう春子がついに「地元に帰る」のは明らか。春子が頑なに東京に残っているのは、自分は北三陸に愛されていないと思っているからだと思います。母親が海女クラブや町の人々に囲まれている姿を見ると孤独感と疎外感を強めるからいたたまれない。そして良い思い出がない。鈴鹿ひろ美が自分のコンプレックスを解消するためにあえて歌うことを決断したように、春子にとっての「海死ね、ウニ死ね」を最後に克服するためには、この帰郷は絶好のチャンス。太巻は自分たち夫婦のためだけではなく、一番迷惑をかけた春子の背中を押すためにこの披露宴を企画したと私は思っています。あれほど地元を嫌って上京を望んでいたユイがアキとともに地元で活動することを太巻に宣言したように、北鉄で家出をした春子が地元の良さを感じなければ、このドラマは完結しません。ヒロインはアキですが、このドラマは春子の物語でもある。今日太巻と会ったあと、アキ・弥生さん・安部ちゃんの歌を聞きながら自然な笑顔をしていたユイのように、キョンキョンのとびっきりの笑顔を同世代の私は楽しみにしています。そしてひろ美役の薬師丸ひろ子さんの本物の歌声も聞きたいです。【送料無料】NHKウィークリーステラ増刊 あまちゃんメモリアルブック 2013年 10/30号 [雑誌]価格:1,050円(税込、送料込)