■てんかんの治療と薬
てんかんの治療は内服から始まるのが一般的です。てんかんの薬は、脳に作用する薬です。気分や行動に副作用という形で影響が出てくる可能性があるので、頭痛薬のように、「頭が痛い・・・飲む・・・治った・・・飲むのをやめる」といった風にはできません。はじめはごく少量の薬を内服して体を薬に慣らし、だんだんと薬の量を増やしていきます。
薬は発作や脳波の形によって選択しますが、実際に飲んでみないと効くかどうかわかりません。そこで、一般的な選択基準(表1参照)にしたがって薬を選び、内服を開始します。薬は少量から服薬して、量を増やしていきます。薬を増やしていく途中で、血中濃度を測ります。血液中にどのぐらいの量の薬が回っているかという血中濃度を測り、薬ごとに決められた有効範囲(表2参照)に入っているかを見ていきます。薬は飲み始めてから体内に一定量が回るようになるのに約2週間かかります。投与中の薬を増量した場合は、初めて飲むときよりも早く効果が出るので、1週間以内に効果がでてくる場合もあります。
薬を飲み始めてから発作が出ない場合は、その薬があっていると判断して、内服を続けますが、血中濃度が有効範囲に達してから、2週間ぐらい経過しても発作が止まらない時や止まっていた発作が出てくる時は、薬の量や種類を変更をしていきます。薬の変更は、すでに内服している薬を徐々に減らして行き、次の違う薬をまた少量から試していくことになります。次の薬も、効果を見るのに、最低でも2週間かかります。発作を止める薬が見つかるか、見つからないか・・・それはわかりません。でも8割が見つかるのですから、焦らずに探していくことが大切です。
表1 薬の選択基準
発作型 |
抗てんかん薬 ( )内は商品名 |
第1次選択薬 |
第2次選択薬 |
有効薬 |
無効薬 |
部分発作 |
単純発作 |
カルバマゼピン
(テグレトール) |
フェニトイン
(アレビアチン) |
- |
フェノバルビタール
(フェノバール) |
複雑部分 |
〃 |
〃 |
バルプロ酸
(デパケン、セレニカ) |
プリミドン
(マイソリン) |
二次性全汎化 |
〃 |
〃 |
〃 |
エトスクシミド
(ザロンチン) |
全般発作 |
定型欠神 |
エトスクシミド
(ザロンチン) |
バルプロ酸
(デパケン、セレニカ) |
- |
フェノバルビタール
(フェノバール) |
非定型欠神 |
バルプロ酸
(デパケン、セレニカ) |
バルプロ酸(デパケン、セレニカ)、
エトスクシミド(ザロンチン) |
フェニトイン
(アレビアチン) |
- |
ミオクロニー |
〃 |
フェノバルビタール
(フェノバール) |
- |
- |
強直発作 |
〃 |
フェニトイン
(アレビアチン) |
- |
- |
間代発作 |
〃 |
〃 |
- |
- |
強直-間代 |
〃 |
〃 |
フェノバルビタール
(フェノバール) |
- |
脱力発作 |
〃 |
〃 |
- |
- |
分類不能 |
可変 |
可変 |
すべて |
なし |
心因性発作 |
なし |
なし |
なし |
すべて |
発作重延(成人) |
フェニトイン
(アレビアチン) |
|
ジアゼパム(ホリゾン)、
抱水クロラール(エスクレ坐薬)、
全身麻酔 |
なし |
〃(小児) |
フェノバルビタール
(フェノバール) |
|
表2 血中濃度の有効範囲
フェニトイン(アレビアチン) |
10~20 |
フェノバルビタール(フェノバール) |
15~25 |
プリミドン(マイソニン) |
(5~8) |
カルバマゼピン(テグレトール) |
4~8 |
エトスクシミド(ザロンチン) |
40~100 |
バルブロ酸(デパケン、セレニカ) |
60~100 |
( )内は商品名
参考資料:『てんかんの薬物療法』 日本てんかん協会編 (株)ぶどう社
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