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December 14, 2012
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カテゴリ:浄土ヶ浜殺人事件

「いったい何人、乗るんだ?」
 拓海が言った。
 佐和田理子や、相馬かおり、井原千賀子も階段を降りていこうとしていた。
「さっ、もう時間よ!お願いだから早く行ってちょうだい」
 石川刑事が、じれったそうに小刻みに跳ねながら皆をせかした。
「行くべ行くべ、せいぜい30分くらいの事だから。刑事さん、この犬ちょっと預かってて」
 拓海は、石川に鳴き続ける子犬を抱かせた。
「きゃっ!コートがぁ~…いやっ、もうなめないでっ」
 その犬は、やたらと彼になついた。
「そのまま飼っちゃってくれない?」
 拓海は笑いながら階段へ向かった。
「あたしはシロを連れていってみるわ」
 美雪は言った。
「いんじゃね?今回は俺たちしか乗らないんだから」
「シロの度胸を試してみたいの。臆病な犬じゃないとは思うけど」
 リードを引くと、シロは立ち上がって美雪のあとを歩いてきた。
 現場の階段には、まだブルーシートを張っている。きのうの夜、来たときは暗くて良く見えなかったが、事件の跡はまだこのシートの中に生々しく残っていることだろうと思った。
「親子ともども、ロクな死に方をしない、とは思っていたけれども…」
 拓海が、シートのそばに立ち止まって呟いた。
「まさか、こんなに早くその日が来るなんてな。面白いもんだ」
「管野君、状況は君に有利じゃないんだから、もっと慎重に」
 松谷がたしなめた。
「はいはい。…でも、残念ながら、うそ泣きしようにも涙すら出ない。心って意外に正直なもんだ。あの女の人たちだって、ちっとも悲しそうじゃない」
 拓海は、先を歩いている清水幾子と、川野百合子を見て言った。
 川野百合子は婚約者連れなせいか、清水幾子とは、たいしてわだかまりもなさそうである。
 ときおり会話をして、笑い合ったりしながら歩いていた。

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<つづく>

☆こちらの小説は、2009~2010年にBlogで連載していたものです。

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Last updated  December 14, 2012 07:13:55 AM



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