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徒然”腐”日記

徒然”腐”日記

Trick or treat
















Trick or treat




















「Trick or treat」
「・・・・・・あ?」

「トリック オア トリート・・・つったんでさァ土方さん。」
俺の目の前に手を差し出して総悟が繰り返す。
「お菓子くんなきゃあイタズラしやすぜィ。」

俺はその手をぱんと勢い良くはたき落とし
「ばーか、ガキじゃあるめーし。何言ってやがんだテメーは。」
溜息交じりにそう返した。

「ったく、こういうイベントに乗れねェってのァ心が狭い証拠でさァ。」
総悟は肩を竦めながら抑揚のない声音でそう言うと
さっさと俺に背を向ける。

「ま、これでマヨ味の飴ちゃんとか出されても不味くて食えませんがねィ。」
そんな捨て台詞を吐きながら自分の席に戻っていく総悟。
「っせー!マヨ味は何になっても旨ぇんだ!!持っててもテメーにゃぜってーやらねー。」
負けじと俺もその背中に言葉を投げつけてフンと鼻で笑ってやった。

Trick or treat

俺だって何の事か知らねぇわけじゃあねぇが
「・・・・・・女子供じゃあるめぇし。」
そうそう乗れるかってんだ。

俺はもう一度鼻で笑うとそろそろ始まる授業に向けて
教科書とノートを机の上に並べた。

前を向くと視界に入るのはさらりと綺麗な黒い髪。
やっと肩に触れるくらいに伸びてきた艶々の・・・・・・・・

Trick or treat

もしもこいつが同じ事を言ってきたら・・・・・・
そんな事をふと思い
「・・・・ありえねぇ・・・・・・・・・。」
俺は一人で苦笑した







そして・・・・・・・昼休み

鞄から弁当の包みを出した俺は
「・・・・ん・・・・・っ!?」
ある異変に気付いた。

俺にとって大切な
いや大切なんて生易しいモンじゃねぇ
必要不可欠なアイテムがなくなっている。

マヨネーズが・・・・・ねぇんだけどォォォォ!!

確かに弁当と一緒に包んだはずだ。
間違いねぇ

鞄の奥の方に落ちているかとか
間違えて机の中に入れちまったかとか
あちらこちら探したが・・・・・・
「・・・・・ねぇぇぇぇ!!」

愕然として、自分の席に立ちすくんでいると
近藤さんがやって来た。

「トシ・・・・・・・・俺はちょっぴり悲しいぞ。」
「・・・・・・・・・なんだ?近藤さん。また志村姉に・・。」
「違う。・・・・・これだ。」

近藤さんが俺に見せたのは巨大な弁当。
勿論近藤さんの弁当箱だ。

かぱりと蓋をあけたそこには

「ゴリラ」

・・・・・・の文字が・・・・・・・マヨでデカデカと

「お前だろ?トシ」
「いや・・・俺じゃ・・・・・」
「マイマヨ持ってきてるのなんて、お前くらいだものな。」

や、そのマイマヨは無くなって・・・・・・・・

そこへ山崎もやってきた
「土方さん、いくら僕がもたつく事があるからって・・・酷いですよ。」
山崎の手には「マヌケ」とマヨで書かれた弁当が。

そして原田が
「ハゲ」と書かれた弁当箱を涙目で俺に向かって見せ

「や・・・・・ちょ・・・・・・誤解・・・っ。」
周囲を見回した俺の視界に映ったのは
マヨで悪口が書かれた弁当の数々。

「Trick or treat」

あいつだ・・・・・・・・!!
ニヤリと笑みを浮かべる総悟の顔が目に浮かんだ。

「これはアレだ。総悟のやつが・・・・。」
言いかける俺の背後から
「土方さん、言うに事欠いて俺に無実の罪をなすりつけるなんざ最低でさァ。」
・・・・・・・・と総悟の声が。

それにならったように皆の視線が痛い。

・・・・・・あぁ・・・・・一体どうしたら・・・

「Trick or treat」
俺は思わず呟いていた。

「・・・・・・はぁ?」
総悟の言葉を借りるのは癪だが
「トリック オア トリート・・・だ。」
これが、こいつらに通じるかは分からねぇが・・・・

「・・・・・・ハロウィンだよ、ハロウィン。」
こういう場合、下手に言い訳することが事態を拗らせることはよく分かってる。
「ちょっとしたジョークだ。気を悪くしたなら謝る、すまん。」
俺は机に両手を突いて頭を下げた。

「なんだ、そうなのかトシ。はろ・・・・はろ・・なのか。」
明らかに分かっていない近藤さん。

そして、他のメンバーはやや白い目で俺を見た。
「土方さん、先にトリック オア トリートって言ってからじゃないと。」
「そうだよな、意味分かってますか、土方さん。」

煩ぇ~~~そんなん知るか!!

ま、何はともあれ皆それなりに納得してくれた様子で
溜息を吐きつつも席に戻っていく。

あぁ、やれやれ・・・・・・・

溜息を吐き胸の撫で下ろした俺だったが。
ふと顔を上げると、目の前にまだ弁当が一つ。

「・・・・・・・・・あ・・・・・?」

和風の炊き込みご飯の上にマヨで書かれたその文字は

「好きだ」

・・・・・・・・・・・って・・・・・・・・

「・・・・・・・か・・・・・・・桂?」

「これもジョークか?土方。」
「え・・・・あ・・・・・う・・・・それ・・・は・・。」

気まじめに見つめてくる大きな黒い瞳が
じっと俺の答えを待っていた。

かぁぁぁ・・・・っと顔に熱が上って行くのを感じる。

ジョークじゃねぇ

言いたいけど・・・・・・言いたいけど

言えるわけねぇじゃねぇかァァァァァ!!!!

よりによって・・・・・・・
よりによって・・・・・・・何で

「好きだ」なんだァァァァ!?

桂の背後に立ち、ニヤリと黒く笑う総悟。







あぁ・・・・・・・・猫型ロボットがいたら叫びたい

「ドラ○も~~~~~ん、タイムマシン出してェェェ!!」




「Trick or treat」

そう言われる瞬間まで

























<了>





2010.10.31ブログにアップ



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