カテゴリ:おらほの町のお蕎麦屋さん
8月も終わり、晩夏の風が心地よくなってきた今日この頃。 久々更新(!)「そば屋」歩きシリーズ、第五弾でご紹介するお店は 西川町月山沢地区にある「レストイン花笠」さんです。 玉谷製麺所のある睦合地区から、国道112号沿いひたすら西の方面へドライブ。 月山湖こと「寒河江ダム」を眺めるうちに、特徴的な緑の屋根が。 周囲は見渡す限りの「山」また「山」、そして「湖」という 牧歌的な立地にある、アットホームな「レストハウス」です。 我々は、8月下旬の平日、うす曇の昼下がりにお邪魔致しました。 (月山・庄内方面からの店舗外観。国道の目の前に門を構えておられます) 「レストイン花笠」さんは、レストランの他に、宿泊施設も完備。 平成2年から始めたという宿泊対応は、1泊5,500円~と非常にリーズナブル。 春の月山スキーの利用客、夏の月山湖カヌーの合宿学生など 良心的な価格設定を知る「通の人」ご用達のお宿でもあります。 しかもこちらは、超豪雪地帯である「月山沢地区」で数少ない冬季期間・営業を行うお店。 真冬の最も豪雪が厳しい山越えの合間、一面真っ白になる国道112号に 突然現れる「人明かり」に心癒されるドライバーも多いことでしょう。 そんな訳で、店内はそりゃもう、広いこと広いこと。 観葉植物や丸木の台などが、自然の雰囲気そのままに配置出来るのはこの広さあってのこと。 食事休憩で立ち寄った方向けのテーブル席の奥には宿泊利用の方向けの 宴会場・兼・大食堂となる和室が続いており また、店内の一角には、アイスクリームやスナックなどのお菓子類、 ジュースやお酒、お土産品を販売する売店コーナーも完備。 ラインナップの幅広さは、宿泊施設完備のお店ならでは、ですね。 (店内に堂々たる観葉植物が。緑が生い茂る様子にココロも癒されます) 売店コーナーで、個人的にビッとキタのが「六十里越え街道ふろしき」。 このブログでは既におなじみの「六十里越え街道」ですが 西川町内で働く我々スタッフも初めて目にした地元グッズです。 どうやらメイン販路は、月山を越えた先・主に庄内方面なんだとか。 それぞれ1枚1,500円と、お土産に丁度よろしいお値段。 持ち合わせの無かったワタシ(←情けない;汗)は残念ながら購入を断念したのですが 折角なので記念に撮影させて貰いました。 (ブルー、グリーン、ピンクの3色違い・お揃いにしたらカワイイのです) お土産をひとしきり堪能したので、レストラン部の方へお話を戻します。 「レストイン花笠」さんは、ご主人の工藤孝兵衛さん・ミツヨさんと 若主人の勝広さんの、ご家族3人で経営していらっしゃいます。 もともとは志津温泉で「三山旅館」という民宿を営んでおられた工藤さん一家が こちらの「レストイン花笠」も開業したのが、昭和57年。 以前は志津地区を経由する形だった国道112号線が、新しい道路として 今の形に開通した際、その翌年となる3月31日に、今のこの地に開店したそうです。 随分、日付を鮮明に覚えておられるもんですねえ、と感心しておりましたらば 「4月1日はエイプリルフールだがらよ、ほの日さんなぐって事になったなよ」 ●語訳: →『4月1日はエイプリルフールだからね、その日ではなくという事になったんだよ』 と語ってくださったのは、息子さんの工藤勝弘さん。家業を継いだ理由を聞くと 「家がそいにずっとやってだなだも、しゃーないなったずね」 ●語訳: →『家がそういうふうにずっとやっているんだから、仕方ないよね』 とのお言葉。笑顔でながらも「なんとかさんなねべよ」の決意ある言葉に、 地元にいることを選んだ息子の意思と、それを見守るご両親の深い絆が感じられました。 「折角ですから、店内で3人の姿を撮影をさせて下さい」と、お願いしたところ 3人とも親切に応じてくださいました。ドウモアリガトウゴザイマス! (左から、工藤勝弘さん・ミツヨさん・孝兵衛さん。大食堂和室の前でパチリ) さて、ここで。お店のオススメ商品を伺いましたらば 「『天丼』は人気あるけど、いつもある訳でないからなあ」とのお言葉。 素材となる天ぷらの具が、全て「地の物」を使うという『天丼』は あまり数量が出せないらしく、限定品扱いになってしまっているとのこと。 5回も来店しているのに、まだ1度も食べたことがないというお客様もある程 奇跡的なめぐり合いが要求される『天丼』は どうやらこのお店では、幻の逸品と化している模様です。 そこまで聞くと、ますます食べたくなるのが人情というもの。 是非、その『幻の天丼』を…とお願いしたのですが、どうしても食べたい場合は 「予約」してもらった方が確実というお言葉。 来店の予約はしたものの、『天丼』の予約をせずに来てしてしまった我々は 泣く泣く別のメニューへ変更。 『幻の天丼』、食べてみたかったなあ…と嘆いておりましたらば 「あれ?このコーナーってば、西川町の蕎麦屋めぐりだったよね?」と セルフツッコミの声が。 (壁にあるメニュー板には天丼の文字は無し。どうやら本当に幻のようです) …… ………そうでした。 今更ながらブログの主旨を思い出し、『幻の天丼』改め「天ザルそば」をオーダー。 「天ぷらはイチから、揚げて作るから、時間がかかるよ」 という勝弘さんのお言葉から、待つこと数分。 満を持して登場したのは、大変に立派な天ぷらが乗った「天ザルそば」でした! (・・・ていうか、天ザルそばにも、十分すぎるほど天ぷら乗ってますけど!) 盛りタップリ目な太切りの田舎そばと、香の物がセットでお値段1,200円。 「山形のそば」は、県外客の方には「太切りの田舎そば」と思われておりますが 天ザルで、こうした太目のお蕎麦が実際に出るところって、意外と珍しいかも。 更に、そばを大盛りにするなら+150円で、なんと2人前分の盛りになるとか! しかも、ラーメンの大盛りの場合は+100円で2人前分の盛り! 普通大盛りって1.5人前分のところが多いですけど、サービスいいですねえ♪ 「うちの店さ来るような人は、腹くっつぐなるほど喰うだいって人がうがいがらね」 ●語訳: →『うちの店に来るような人は、腹一杯になるほど喰いだいって人が多いからね』 ご利用の客層が仕事途中の営業の男性や、長期工事に入る現場の男性などが多い とのことなので、たっぷり食べていって貰いたいという、お店の方の心意気が伝わります。 注文後に作るこちらの天ぷらは、勿論揚げたてのサクサク! シンプルな濃い目の麺つゆでいただくと、天ぷらの油と馴染んでまたウマイ! で、この天ぷらの中で、大変珍しいと思ったのは、ナメコの天ぷら。 ワタシも地元民として長く生活してきたつもりですが、初めていただきました。 (さく&ふわの衣の中から、ねっとりしたナメコが出現する食感は新しい!) 今回の天ぷらに使われていたキノコ類は、天然モノ・又は・自家栽培モノかのいずれか。 「ブナカノカ」と「ナメコ」は、工藤さんご家族が原木から育てたというもので 自家栽培でない場合は全て、自ら地元の山に入って採ってこられるとか。 どちらにしても、大変手間がかかっている印象。 ちなみに自家栽培モノは、季節になると販売もなさっていらっしゃいます。 そんなキノコ話で盛り上がっていると、勝弘さんが店の奥から持ち出して下さったのがコレ。 「夏のきのこ」と呼ばれる「トビタケ」です。 (比較物が無かったので、手に持ったままの姿を撮影・・・ていうかデカっ!) 「トビタケ」は「トンビマイタケ」の略称でお盆が近づく頃に最盛期を迎えるキノコだとか。 ブナの老木に育つ「土用に出るキノコ」として山人達に知られているそうで。 収穫した時には黄色か茶褐色の、白っぽい色合いをしているらしいのですが 見せていただいたのは、収穫後しばらく経ってしまったものとのこと。 大きさにビックリしたんですけど、「これでも小さいほうだ」と笑われてしまいました(w。 いやあ、このキノコ見られただけも、来た甲斐あったなあ…としみじみ。 天然モノのキノコや、筍、山菜など、それぞれの季節に応じた旬の山の幸を こうして何気なく振舞ってくれるところが、山の中にあるレストランの醍醐味ですね。 ・・・そして。 我々がきのこに見入っていると厨房の奥から、『天丼出来たよー』の声が! 『幻の天丼』と騒ぐ我々の為に、なんと特別に作ってくれたのでした~~!! (見よ・このボリューム!中央にそそり立つ「トビタケ」と「海老天」の色彩が美しい!) ていうか、どんぶりの蓋は閉まらず、刺さってますけど…。 これでお値段980円は、確かに『幻』たるに相応しいお姿。 確かにこれじゃあ採算取れないし、お客様に提供するのは大変ですよね・・・と伺うと 「節のモノしか入れらんねし、いつも同じ数ば用意さんねんだげっとね。 いわゆる田舎の料理ってヤヅしか、俺だは作らんねえがら」 ●語訳: →『(季)節のものしか入れられないし、いつも同じ数を用意出来ないんだけどね。 いわゆる田舎の料理ってヤツしか、俺達は作れないから』 幻との出会いに騒ぐ、我らスタッフを横目に、優しく微笑む工藤さんご一家。 この土地で生まれ育ち、この土地を愛する家族だからこそ出来る「田舎のおもてなし」が 味わえる、アットホームなレストランでした。 ■所在地・・・山形県西村山郡西川町大字月山沢110 /(TEL)0237-75-2045 / (FAX) 0237-75-2828 ■HP・・・ http://www.hanagasa.info/index.html ■定休日・・・不定休(詳しくはお問合せ下さい) ■営業時間・・・営業時間 9:00~19:00 (※宿泊は別途・要予約) ■アクセス・・・山形自動車道「月山IC」下車・国道112号線沿いに西川町方面へ車で3~5分 ■取材MEMO 宿泊施設も営む「レストイン花笠」さんは、カヌーでオリンピック代表に なったほどの選手も、かつて学生時代に合宿に利用したというお宿。 店内には「2008北京オリンピック・カヌー」の文字が書かれた記念の絵皿が飾ってあったり 地元の高校からの「感謝状」が飾ってあったり。 その功績は、実に何気なく店内の中に溶け込んでいました。 取材の途中、道に迷ったらしい大学生程の若い男性が店内に。 ご飯を食べるでもなく、ただ立ち寄っただけのその若者に、親切に道案内する勝弘さんの姿が印象的でした。 西川町へお出での際は、プリントアウトしてご活用下さいませ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Aug 31, 2009 10:15:31 AM
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