喫茶店や珈琲専門店に行き、珈琲を注文するとカップの取っ手が向かって左側に位置した状態でテーブルに置かれる。多くの人は珈琲を飲む時は右手でカップを持つので何故取っ手が左側なんだ、カップを180度回転させ取っ手を右側にしながら、そう心の中で思っている人はきっと多いと思う。
でもこの理由は知っている人は知っている。またちょっと考えれば判っちゃう。ソーサーのに置かれたスプーンの柄は右側に位置しているでしょう?。そう、砂糖を入れた時、人間の多くは左手でカップを押さえながら右手でスプーンをかき回す。だからカップの取っ手が左側に来るようにセットする。これは勿論紅茶でも同じ。
店員の教育が行き渡っている店だと珈琲と紅茶はそのように置かれ、すでに砂糖が入っているココアなんかは最初から右側に取っ手が来るように置かれる筈だ。これらの置き方をチェックするだけで、その店の心意気ってものが判ってくる。
ただ困った事に僕は珈琲にも紅茶にも滅多に砂糖は入れないし、砂糖を入れる時があってもスプーンを左手で回す癖があるから、教育が行き届いている店程、常に180度クルリとソーサーを回している自分がいちゃう。
歩いて15分のところに珈琲専門店がある。そこは店主1人だけのカウンターが6席にテーブル席が4つの小さな店。2年位前かな。初めてそこを訪れた時、カウンターに座りブレンドか何かを注文した。その時は冒頭に書いた通り、左側にカップの取っ手が位置し、スプーンの柄は右側に置かれている。ルールをしっかりと守ってくれている。
そこの珈琲の味と店の雰囲気が気に入って以降、月に何度かの割合でそこを訪れているんだが、5回目くらいからだったかなぁ。店主が突然「お砂糖は使われないんですよね」って言いながら珈琲を出してくれた。その時カップの取っ手はちゃんと右側にあったのだった。こういう粋な計らいに結構感動してしまう僕。その後もそこの常連になったのは言うまでもない。
また別の店での話。ある若い女の子とデート中、珈琲専門店に入り、冒頭のウンチク(ウンチクとは言えないだろうが)を彼女に向かってかました時の事。そこも小さな店で小声で話していてもカウンターの中の店主の耳には入ってしまう。
しまった!、そんな事、店主の前で言うんじゃなかった、と後悔しつつ、チラリとその店主を見ると、ニコリとしてくれ、なんと指でOKマークを作ってくれたのだった。結構いい歳をしたオジサンだったのでちょっとビックリ。でもいいねぇ、ここも粋が通じちゃうお店だ。
喫茶店もそうだし、食事どころもそうだけど、美味い店、雰囲気のいい店だけでは名店にはなれない。店主、店員が粋である事、それが名店の条件なんじゃないかなぁ。