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わたしのブログ

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続きです。

ある日、「片山、頼みたいことがある。朝飯、お前の分。一回だけ俺に食わしてくれないか。俺、一度だけ飯を腹いっぱい食べてみたいのだ。」「良し」と快く食わせてやった。食い終わったら、顔が青ざめてカワヤに急いでいきげろを吐いたらしい。村上の奴。始めはニコニコ目を細めて食っていたくせに、後で「お前の飯、でかく入っていたなぁ。俺、参ったよ。やはり一人前が酔い。俺、わかったょ。」
 翌朝私は、村上の飯をぺろりとやって、タバコをすっていたら奴はあきれて「ヘェー、やはり軽勤だけあるな。」と関心していた。
 私には事務室より週五箱タバコの支給がある。それを10本村上にやった。それを半分に切って20本にして夜中こっそり毛布をかぶって楽しんでいるそうだ。
 ある日、衛生兵が迎えに来た。事務所に行ったら血沈検査だ。院内全部だから大変である。看護婦、衛生兵に混じって私も血沈管を立てたり、時間をチェックしたり番号を合わせたりで忙しい。
 夜の従事頃、兵長が「今夜も夜警だな。もうよいからこれでも飲んで休んでいろよ。」とフラスコを出した。甘い液体である。しかも無色で旨い。
 「コリャ、なんだね。」と聞いてみたら小さい声で「ブドウ糖だ。割りに旨いだろう。皆飲んでしまえ。」私がちびりちびり飲んでいたら週番仕官が来た。「敬礼なんかいらない。皆、ご苦労だな。」注射用のブドウ糖を飲んでいる私を見て「軽勤も手伝いか?大変だな。」何の文句も言われなかった。
 各患者の血にクエン酸を混ぜ、管の百ミリのところまでスポイトで吸い上げ番号どおりに管立てに立てる。その早いこと見ていると面白い。私も去年は漢口で七十ミリ下がったと看護婦から利かされたことを思い出した。道理で腰が抜けたのだと合点した。この病院では七十ミリが最高で皆、五ミリくらいで全快している。前送の決定にこれがどうしても必用なんだそうだ。


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