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カテゴリ:浄土ヶ浜殺人事件
「いったい何人、乗るんだ?」 拓海が言った。 佐和田理子や、相馬かおり、井原千賀子も階段を降りていこうとしていた。 「さっ、もう時間よ!お願いだから早く行ってちょうだい」 石川刑事が、じれったそうに小刻みに跳ねながら皆をせかした。 「行くべ行くべ、せいぜい30分くらいの事だから。刑事さん、この犬ちょっと預かってて」 拓海は、石川に鳴き続ける子犬を抱かせた。 「きゃっ!コートがぁ~…いやっ、もうなめないでっ」 その犬は、やたらと彼になついた。 「そのまま飼っちゃってくれない?」 拓海は笑いながら階段へ向かった。 「あたしはシロを連れていってみるわ」 美雪は言った。 「いんじゃね?今回は俺たちしか乗らないんだから」 「シロの度胸を試してみたいの。臆病な犬じゃないとは思うけど」 リードを引くと、シロは立ち上がって美雪のあとを歩いてきた。 現場の階段には、まだブルーシートを張っている。きのうの夜、来たときは暗くて良く見えなかったが、事件の跡はまだこのシートの中に生々しく残っていることだろうと思った。 「親子ともども、ロクな死に方をしない、とは思っていたけれども…」 拓海が、シートのそばに立ち止まって呟いた。 「まさか、こんなに早くその日が来るなんてな。面白いもんだ」 「管野君、状況は君に有利じゃないんだから、もっと慎重に」 松谷がたしなめた。 「はいはい。…でも、残念ながら、うそ泣きしようにも涙すら出ない。心って意外に正直なもんだ。あの女の人たちだって、ちっとも悲しそうじゃない」 拓海は、先を歩いている清水幾子と、川野百合子を見て言った。 川野百合子は婚約者連れなせいか、清水幾子とは、たいしてわだかまりもなさそうである。 ときおり会話をして、笑い合ったりしながら歩いていた。 <つづく> ☆こちらの小説は、2009~2010年にBlogで連載していたものです。 ☆人気ブログランキングに参加しています。トップページのバナーをクリックして下さると嬉しいです。 ランキング参加中です。 励みになります、ポッチをお願いします 人気ブログランキングへ おかげさまで、20位以内です。 みなさまありがとうございます<(_ _)> ☆連載ミステリー『浄土ヶ浜殺人事件』は、無料メルマガ『まぐまぐ!』 でも配信中です。 登録はこちらから:『Kazeのミステリ通信』 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 14, 2012 07:13:55 AM
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